ワイルド・ニューヨーク
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1。 グローバル/ローカル

 

 まず、 今日の内容の伏線として「グローバル/ローカル」についてお話をします。

 ニューヨークは「世界都市」と言われ、 グローバリゼーションが真っ先に始まった都市です。 流れているお金の量をとっても、 世界の最高ランクのグローバルシティである事は間違いありません。

 ところがグローバリゼーションは、 都市の中に住んでいる人にとっては必ずしも良い事ばかりではありません。 家賃や住宅の値段がすごく上がるなど、 住みづらくなり、 貧困問題も再び復活しています。 それに対してローカルなグループが住宅を造り、 グローバリゼーションに抵抗する動きを色々と示しているわけです。

 そういうグローバリゼーションとローカルな反応が、 どういうふうに交じり合うのか、 またそこから公共空間、 パブリックがどういうふうに立ちあがってくるのかについてお話をしてみようと思います。


グローバル・シティの特徴

 まずグローバリゼーションのもとで形成される都市の中身についてですが、 アーバン・スタディーズではいろんな言い方をしています。 一番ポピュラーなのは“グローバル・シティ”「世界都市」という言い方でしょう。

 あるいは「脱工業都市」という言い方があります。 ニューヨークだけではなく日本も含めた先進諸国の大都市は、 戦後から1960年にかけて工業を基軸に発展しました。 その後、 工業がダメになり、 第三世界に資本がどんどん出て行く事で、 工業からサービス経済へ、 あるいは情報ハイテク産業へと移っていったのです。 これをサヴィッチらの学者が「脱工業都市」と言っているわけです。

 また「ツーリスト都市」という言い方も最近よくされています。 脱工業化後の現在の都市において、 経済成長の一番のタネは観光です。 ニューヨークは今、 観光客数が世界第一位になっています。

 さらに「情報都市」とも言われるようになってきました。 工業もダメだ、 サービスもだめだ、 これからはハイテクと情報だ、 というふうに変わってきたわけです。

 そういう戦略の元で1980年代から具体的なプロジェクトが始まり、 今も沢山続いています。


ニューヨークの状況

 ご存知のようにニューヨークの経済は今絶好調です。 ちょっとうらやましい話ですが、 とにかく資本力が抜群にありますので、 巨大なプロジェクトを延々と続けられるわけです。

 後でスライドでご紹介しますが、 例えば「世界都市」の拠点としては、 ウォーターフロントにあるバッテリー・パーク・シティが有名です。 世界のファイナンシャルセンターを造って、 そのそばに高級なコンドミニアムを並べて建てようというプロジェクトで、 ほぼ完成しています。

 また「脱工業都市」の典型としては、 サウス・ストリート・シーポートがあります。

 ウォーターフロントの工場と港湾を閉鎖して、 ショッピングセンターなどツーリストを呼び込む施設を造るという、 いわゆるウォーターフロント開発です。

 今、 フィッシャーマンズワーフなど似たようなものをどこの国でも造っていますが、 世界で最初のプロジェクトがここでした。

 あるいは「ツーリスト都市」という事では、 タイムズ・スクエアの大再開発をやっていて、 かなり立ちあがってきています。

 また「情報都市」という事ではシリコンアレーが挙げられます。 これは大きな開発ではなく、 小さな開発がダウンタウンに沢山でてきています。

 さてグローバリゼーションにおいて、 何がグローバル化しているのかというと、 金とか人とか物とか、 そういうものなのですが、 一番重要なのは「イデオロギーのグローバル化」だろうと思います。 では、 どんなイデオロギーがグローバル化しているかというと「新自由主義」、 ニュー・リベラリズムと、 「新保守主義」、 ニュー・コンサバティズムです。

 一見矛盾するような二つの思想が、 今グローバルに広まってきています。

 というのも「新自由主義」はグローバルな単一のマーケットを創って自由にやってくれという考え方です。 ところが国境を無視してどんどんグローバル化をやっていくと、 国のアイデンティティと統合が危うくなるので、 一方で「新保守主義」が台頭しています。 これは世界的な傾向で、 日本でも、 森首相がIT革命を一生懸命言っておられるかと思うと、 片方で神の国といったような発言をしているわけです。

 このように矛盾した感覚がグローバルに広がっている事が重要で、 この思想の元で、 大規模な開発が進んできたと言えると思います。

 それに対してローカルなグループがどういうふうに反応しているかという事は、 後でお話します。

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