東京から来た上野です。 東京在住ですから、 今日のお話は完全に来訪者の立場でうかがいました。 二点ほど質問がございます。
まず一つは、 まちづくりの担い手についてです。 今日の報告は、 基本的にまちの活性化を目標にしていますよね。 都市が活性化するというのは、 力学的に都市が不安定な状態にあるということで、 いろんな競争(コンフリクト)が常に起きている状態だと思います。 例えば、 商業活動をしていくうえでも抜け駆けができるということです。 そうした競争の中からまちの魅力が作り出されていきます。
しかし、 船場の場合は長い歴史を持ち成熟に達してしまっているので、 活性する都市が持つ様々な条件から離れているように感じるのです。 活性化はまちの中の矛盾や不安定要素をチャンスとして生まれてくるものですから、 船場の中にそうした要素をどう取り込んでいくかが気になります。 船場の中で何かやりたい人たちに対して、 どう開放していくのか、 です。
正直言うと、 現在の船場の人たちはそうした能力を失いつつあるのではないでしょうか。 ですから主体の交替が必要で、 それをどうやっていくのかが問われるのです。 その時大事なのは、 先ほど江川さんが指摘されたように「まちの連続性」ということでしょうが、 新しい人たちを主体として入れていく仕組みが必要です。
もちろん、 主体の交替と言っても現在いる人たちを排除していくことは出来ないわけですから、 古い人たちと新しい人たちをうまくリンクさせて全体の活性化を図っていく仕組みが一番大事だと思います。 それをどう作るかが、 これからの課題だと思いました。
これについては、 ネットワークというアイデアがその答えかもしれませんが、 古い人たちの利益を守りつつ、 新しい人たちのチャンスをどう作り出せるかが大きな問題だと感じましたので、 その点についてさらにうかがいたいと思います。
もう一つは、 活性化のターゲットが誰なのかがよく分からなかったことです。 船場がこれからどういうところに到達するのかが、 今一つよく見えませんでした。 船場のまちは近畿圏の人たちにとってどういう意味を持つのか、 日本にとって、 アジアにとってどんな魅力をもつまちにしたいのか。 そのターゲットがよく見えなかったので、 その点についてもうかがいたいと思います。
新しい主体をどう入れていくか、 その仕組みづくりや、 チャンスをどうするのかということは難しい問題です。
船場は成熟しているとのご指摘ですが、 我々の調べた限りではまだまだビジネスの中心街です。 ですから昼間に仕事をしている人たちは間違いなくたくさんいるのですが、 夜になったり土日ともなると急激に人間がいなくなるのです。 そんな訳でこのプロジェクトの最初の目標は、 まず人に来てもらうことでした。 新しい主体は「都市観光」でもいいし、 まずは船場を目指してやってくる人を作り出す必要があると考えています。
船場にはレストランやショッピングができる店もあるのですが、 今は土日に閉まっています。 人が来てくれるようになればそうしたショップも開店し、 人が住めるようなまちになるでしょう。 今の船場は一般の人にとってはまだまだ住みづらいまちですが、 ちゃんとお店の機能が充実すれば、 住みたい人も出てくるし、 今度はその人たちがまちの新しい主体になっていくだろうと考えています。
このように、 新しい主体を作るためには、 まず訪れる人を作り、 住む人を作るという方向だと考えています。 その仕組みについてはまだ今日報告した所までしか出来ておりません。 ネットワークづくりをいかに進めていくかについてもこれからの課題です。
森山:
私の感触では船場が成熟しているとは思えません。 私も昔からのイメージで、 船場は「問屋街」で「繊維のまち」「江戸時代から続くまち」という固定化されたイメージを持っていました。 しかし実際にまちを歩いてみると、 あちこちに空き地があって、 これから大きく変わる可能性のあるまちだと認識が変わりました。
この研究会のメンバーは研究会のためだけに集まったメンバーですが、 作業をしていく中で「ひょっとしたら船場は大きく変われるんじゃないか」という期待も出て、 活動も段々熱を帯びてきたという感じがあります。
船場はまちとしての歴史もあり立地条件も良いことから、 私はこれからの船場が向かうべき方向を、 古いものと新しいものが絶えずぶつかり合い、 混じり合う刺激的なまちととらえています。
根津:
我々も研究活動の中でまだ十分な議論が出来ているとは言えません。 それぞれのレベルで、 新しい主体やターゲットをおぼろげながら捉えているという状況です。
ネットワークに関していうと、 御堂筋には様々な動きがあります。 例えばそれは地元の動きだったり、 財界、 大阪市、 商工会議所だったりします。 我々はそんな団体に積極的に働きかけて、 実際にまちの中で活動してくれる人を探したいと思っています。 我々の立場は一ホストでありたいと思っていますので、 どんどん声をかけていくことで、 まちづくりの活動で何かやりそうな人を巻き込んでいくことが大事ではないかと考えています。 それがまちなかのいろんな競争にもつながるし、 いろんなホストが生まれる地盤にもなるんじゃないでしょうか。
今の船場はいろんな選択ができる要素はいっぱいあるのですが、 人びとにそれが提示されていない面があると思います。 我々の働きかけで、 実際に動ける人が出てくるのではないかと大胆にも考えています。 そうした活動の結果、 主体の交替や仕組みづくり、 ターゲットなどいろんな話が出てくるのではないでしょうか。
私の友人が船場で花屋を営んでいるのですが、 私が今こういう研究をしていると言うと「大いにやってくれ。 よかったら僕も混ぜて欲しい」と乗り気になってくれて、 地域の人はかなり興味をもっているようだと思ったことがあります。 しかし、 現状ではこういう地域検証の場に参加されないのも事実です。 こういう地域の人たちをこれからどんどん巻き込んでいきたいと思っています。
船場はもう終わったまちでは?
古い人たちの利益と
上野泰:
新しい人たちのチャンスをリンクできるか
新しい主体の芽生えはある
篠原:
このページへのご意見はJUDIへ
(C) by 都市環境デザイン会議関西ブロック JUDI Kansai
学芸出版社ホームページへ