立命館大学のAです。 市民参加型のまちづくりは、 最近流行り言葉のように言われています。 「市民の声を受け入れてそれに反応してあげる」というお話がありました。 市民と行政の意見が一致している場合はスムーズに進むと思いますが、 合わなかった場合に行政のゴリ押しになってしまう場面があると思います。 その時の意思決定は、 アーバンデザインの中でどのように位置付けられているのでしょうか。
中農:
私の所属したセクションでは「基本的にゴリ押しはしない」というスタンスで進めていました。 しかし、 一般的には役所が地域に出向いて説明会をしたら、 計画案は一切変更しません。 「地域の意見を聞きました」という事務手続き的でアリバイ的な説明会がほとんどです。 そのため、 市民サイドも行政に対して不信感があります。
先程ご紹介した首里金城町の合意形成も、 初期段階は日頃の恨みつらみばかりで「街をこうしよう」なんて話はできませんでした。 「この前側溝がつまってたから役所にいったら、 こんなこと言われた」という全然関係ない話が出てきます。 それを全て受け止めて、 まず信頼関係を築きます。 市民側が間違っている時はハッキリ言いますが、 役所がおかしいと思ったら一緒に担当のところにいって「なんとかならないか」と言います。 そうすると、 地域の人たちも「中農に話をすれば、 何とかしてくれる」と思うようになります。 「苦情一切を都市デザイン室で引き受けます。 」というスタンスでやりましたが、 それでも8年間かかりました。
都市デザイン室では、 決してゴリ押しをしませんでした。 景観条例は紳士協定のようなものですから、 建築基準法のように罰則規定がありません。 条例以前に、 みんなが意識を共有していく作業に努力して、 しっかり信頼関係をつくることが必要です。 最終的な意思決定は市長が行いますが、 案をつくり地域懇談会をした後の地域指定の事務的な手続きは条例で決まっています。
中農さんは市に、 私は県にいますが、 市町村と県、 国の違いを若い方に教えてあげて下さい。 まちづくりをやりたいと思ったら、 私は絶対市町村に行く方が面白いと思います。
中農:
私もやはり市町村の職員が面白いと思います。 なぜなら、 国なら国レベル、 県なら県レベルのまちづくりの役割や仕事がありますが、 市町村であれば地域の生活者である市民と直接話をすることができ、 より具体的なまちづくりに直接関わることができるからです。 その上、 どんどん人の広がりができますし、 具体的にものをつくっていく楽しさも味わえます。 それは、 自分自身の人生の財産だと思います。
しかし、 最近は国の方がある面では市町村より柔軟になってきました。 市町村には、 従来の補助金制度から脱しきれない職員がまだたくさんいます。 例えば、 河川法改正による近自然工法などの新しい工法に対して、 市町村の職員の多くは勉強不足で対応できていません。 国の河川局の職員の方がよっぽど勉強しています。 県の職員の中でも、 生活者としての目線で県政を遂行する職員も出てきています。 それぞれの立場で、 できること、 やるべきことがあるのですが、 私が関わるのであれば、 やはり市町村職員の立場が楽しいと思います。
質疑応答
アーバンデザインにおける住民参加
A氏:
まちづくりに直接関わる市町村職員の楽しさ
荒谷(兵庫県):
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