Hさん:
立命館大学のHです。 増田先生にお聞きします。 住宅メーカーとして街をつくる場合、 作った後のソフトはどうなっているのでしょうか。 例えば、 熊本の例は農園風景のある住宅でしたが、 農作業についての専門的知識が多少なりとも住民に必要になると思うのですが。
増田:
街をつくるときに「いかに生きるか」がキーワードになってきます。 そこで生まれて育った子供は、 例えニュータウンであっても、 そこが心のふるさとです。 僕にとって、 やはり夏祭りが原風景です。 そこで、 滋賀県の草津に草津パナタウンをつくったとき、 神社を作ろうと思いました。 縁があった熊野速玉神社にお願いして、 ニュータウンの丘の上に速玉神社の祠をつくりました。 後は住民の皆さんでやりましょうといって、 みんなで手作りのお神輿をつくりました。 そうしたら、 ノリのいい住民の方が『草津パナタウン音頭』のレコードまで作ってくれたので、 ニュータウンの住民全員に配りました。 この前そこに行ってみたら、 提灯をつけて夏祭りをやってくれていました。
やはり、 ソフトをつくる入り口、 導火線を作ることが必要です。 全部つくってしまったらお仕着せになって、 住民は乗ってきません。 うまく入居者の中でノリのいいキーマンを探して、 住民が主体になってコーディネートしてもらいます。 後はディベロッパーとして、 ハウスメーカーが少しだけ助成金をだします。 神社を作るといっても数千万円かかりますから、 入居者だけでお金を都合するのも無理なので、 会社に掛け合ってお金を出してもらいました。
熊本のアグリタウンは、 2300戸の大規模ニュータウン計画だったので、 それだけ一気に用地買収ができませんでした。 住宅用の用地買収に反対している地元の方に対しては、 「農地を放射状に区切って、 まん中にきれいな噴水を作って、 管理施設も作るから、 アパート経営をするように貸農園を経営しませんか。 あなた自身が農園をやらなくても、 ニュータウンに来た人に農園を貸せば、 これだけ収益が良くなりますよ」と呼びかけました。 農業を続けたい人に対しては「農業が街の風景になるように、 そのまま農業を継続して下さい」と呼びかけました。 強引な全面買収をせずに、 農園や農業を残しながら、 農業とニュータウンが近接するまちづくりを長期計画で仕掛けました。
まちづくりのソフト
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