これらにたいして、 世界で最も豊かな日本がどのような都市景観をつくれたのか。 水辺は生態系で一番重要なところです。 鳥も来るし魚もいるし、 いろんなものがいる。 その生態系に対する理解が足りないと思います。
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これはハウステンボスです。 先ほどの臨海副都心と違い、 水面が非常に入り組んだ形状をしています。
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これを見てもわかるように、 ここはまるっきりオランダのイミテーションですが、 一つのポイントは、 徹底して本物志向であることです。 レンガを全部オランダから持ってきています。 水路のネットワークのつくり方、 材料、 水門などもそうです。 これを誉めようというのではなくて、 ポイントは別のところにあります。
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この写真では水際線を見てほしいのですが、 板柵や、 自然石を積み重ねた護岸にしています。 こういう隙間がたくさんあるところは生物も微生物も棲みやすくなるので、 そういう意味でも生態系にやさしく造られています。
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景観的な問題だけではなくて、 実はハウステンボスでは汚水を一滴も出さないことを目指し、 三次処理以上の高度な下水処理をしています。 また、 佐世保は水不足で困っているところなので、 海水を淡水化するプラントを設置しています。 その他、 共同溝だとか植栽などさまざまなところにお金をかけています。 まさに21世紀は環境をどうつくるべきかを実践しています。
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ハウステンボスでは1日4トンぐらいの生ゴミがレストランなどから出るそうですが、 それを有機肥料にして、 このような花を育てています。 それからコージェネレーションで暖房と発電を両方いっぺんにやっています。 つまり省エネで循環型の都市づくりをやろうということでがんばった事例です。
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ここからは福岡のキャナルシティの事例です。 先にイタリアのカナル・グランデを紹介しましたが、 キャナル(Canal)は運河のことです。 この複合商業施設の中には運河が流れているわけです。 アメリカのコンサルタントによって面白いデザインがなされています。
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こののように、 人が近づけるようにもなっています。 この運河の扱いについては、 当初から最後までずっと論争がありました。 運河は50〜60cmの深さですが、 柵がありません。 特にテナントサイドから、 水難事故の問題や管理費の問題からこれをなくしてほしいという話がありました。 しかしディベロッパーサイドはそれを押し切ってやりました。 ここがただのペイブメントの歩行者空間だと想像すると、 この運河がいかに大事かがわかります。 水辺はただ水が流れるだけの場所ではないのです。
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厳島の庭園 |
先ほどの大東市の水路の断面や構成、 東京の臨海副都心のデザインと、 この江戸時代のデザインを比べると、 江戸時代のほうがはるかに知恵があったのではないかと思います。
一方、 建築においても雨との多様な付き合いかたがありえます。 屋根の上に雨を溜めて蓄冷に利用したり、 雨水がたれるのを楽しんだり、 建物の周りに水面があって水が落ちるのが見えるようにするなど、 さまざまな建築的な工夫がありえます。
また、 建物の中から、 あるいは建物を通して水辺を見るということもできます。 水は百態と言いましたが、 水は反射したり、 自然の移ろいや時の移ろいを表すことができます。 それを建物にうまく活かせるのです。 建築家にはこういうことをやっておれる方がおられるのです。 それに対して都市デザインは、 何をしてきたのでしょうか。
際のデザイン |
先ほどの堤防の姿を思い出すと、 今までは、 間にはっきりと太い線があって水の世界と陸の世界を二分するデザインが多かったと言えます。 最近では親水護岸ということで段階的に、 たとえば階段状にデザインされています。 無段階的なもの、 直線的な形状ではなく、 自然な勾配でデザインされたものも出てきました。
また、 陸地側から水のほうに貫通していくような、 たくさんの穴をあけてつながりを考えるということもありえます。 水辺のかたちでいうと、 くいちがいであったり入込みがあったり、 際のデザインは色々ありうるのではないでしょうか。
たとえば、 くいちがいで言うとパリのグランプロジェのひとつ、 大蔵省の建物がセーヌ川に突き出ています。 今の日本では河川は公共空間なので、 そこに突き出てくるような建物は建てられませんが、 21世紀には、 そんなにはっきり分ける考え方はやめたほうが良いと思います。 色々なかたちがあり得ていいし、 逆に水辺が入り込んでもいいと思います。
確かに洪水の問題などが出てきますが、 それを考えるのが21世紀の知恵じゃないでしょうか。 先ほどの大東市のような水路をたくさんつくるのが21世紀の知恵なのか。 そうではなくて、 江戸時代あれだけ楽しそうにやっていた水辺空間を取り戻し、 同時に水難、 水害事故をいかに防ぐかに知恵を出すことが求められているのです。 21世紀はまさにそのような世紀であってほしいというのが私の願いです。