9 川の流れに沿って  堀口浩司

水に棲む人々
 琉球弧という言葉がある。アリューシャン列島から本州・沖縄、フィリピンを経てミクロネシアに至る黒潮に沿った文化的な関連性を指し示している。
 ペーロン・ハーリー・ドラゴンボートなど名前を変えた類似の船遊びがある。人が生まれて、歩き始めるより先に海で泳ぐ、そのような人たちがいる。
 道は川や海であり、家屋は船である。寒い国で生まれた近代の都市計画とは「当たり前」の有りようが異なる。



 「バンコクの道は世界の街のなかでもかなり特殊な構造なっている。(略)バンコクの道の原則は幅の広い大通りと、そこからほぼ直角にのびる路地で形づくられている。広い道路が川の本流であり、路地は支流ということになる。この大通りをタノンといい、路地はソイと呼ぶ、バンコクの街はこのタノンとソイで構成されている。(略)ソイは大通りを背にして左が奇数番号、右が偶数番号で通りから遠ざかるにつれてその番号は増えてゆく。」
 「タノンとソイという構造がタイ人のアイデンティティという問題と深く関わっている。」
 「暮らしのすべてがこの川を軸に繰り広げられてきた。---生活物質も文化もすべて、この川を伝って届けられたのだ。」
(双葉文庫「新・バンコク探検」下川祐治より)
船首の花飾り
水上で生活する人々の装いは、船や玄関(河川側)に見られる。日本人がマイカーに成田山のお守りを張り付けるのと同様である。
川で体を洗う兄妹
小舟によるタイ風ラーメン屋や雑貨屋、ココナッツ屋など、さまざまな屋台船も行き交っている。
交通・流通以外にも洗濯や入浴など生活面でも多様な水との関係がある。
ナーガ(naga)とマカラ(makara)
胴体がマカラ、その口から出ているのがナーガ。共に水底に棲む神であり、蛇、ワニ、象の混じったような容姿である。
浮稲栽培など農業生産と治水が密接な関係にある。
住宅2題――岡にあがった水上住宅

 

 チェンマイの市内でほぼ隣接して建っていた住宅2題。どちらも裕福な家らしく、敷地が広い。
 高床式の住居は、水害や湿気、蛇、虫等を避けるの都合がよい。上の写真では、台所は外部にあり、食事は母屋でしたり、外部で食べたいりといったところ。伝統的な家はチークなど硬い木材を使用している。雨は多いが台風がないため、屋根は軽い。
 下の写真は最近の住宅。一階のピロティは細いRCの柱で支えられている。芝も丁寧に刈り込まれており、なんとなく西洋的になっている。



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