3 JUDI関西タイセミナー印象  河本一行

●チャオプラヤー河からの水上景観

 タイの中央平原は海抜2m前後で、基本的には複雑な運河網が4本の主要な河川を結んでいる。4河川の中で最も重要な河がチャオプラヤー河である。毎年雨期の5月末から11月にかけて強いスコールによって洪水が起きる。その上、北部に降った雨が河川に集中し、ゆっくり流下し、中央平原に達する時期に河口部はあふれんばかりになり、これが重なって毎年大洪水を起こしてきたという。全地域が巨大な浅い淡水湖のようになり、1年の1/3の期間は人々は水と共に暮らしてきた。このため、大多数の人々は水上住宅か、河川沿いの高床式住宅の村で生活してきた。歴史的にはその多くは要塞化し、河に沿って細長く発達したまちを形成してきたという。バンコクもある意味ではそうしてできたまちの一つである。
 チャオプラヤー河からの水上景観は、セミナーで合流したタイ政府関係者の方々にとっても新鮮だったようである。かつて、水上での生活が主流であったタイの人々も、陸上での生活が主体となった現在、河川との結びつきも弱くなりつつあるようにも見受けられた。
 水上集落では、1995年にインドネシアのカリマンタン島のマハカム川をやはり1日かけて眺めたことがあるが(住居の質はかなり異なる)、互いの共通点を感じた。それは、急激な近代化、都市化である。ここバンコクでは、水上集落を日本の区画整理事業の手法を応用して再整備するプロジェクトが進められているという。これら、水上集落が消えてゆくのも時間の問題なのだろうか。
【チャオプラヤー河/バンコク】

まるで道路を走っているような風景

洪水でも何でもない。水上集落の電柱が川の中に並ぶ

水上住宅の見学

舟が交通手段

インドネシアのマハカム川の水上住宅/未開のジャングルの環境破壊が進む
●チェンマイの晩餐会

 タイでの最後の夜は、チェンマイでの晩餐会だった。チェンマイ美人の民族舞踏は、我々の旅の疲れをすっかりほぐしてくれた。このオールド・チェンマイ・カルチュラル・センターは、カントーク・ディナーと山岳民族ショーを売り物にし、タイの民家風の造りで床に座って北タイの古典舞踏を観賞しながら食事をするスタイルで観光客に人気を集めている。舞踏は、二部に分かれ、第一部は、チェンマイ美人による舞踏が食事をする室内で行われ、第二部は、食事の後に屋外の観客席つきの舞台において山岳民族の舞踏が行われる。これら2つの建物を結ぶ通路に沿って舞踏に出演する少数山岳民族の家族等関係者が経営する土産物の露店が連なり、第二部を見るには、観客は必ずここを通行する仕組みになっている。観光と山岳民族の生活支援策が融合した地域振興策のようにも思えた。

※カントーク/特別の行事の時に、食卓として使う低い台足のついた丸いテーブルのこと。
【オールドチェンマイ カルチュラルセンター/チェンマイ】

チェンマイ美人による舞踏



タイでの最後の夜

少数山岳民族による舞踏






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