都市再生の都市デザイン
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私達はまちづくりの「構え」を
伝える言葉を持っていない

 

丸茂

 今日は丹下研究室の頃からの一連のことを思い出しながら、 お話をうかがいました。

 今日のお話で一番印象に残った言葉は「構え」という言葉です。 井口さんや江川さんがおっしゃったことと関わりがあると思うのですが、 都市空間を作る話はパーティに来る人はどんな服で来るのかを気にしながらパーティの場を作るのと一緒だと思います。 しかし、 パーティに参加する人の服はそれぞれの創意に任せた方が楽しくなるんです。 ですから、 主催者は来る人の服を気にするより「どんな楽しいパーティにしようか」という構えがないと、 パーティは壊れてしまいます。 加藤さんはそのことにこだわっておられたんだと思います。

 先ほどキャンパス計画はアーバンデザインではないとおっしゃっいました。 槇さんのように全部何もかもされる人もおりますが、 多くのキャンパス計画はいろんな人たちが入ってきて、 まちづくりのように作られています。 私もキャンパス計画に関わったことがありますが、 そこで感じたことは全くこちらの意図とは違う構えで提示されることが非常に多いということです。

加藤

 何度も例に出すようだけど、 「トイレを並べてしまう」みたいなことですね?

丸茂

 そう。 広場を作りたいと思っているのに、 建築家がそっぽを向いてしまうことです。 パーティに喩えると、 全くパーティに参加する意志がなくて、 会場で別の行動をとってしまうんですね。

 ですから、 私達がアーバンデザインなり空間を作ろうとするとき、 キーワードになるのが「構え」なんだろうなと思います。

 しかし、 同時に私達は高さ規制とか壁面線指定といった道具は持っていますが、 「構え」についてそれを提示したり、 後に続く人たちに引き継ぐという手法は言葉としては持っていないんです。 それをどういう風に作っていくかが大事なことではないかと、 私は今日のお話をうかがいながら考えました。

加藤

 全くおっしゃるとおりです。 先ほどからの議論につなげて申し上げると、 私達がこだわっているのは、 最終的な意匠ではなく構えだろうと思います。

 例えば、 丸亀の駅前広場の再開発については旧道が残っていることや駐輪場の位置がおかしいと説明しましたが、 本当はあの駅前広場の美術館の両側の道が問題で、 このままでは美術館の両側が不必要に空いてしまい、 抜けた感じの広場になるだろうと感じたんです。 だから再開発ビルのファサードを駅前広場の長辺と同じ長さになるようにしたいという気持ちがとても大きかったんです。 これは、 広場に対する美術館や再開発ビルの構え方だと言えます。

 建物の高さについても、 再開発ビルの大体のプログラムは見えていた段階ですから、 6〜7階の高さにして欲しいと申し上げていた時期もありました。 そういうことの方にこだわりがより強くありますので、 江川さんや井口さんがおっしゃっているようなデザインへのこだわりについては、 私も言いたいのですが、 それは専門家に頑張っていただきたいところですし、 私自身は「懐を深くして」待っている次第です。

鳴海

 みなさんどうも有り難うございました。

 私の感想を短く言うと、 加藤さんは誰と話しをしていても、 同じようなスタンスでしゃべられる人だと感じました。 それが加藤さんの考えている都市環境デザインのありようだろうし、 そういうやり方もあるんだと思います。 ぜひ本を買って確かめてみようと思います。 では、 これで今年最後のセミナーを終了いたします。

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