8 水上居住 バンダルとバンコク  難波 健

ブルナイ  バンダルスリブガワン、ブルネイの首都である。JUDIタイセミナーに参加したついでにどこを廻ろうかと考えて、ふと目に止まったのがカンポンアイルである。世界一豊かな国の水上居住というのを観てみたいと思った。
 バンコク=ブルネイの往復チケットを手配して地図を見るとブルネイはバンコクのついでというにはいささか遠く、マニラやシンガポールのついでに行くべき国である。フライト時間は行きが2h25m、帰りが2h18mであった。
 BRUNEI、われわれはブルネイと呼んでいるが、バンコクでも現地でもむしろブルナイに近い発音である、またこの首都Bandar Seri Begawanの名も、どう見ても長すぎる、バンダルと呼ばれていた。ブルナイの人口は30万人、バンダルには10万人というが、なにしろボルネオ島、密林の中にはネイティブが何人いるかわからないという。それと、豊かな国への出稼ぎが随分いるようである。背中にLANDSCAPINGと書いた黄色いベストを着た草取り部隊や柿色のベストの道路清掃部隊は外国の人のようだった。私の話したLANDSCAPERはバングラデシュから。郊外のムアラに行くバスで親切にしてくれた運転手、ホテルのマネージャーはフィリピン人だと言っていた。


オマール・アリ・サイフディン・モスク からカンポンアイルを望む

ランドスケーパー:ジャミーモスクを常にきれいに保っている。

ロードスケーパー:道路の清掃、植裁の管理が仕事。
カンポンアイル  Kampung Ayerへはボートで渡る。私は、タクシータイプの船で渡って乗り合いタイプで帰った。住宅街のところどころにバス停のようなボート乗り場があるが、時間が決まっているわけではなく、通りかかりの船に着岸をうながしたり、船の方から寄ってきたりする。
 カンポンアイルの一部には陸からのデッキが架かっているが、一番広いブロックへのアクセス手段は船しかない。しかし、一旦渡ってしまえばボードウオークで歩き回れ、どの家もこれに接続しているところは、バンコクで見た一軒一軒に船でアクセスするのと違っている。
 バンダル自体やや内陸で、Sungai Brunei(ブルネイ川)の湾曲部に立地していて、その川の浅瀬部分に水上住居が密集している。水の中から木が生えているところもあり、けっこうゴミがたまっているところもあった。市場に豊富な魚や鳥や果物、野菜は岸づたいにボートで運ばれてくるとのことで、隣接するマレーシアからも毎日入荷すると言っていた。

カンポンアイルを行き来する船、ヤマハ、ホンダ、スズキのエンジンがついている

この木は水の中から生えている。ミナレットはカンポンアイルの中に建つモスク
防災とメンテナンス  水上居住地の中に2カ所、火事で焼けた跡をみた。木造だけにひとたまりもなくやけ拡がる恐ろしさを感じる。
 ボードウオークのメンテナンスはしっかりされており、学校が休みだったせいか、子供達がたこ揚げや魚取り、はては水への落としっこをしていて人なつっこくほほえみかけてくる。カンポンアイルは生きている印象を受けた。

ボードウォークの木材は船で運ばれ、順次、補修というより構造から改造しているしっかりした工事であった。

2カ所の火災現場の1つは、以前鳴海先生が行った時にすでに焼けていたそうです。
宗教と生活  ブルナイは95%がモスレムとのことである。びっくりしたのは、バンコクからのフライト、ロイヤルブルネイの機中にビールがない。町中にも全くアルコールがない敬虔な回教国である。私の泊まったホテルでもジュースしかなかった。

Jame Asr Hassanil Bolkiah Mosque贅を尽くした内装と外観、入場料は当然無料。

バンコク水上住居の祀り。

ボードウォークの木材は船で運ばれ、順次、補修というより構造から改造しているしっかりした工事であった。

2カ所の火災現場の1つは、以前鳴海先生が行った時にすでに焼けていたそうです。
 当然、立派なモスクがいくつもある。東南アジアの例で、商売人や食べ物屋には華僑とインド人が多く、華僑の寺院には参拝者と線香の煙が耐えないし、キリスト教会が2つあると聞いた。
 最大のモスク、ジャミーモスクはともかく大きくてきれいで、掃除やメンテもしっかりしている。夕方5時にテレビからコーランの声が聞こえてきて、窓からも町中に響くスピーカーから同じ声が聞こえてくる。バンコクやチェンマイの各家に神が祀ってあるのとは対象的である。
 日用品については、カンポンアイルではボードウオークに面して雑貨屋があったり、これはバンコクでは船でアクセスする雑貨屋と同じ構図である。
 当然学校もあり、水上の2校を確認した。運動場こそないが、校舎は片廊下で教室内は日本と変わらずパイプ椅子がならび、図画が貼ってあった。
 住宅の中はフラットな木の床で裸足で入ることはバンコク、バンダル同じであろう。バンコクで訪問したお宅では2Fを案内してもらったが、カンポンアイルでは共同住宅でなければ2Fはなかったように思う。

カンポンアイルとモスクとボート
食べ物  今回、旅行前に図書館で見た本に、東南アジアの屋台に関するガイド、考察が多くあった。バンダルでも泊まったホテルから5分たらずのところにナイトマーケットがあるというので、2日目の夜はその広場に出かけた。チャーハン、ビーフン、焼きそばは一般的な庶民の食べ物で安い。白玉のような飲み物もあり、私にはコップ1ぱいが食べきれないほどの量であった。
 生魚を注文により、ボイルしてもらった店の名はMIZUという。ここのオーナーのおっちゃんは、島根にいたといって、「店の名のMIZUは日本人に大切なものだよね」と、話しかけてきた。
 朝食も昼食も夕食も屋台で済ますという食生活、バンコクでもソウルでもタイペイでも、屋台はたしかにアジアの都市の重要な主役であると実感した。

バンコク水上集落の雑貨屋

バンダルのナイトマーケット

カンポンアイルの室内

バンコク水上住居の室内
 ブルナイは、税金だけでなく教育も医療も無料という。治安が良く、バンダルの広さも歩き回るには頃合いで、乗り物のミニバスも完備していて初級の海外旅行のトレーニングにはもってこいの良い条件を備えた都市であろう。


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