中農さんは、 関西大学建築学科を卒業された後、 三和建設、 末吉栄三計画研究室を経られ、 82年から沖縄県那覇市役所に勤務され、 最後の9年間は都市デザイン室でアーバンデザインに従事されました。 去年から姫路建設専門学校の校長先生をされています。 今日は那覇市役所時代の行政の立場からのお話をいただきたいと思います。 現在は行政の立場を離れておられますので、 中にいては話しにくいことも伺えると期待しております。
中農:
こんにちは、 姫路建設専門学校の中農です。 「行政アーバンデザイナー」とは妙な名前ですね。 「行政」と「アーバンデザイナー」が何故一緒になっているのかと不思議に感じられるでしょう。 行政は、 「お役所仕事」や「仕事をしなくても飯が食える」など、 あまり良いイメージではないかも知れません。 しかし、 行政アーバンデザイナーの仕事は、 とてもハードですが、 実はやりがいがあり楽しい仕事です。 環境と福祉、 ITなど都市の質が求められる21世紀になって、 ますます社会に必要とされる職能です。 今日はまずアーバンデザインとは何かについてふれてから、 その中での行政アーバンデザイナーの醍醐味についてお話しします。 アーバンデザインとは
はじめに
司会:
よく見られる街の風景 |
よく見られる街の風景 |
右は別の街です。 周辺は2〜3階建ての市街地なのに、 なぜ高層マンションが建つのでしょうか。 これを造った人は、 法律違反をしているわけではなく、 合法的に建築を建てたのですが、 結果として、 このような奇妙な景観になってしまったのです。 私から見ると、 この街はどのような街にしたいのかという意思や作法が見えません。 全体として美しさがなく魅力的で元気のある街とは思えません。
アーバンデザインの定義の切り口として、 デザインや制度面など幾つかありますが、 まちづくりの切り口から言いますと、 市民それぞれが日々自分たちの目的のために家やマンションなどを建てていますが、 市民のそういった事業目的を尊重しながらも街全体として調和のとれた美しく魅力的な都市空間を形づくり、 都市空間の質を高める行為がアーバンデザインであり、 豊かな市民生活と元気な都市づくりに必要不可欠なものと言えます。 ですから、 アーバンデザインはいわゆるデザイナーだけが担っているわけではなく、 住民や事業者、 専門家、 国、 県、 市などの都市生活を営む全ての市民それぞれがアーバンデザインを担っています。 しかし、 市民一人一人が共有できる都市づくりの理念や技術、 そして協働のシステムや制度などを整え実行することは、 行政がやるべきことであり、 行政にしかできないことです。 これが行政アーバンデザインだと思っています。