都市環境デザインの仕事
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那覇市の行政アーバンデザイン

 

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那覇市におけるアーバンデザインの取り組み体系
 図は那覇市におけるアーバンデザインの取り組み体系を示したものです。 那覇市では「政策型アーバンデザイン」と「調整型アーバンデザイン」の二本柱で行政アーバンデザインをやっていて、 組織的にも政策チームと調整チームに分かれています。 「政策型アーバンデザイン」は、 まちづくりの方向性や理念を定めアーバンデザインの具体的政策を企画立案し実施するもので、 「調整型アーバンデザイン」は日々建設される道路・公園などの公共施設や住宅やマンションなどの民間施設が那覇のまちづくりの考え方に整合するものに仕上げていくために、 具体的なモノづくりのデザインについて調整するものです。


政策型アーバンデザインの事例

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首里城下町の遠景)
 政策型アーバンデザインの取り組みの一つ、 地域レベルのアクションプランの策定・実践事例です。 赤いのが那覇市の首里城です。 このような首里城を格とする歴史的地域をどの様な都市にしていくか、 その計画と施策をどうつくり実践するかが課題です。

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首里城下町街路整備図(部分)
 首里城下町の街路整備計画図です。 県道・市道を含めた全ての街路について、 歴史的環境をテーマとした整備の考え方を沖縄県と協働して那覇市が作成したものです。

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首里金城町の遠景
 首里城の西南に位置する首里金城町の様子です。 沖縄戦で灰塵と化した首里地域の中で比較的に被害が少なく文化財が残った地域で、 緑も比較的残っています。 石畳と石垣、 琉球赤瓦、 屋敷林などを歴史的景観要素として、 景観形成を図っています。

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首里金城町石畳道(県指定文化財)
 地区の中心軸となる首里金城町の石畳道の景観です。

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首里金城地区景観形成基準
 地域の方々と8年かけて合意にこぎ着けモデル地区指定し、 図のような具体的なガイドラインをつくりました。 上限100万円の助成支援をし、 まちづくりを進めています。 これが政策型アーバンデザインの地域レベルのアクションプランの事例です。

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壺川東市営住宅・緑地計画図
 これは、 拠点レベルのアクションプランの事例です。 この地域はかつて密集市街地だったので、 地区改良型の住環境整備事業を行いました。 元々この地域の民家にあった樹木や井戸を残して、 地域らしさを最も表現する地域の拠点になるようなオープンスペースを創っています。

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井戸水を活用したビオトープ
 水の豊富な地区だけに井戸や樹木も多くあったので、 ただ単に井戸を保存するだけでなく、 井戸水をつかったビオトープをつくっています。

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a シンボルツリーとして残されたガジュマル

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b 井戸水を活用したせせらぎ
 写真aは、 沖縄独特の大きな豆科の植物ガジュマルです。 これも民家にあったものを広場のシンボルツリーとしてデザインしました。 写真bのせせらぎも、 井戸水を使っていて潤いのある地域の拠点になっています。

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文化財をつなぐ歴史散歩道(ヒジガービラまーい)
 これは、 多様な場の企画デザイン・実践の一つであるモデル事業の事例です。 首里城の城下町にはたくさんの文化財がありますが、 日頃市民の目になかなか触れません。 そこで文化財をつなぐ散歩道(ヒジガービラまーい)を整備することによって、 地域の文化財を掘り起こし、 日常生活の中で歴史文化に触れることのできる都市空間を創ろうと企画・立案されたものです。

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a 崎山馬場ギャラリー(琉球王朝時代の馬場跡)

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b 路地裏の文化財をつなぐ石畳の散歩道
 写真aは、 琉球王朝時代の馬場跡(競馬をしていた場所)です。 それをふまえて、 馬の彫刻のあるギャラリーとして整備しています。 写真bは、 日頃意識しない文化財がある路地裏を琉球石灰岩で整備した散歩道です。 このように、 地域の歴史、 文化の掘り起こしを行い、 日常生活の中でそれらに触れることのできる道空間を創出しています。

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安謝川改修・末吉団地計画コンセプト図(部分)
 これは、 関係デザインの提案・実践の事例です。

