魅力ある個性的な“地域デザイン”を求めて
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はじめに

 私は、 まちづくりを主体に仕事をする総合コンサルタントとして、 いろんな地域でいろんな分野の仕事を30年近く続けています。

 私の仕事であるまちづくりでは、 都市や建築、 土木、 造園がクロスオーバーする形で仕事が進んでゆきます。 その背景には、 経済や、 まわりにある土、 水、 緑などの自然、 社会の中の歴史や文化、 風土があり、 その中でハードとソフトの技術を組み合わせながら仕事をしてゆきます。 ですから、 まちづくりでは単純に建築だけ、 あるいは土木だけに専念していればいいというものではなく、 ハードからソフトまで何でも関わっていきながら仕事をしていくという場面が多いのです。

 また私がやっている分野は、 市町村の総合計画、 市街地の中の土地利用や再開発・再整備、 あるいは今流行りの中心市街地活性化や環境整備といったものです。 例えば、 都市周辺の郊外だったら新都市開発をしてみたり、 公園整備やランドスケープ整備の仕事もしますし、 キャンパス計画をすることもあれば、 建築設計に関わることもあります。 ですから専門は何かと聞かれると一言では答えにくい時もあります。 しかし、 いろんなことに関われる面白さはあります。 ただ、 ひとつの専門を深く追求している立場の人から見ると、 浅はかに思われているかもしれません。

 そういった常日頃の仕事の中で常々考えてきたことがあり、 それをまとめたいと思ったことが論文に着手したきっかけです。 ちょうどその頃、 大学にも社会人向けの博士課程の制度が出来、 母校である大阪市立大学に入って、 3年間で論文を書くことができました。 論文を書いていて、 一番きつかったのは日頃書き慣れている報告書と勝手が違うことです。 内規によると3本の審査付き論文を書かなくてはいけなかったのですが、 土木学会に出した論文は落ちてしまいました。 都市計画学会や建築学会でなんとかそれをこなし、 それに肉付けをして博士論文にしてゆきました。

 おかげで論文は無事に通りましたが、 今日はドクター論文の内容だけをお話しするのではなく、 なぜこういう論文を書いたのかという背景もふまえながらお話しすることにいたします。

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