ハウスメーカーの役割とは?
その社会性について
業界が協力し合ったまちづくり 緑陽ハイツ |
緑陽ハイツ |
ですから、 ハウスメーカーは一人一人の注文住宅を建てているつもりでも、 年間にすれば何万戸という家を建てているのですから、 1本1本の木が集まって森になるように、 これだけの数の家を建てているからには、 街をつくっているのと同じだと認識すべきなのです。 ハウスメーカーがまちづくりをしていると言うと異和感を感じる人もいるでしょうが、 私自身はそのことにこだわって仕事をしています。
この写真は、 熊本県の緑陽ハイツです。 熊本県の住宅供給公社が県の土地を75区画に分けて建て売り住宅を売りたい、 ついてはプレハブ業界にまちづくりの提案をして欲しいという依頼がありました。 各社いろんな案を出した結果、 私どものE & A設計が出した案が採用され、 私共がまちづくりを担当することになった次第です。
写真に見える住宅は同じように見えるかも知れませんが、 17社の建物をコーディネートしたものです。 業界が協力し合って、 低層の戸建てをまとめてまちづくり提案をした事例です。
まちづくりにもいろいろな視点がありますが、 私が今日お話しするのは、 このような戸建て集住体としてのまちづくりです。 幸い、 この事例は第6回みどりの都市賞・建設大臣賞をいただき、 1992年には熊本県の景観奨励賞もいただくことができました。 町並みを作るために家々が共通する部分を持ったり、 各戸で自由にしていい部分を考えたりして全体のコーディネートをしていった事例です。
ちなみに、 私共ではプレハブではなく「ハウスメーカー」という言葉を使っています。 我々が作る家を「プレハブ」というのは、 もう時代遅れだと思います。 「プレハブ」は家の部材をあらかじめ工場で生産しておくということで、 戦後とにかく家がないときに「とりあえず早く家を作ってくれ」という政府の依頼で出来た業界です。 しかし、 今の我々にとってはプレハブは家の供給手段に過ぎず、 「とりあえず早く」とは違った視点で家づくりをしていこうとしています。 ですから「ハウスメーカー」という言葉を使うのです。
ハウスメーカーが協力して行ったまちづくり
ハウスメーカーというと、 展示場にそれぞれモデルハウスを建てて「どうぞ我が社の家を買って下さい」と、 激しく客引き合戦を繰り広げているイメージがあろうかと思います。 しかし、 時には各社が協力し合って、 まちづくりをする場合もあるのです。
よく用いるまちづくりの手法
我々が手がけるまちづくりの手法は、 もうすでに一般化されているものも多いのですが、 次のようなものです。
以上がハウスメーカーが協力して行うまちづくりです。 競合もしますが、 綺麗なまちを作るために各社が合意してお客さんにすすめてもらうというやり方をしています。
・ボンエルフ道路…住宅地の中で人と車の共存を考えるが、 どちらかと言えば人を優先する道。
戸建て集住体としての新しいコミュニティをつくる
・協定緑地を作る…一軒一軒はそれぞれ個人の所有地ですが、 まちづくりの観点から、 道路に面する部分の家のしつらえや樹木について、 住民みんなで協定を結びます。 我々の仕事は、 その原案を作って一人一人の合意をとっていくことです。
・コモンスペース…みんなで少しずつ土地を出し合って共有地を作り、 そこでみんなが楽しめるよう提案しています。
・フットパス(歩行者専用道)…これもみなさんで土地を出し合って作る場合も、 最初の計画段階で決めておくこともあります。 住宅地は歩行者優先ですから、 こういうのも必要だと思います。
・シンボルツリー…建てた家一軒一軒に高木を植えてもらいます。 その種類については、 家の個性を発揮できるよう最初にハウスメーカーから提案します。 また、 最初から木も一緒に購入してもらう場合もあります。 このシンボルツリーが育っていったとき、 街路樹になることも期待しています。
・共通外構…家は各社それぞれですが、 道路に面する外構部分に関しては共通の設計施工で統一するようにしています。 これで街並みが整ってきます。
屋根のフォルム、 窓のデザイン |
ハウスメーカーのまちづくりを簡単に言うと、 こういうことになります。 多少はご理解いただけたでしょうか。