5 水上都市の花の町づくり  辻本智子



 庶民の花文化が生まれる地域は、家の周囲に外周庭園を持つ地域で、イギリス、ジャワ、タイ、日本があるということを、中尾佐助先生の本で読んだことがある。水上住宅の庭はそこで述べられている住宅タイプとはまったく異なった形態ではあるが、川沿いつまり、家の外周に花を持ってくるのは同じである。
 美しい伝統的タイ建築の住宅、ウォーターフロントリゾートのようなモダンな家、釣堀を家の前に持つような合理的な漁師の家、レストラン、バルコニーを桟橋に持つ家、家の前の川で水浴びする女性、泳ぐ子供、今回バンコクの水上都市を見て、私にとってなんとなく貧しいイメージであった水上生活者とはまったく異なった川と共生する豊かなライフスタイルに驚いた。
 多くの水上住宅はウォータフロントのベランダに鉢花の草花を美しく並べており、まさしく水辺のコンテナガーデンを楽しんでいる。水辺にはホテアオイ等水性植物があるが水生植物を楽しむよりサンタンカやブーゲビレア、ユーフォルビアやクロトン・ドラセナ等の暑さに強い鮮やかな熱帯花木や観葉植物などの鉢ものが多く用いられている。鉢は多分、この低温地の泥を利用して昔から焼いていたのであろう。
 日本の花の町づくりで道路と家の間の仲間領域に花を飾られてはコミュニティー性が高まるということを自説にしているが、ここでは家と川の間の中間領域に花を用いることが、同じ結果となっている。
 中尾先生のタイの庭とは形態がことなるが、確かに市民花文化が非常に豊かな国である。それに引き換え公的緑が町に少ないというのが目立つ。まさしく、アジアは同じなのかもしれない。


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