都市環境デザインの仕事
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質疑応答

 

夢を売るエピソードおよびゼネコンが欲しい人材について

杉本(大阪大学)

 辻井さんのお話の最後で「事業主さんの決断を一押しする」という言葉が出ましたが、 そこに辻井さんの都市環境デザインへの思いが込められているのかなと思いました。 夢を与えるお仕事として、 具体的なエピソードがあればお聞かせ下さい。

辻井

 これも例えばの話でお答えしましょう。 例えば、 30万m2の床を埋める事業の仕事をしていた頃、 その中のほんの小さなスペースだけど「医療施設を持ってきたい」という話があったとします。 しかも、 せっかく作るんだったら今まであるようなクリニックを持ってくるのではなく、 グループ診療所にしたいという要望が出たとします。 そこで、 私達がいろいろ勉強していくと、 アメリカではグループ診療が一般的ですが、 日本にはあまり知られてないことが分かりました。

 これは日本のお医者さんが自分の客をよその医者にやるのは虫が好かんという背景があるのですが、 お客さんの側からするとグループ診療所は自分が考えていた部位以外の病気も発見してもらえるので、 大変都合がいい。 事業主はお医者さんからその話を聞いて「よし、 それなら私がそれを事業化したい」と思ったわけで、 私達に依頼してきました。

 私達はたまたまその分野の勉強をしていまして、 その当たりに造詣が深い先生を知っていたり、 名古屋ですでに実績を積んでいる事業主を知っていました。 そこで、 我々の事業主とそういう人たちの「お見合い」をセッティングし、 考えている事業をやるべきかどうかを決めてもらうことにしたのです。

 「やる」という決断はすぐには出ないのですが、 このように事業主さんが心に抱えている要望や悩みは無数にあります。 それぞれの悩みを私達が整理し、 要望についてはいろんな選択肢を用意してあげる。 「お見合い」をして具体的に提示すると、 事業主さんは「そうそう、 こんなのがやりたかった」と改めて事業の意義を発見し、 次のステップへ進んでいくことができるのです。 それに立ち会うことが出来るのも、 我々の仕事のやりがいですね。

司会

 同業者として、 私の方からもゼネコンのお薦めできる点を若干補足しておきたいと思います。 辻井部長もそのひとりですが、 現在ゼネコンの中枢を占めている団塊の世代の人たちが、 今後8年ぐらいのうちに大量に定年退職されていきます。 さらにオイルショックの頃にゼネコンはほとんど人を採用していません。 ということは、 みなさんがゼネコンに入って30代になる頃には、 世代交代も進んでいますので、 自らの考えを実現することが今より可能になると思います。 ですから、 私はゼネコンは必ずしも悪い業界ではないと思っています。

 とは言え、 ゼネコンに入るのは大変狭き門ですから、 入りたい人はやはり努力して勉強しておいてください、 と一言付け加えさせていただきます。

辻井

 全くその通りですね。 今後、 ゼネコンが採る人材は新入社員を採用すると言うより、 間違いなくそれぞれの部門の幹部候補を採ることになるでしょう。 今、 採用しようとする視点は将来こいつは絶対幹部になれるかどうか、 その素質に注目するはずですし、 面接でもその部分を厳しくチェックする傾向にあります。 ですから、 幹部になる覚悟のある人だけにゼネコンをお薦めします。

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