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全ての人を対象にした再開発の時代へ

大阪芸術大学 田端修

 

 私はこの研究会が行った作業について、 時々意見を述べたり、 都心のマンションの居住実態の調査に参加したりしていました。 振り返ってみると、 これからの都心開発について大きな意味のある仕事だったと思います。 特に画期的だったと思う点をいくつか指摘しておきたいと思います。


(1) 昼間人口を対象とした

 今日報告した人たちは、 船場で働いている人たちです。 つまり昼間人口というわけです。 これまでのまちづくりは、 すべて夜間人口を対象にして進んできました。 住んでいなくても、 昼間そこで働く人も対象にしなければならないという指摘は以前からあったのですが、 実際に昼間人口である人たちがまちづくりを考えた今回の報告は画期的です。

 もちろん、 船場に夜間人口がもっといれば、 違う視点でのまちづくり提案が出てきたでしょうが、 昼間働いている人たちだけでもこれだけのアイデアが出てきたことを確認できたのは素晴らしいと思います。


(2) 全ての人を対象にしたまちづくりの課題とは

 船場のまちは歴史が古く、 いろんな要素が蓄積されています。 それだけにいろんな問題を抱えています。 まちが壊れかかっているというのは言い過ぎでしょうが、 現に多数の空き室や空き地があります。 そんな中で、 人が住む、 働く、 遊ぶということを的確にとらえていくことがこれからのまちづくりの主要な課題だと言えます。

 これまでの郊外の住宅開発や団地開発のようなわけにはいかないでしょう。 今までのそうした郊外開発は、 何もなかったところを対象に専門家が考えたもので一応のまちづくりが整えられていったのですが、 都市の再開発もニュータウンと同じような発想でやった結果、 古い住民を追い出すという暴力的なまちづくりになってしまいました。 しかし、 これからの都心開発は、 住んでいる人、 働く人が共同作業しながら進んでいく方向になるのだろうと思っています。 まさに「連続型のまちづくり」が大きなテーマになっていくことでしょう。

 その時大事だと思われることは、 ニュータウン開発のように専門家だけが考えていてもまちづくりは実現できないことです。 いろんな人たちがよってたかって今あるまちをどうしていくのか考え、 プランニングしていく作り方に変わっていくように思います。 その先駆的な事例が今日の報告だったのではないかと思っています。

 ただ内容そのものについては、 まだプランニングの段階で、 江川さんがおっしゃったように、 これからどう形にしていくのかが問われます。 形にする前の、 まちづくりを話し合う段階ではいろんな人が集まって話し合いをするシステムが必要です。 しかし、 次のデザインの段階では専門家が入ってくるシステムが必要になります。 その二つを上手につなげていけるかが次の課題だと言えるでしょう。 そのあたりも、 今日の報告ですこし見えてきていたように思いました。

 以上で、 私のコメントを終わります。

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