私の方からひとつお聞きします。 ハウスメーカーは個人の敷地に家を建てるのが基本的な仕事だと思っていましたが、 今日の話を伺っていますと個人の敷地から公共空間にまたがって仕事をされているようです。 ひとつの団地をまるごとデザインしていた事例がありましたが、 ハウスメーカーとしては、 そうした個人の敷地以外のスペースにどれぐらい関わっていけるのもなのでしょうか。 また、 そのようなまちづくりをする割合は、 仕事全体の中でどのくらいを占めるものなのでしょうか。
増田:
ディベロッパーさんが開発した宅地を購入し、 そこに家を建てて売るとなると、 パブリックスペースの余地はほとんどないのが普通です。 個人の宅地と道路だけですから。 我々が独自にマスタープランから作っていく場合にのみ、 パブリックスペースを作ることが可能になります。 しかし、 その頻度はとても少ないと言っていいでしょう。
また、 パブリックスペースを作る上で難しいのは、 肝心の入居者の理解を得にくいことです。 例えば、 先ほど例に出した新光風台の場合、 真ん中を蛇行状の道路にしてあいた部分にコモンスペースをとったのですが、 自分の土地を持ち出して共用地を作ることになりますので、 入居者には喜ばれないんです。 できればお金を出した以上、 100%自分のものにしたいのが入居者の本音なんです。 賞をいただいたものの、 こうしたまちづくりはまだ実験の段階を抜け出していません。
代表作品のほとんどが、 低層戸建ての住宅を上手にデザインしておられると思いました。 震災の後も、 ハウスメーカーの戸建てはいっぱい建ちました。 そういう個人の家から、 自然共生や循環型の街、 ユニバーサル・デザインのまちを作り上げていくためにはどういうことが考えられるでしょうか。
増田:
とても良いご質問だと思います。 集合して建てる場合は計画的にできますが、 分散して一戸一戸建てているとそこまで気が回らないと思われがちです。 しかし、 年間にするとかなりまとまった戸数を建てているので、 ハウスメーカーはやはり社会的責任を感じなければならないと思うのです。
ナショナル住宅で、 私が属しているセクションでは「一戸一戸の外構はこうしてほしい」とか「シンボルツリーを植えましょう」など、 家を建てる人は街の景観にも配慮して欲しいという啓蒙的なマニュアルを配布しています。 なお、 このマニュアルはお客さん向けだけでなく、 お客さんと接する社員向けの両方を作っています。
分散して建つにしても、 百年持つ家を作るんだったら百年後には綺麗な街になって欲しい。 なかなか浸透させるのは難しいのですが、 お客さんにも社員にも日々そうやって説得しています。
質疑応答
どこまでがハウスメーカーの仕事になるのか
司会:
個々の家からのまちづくりは考えられるか
稲田(関西学院大学):
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