 紫の部分に那覇市の市営住宅があって、 その前の安謝川は沖縄県が管理しています。 向かいの公園は那覇市の公園緑地課が管理する施設です。

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末吉団地・安謝川整備計画図
 このように幾つかの公共施設が隣り合う場所を調和のとれた一体的な空間にするため、 場所性や街の歴史を読み込み、 それぞれの施設の関係デザインを提案しています。 那覇市の都市デザイン室が、 各事業者にデザイン提案をし、 共通理解をしながら事業を進めました。 とくにここでは、 末吉という歴史的集落のゲート空間に相応しい団地と橋のデザインのあり方や団地と河川空間の一体化が主なテーマでした。

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(A)断面図
 元々は間知ブロック護岸で人を寄せ付けない河川整備を計画していたのですが、 県も全面的に計画変更してくれて、 団地と河川空間を一体化すると共に、 近自然工法で整備することになりました。

 従来は、 各事業主がそれぞれ勝手にやって、 自分の敷地の中だけで完結する施設のつくり方でしたが、 お互いに一つの「都市空間」というキーワードで考えるとこのような作り方ができます。 ここでは、 県と市、 市内部の部局間という行政の縦割りを横につなぐことによって実現しましたが、 これもアーバンデザインの技術の一つです。

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一体空間として整備された末吉団地と安謝川
 このように、 団地と河川の垣根を取り払い空間を一体化すると共に、 自然度の高い河川整備により水緑の豊かな憩いの水辺空間を創り出しています。


調整型アーバンデザインの事例

 
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沖縄県立芸術大学(首里城からの見下ろし景観)
 まずは沖縄県との調整事例です。 これは、 首里城の眼下に建設された沖縄県立芸術大学です。 沖縄県の事業でしたので、 那覇市は口は出しましたけれどお金は一切出していません。

 那覇市の方からは、 首里城の城下町にふさわしい大学にして欲しい、 屋根をスケールダウンさせるために分節化して欲しい、 20mの高さ計画を10mに押さえて欲しい、 首里城への見通しを確保するために校舎をセットバックして欲しいなど、 首里城からの見下ろし景観や首里城への見通し景観などの歴史的景観の保全という立場から、 県にはいろいろお願いをしました。

 那覇の街にとってどのような空間が必要なのか、 首里の城下町はどうあるべきなのかについての那覇市の考えを沖縄県に実行してもらうことは、 簡単そうに話していますが、 実際は大変なことなんです。 県は市の上位機関というプライドがありますので、 そのプライドを刺激しないようにしながら、 しっかり市の考え方を理解してもらい実施していただきました。

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道路拡幅前(民家の屋敷内にあるガジュマル)

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道路拡幅後(歩道上に現状保存されたガジュマル)
 次は、 那覇市の他部局との調整事例です。 これは、 那覇市道の整備事例で、 都市計画道路で拡幅される部分にあった樹齢60年のガジュマルの保全と馬場という歴史的な場所の表現がテーマでした。 このテーマの下に都市デザイン室でスケッチをし道路事業課と協議を重ねました。

 このガジュマルを現状の位置で道路の中に残すのに1年かかりました。 また、 かつての馬場の表現として提案した琉球松並木や石粉風舗装も国の補助金の範囲内で施工でき、 今では立派な松並木のある馬場の雰囲気を醸し出しています。 地域が持っている個性や場の力などをしっかりと読みとりまちづくりに活かすことは、 アーバンデザインの大きな仕事の一つです。

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開放的な琉球銀行ポート支店の外構
 最後は、 民間との調整事例です。 これは琉球銀行のポート支店です。 銀行ですから安全性を重視し、 できるだけ人の出入りがないように、 以前はブロック塀で囲ってありました。

 改築にあたっては、 那覇市の景観イメージである「亜熱帯庭園都市」をテーマとする那覇の表玄関に相応しい空間づくりをお願いしました。 市民に開放された外構づくり、 既存木の保全、 緑陰樹と芝ブロックで修景された駐車場など、 銀行という企業の社会的役割を考え協力して下さった好例と思います。

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