松波(都市環境研究所):
先ほどベネチアのスライドを見たとき、 気になることがありました。 大きな水路に水上バスが通っているのは分かりますが、 細い水路における公共交通はどんな仕組みになっているのでしょうか。
金澤:
カナル・グランデ以外の大きい水路、 例えば駅から伸びている準幹線水路は必ず水上バスのネットワークでつながれています。 それ以外は物流関係で使われるのが主で、 小さいボートが行き来しています。
また、 個人でボートを持っている人もいて、 20年以上も前ですが、 ゴンドラが150万円ほどでつくられると言っていました。 だいたい車の値段と一緒です。 私も友人の舟で周辺の島々へ出かけたことがあります。 個人で舟を持つ人はそんなに多くはないのですが、 ベネチア人の誇りはやはり舟を持つことのようです。
舟一艘はいるのがやっとの狭い水路でも、 ボートを飛ばして行き来しています。 そういうのを見ていると、 やはりベネチアは水と共に生きている都市だと思います。
昔は屎尿や排水もこの水路に流れ込み、 今でもとても臭いのですが、 昔は海の干満に合わせて海水と混じりながら処理していくというやり方で、 エコロジーの観点からもうまくできた都市でした。
ベネチアのお祭りでは、 リドの沖合いで市長さんが海に指輪を投げて「ベネチアと海は結婚する」と高らかに宣言する場面が見られ、 それがこの都市の有り様をもっとも象徴していると思いました。
それに比べ、 近代の日本の水辺開発を見ていると、 「結婚」と言うよりは陸側の論理だけで水辺を強奪してきたと思えます。 水の生態系やそのあり方、 それと共に暮らしてきた文化を尊重して水辺をつくっていく、 そんな視点がなぜ我々専門家からも出てこなかったのか。 21世紀になってそれまでの価値観が大幅に変わっていきそうな気がしますが、 都市計画理論や都市デザインはまだ古い発想のままだという思いがあります。
水を通した環境の見方を我々はもう一度考え直して、 デザインの仕組みを再構築していくべきだというのが、 私が以前から主張していることです。 これが、 今日私が一番言いたかったことです。
田中(アルパック):
ボートに関連したことをうかがいます。 ボートを車になぞらえて聞いていましたが、 車の駐車場と同じように舟の係留問題もまちの中にあるのでしょうか。
金澤:
私の友達の場合、 舟を係留する場所はちゃんと持っていました。 商売でどうしても舟が必要な人で、 水路に係留している人は何人かあるようです。 回りに小さい島がいっぱいありますから、 そこに個人の舟を係留していると聞いたこともありますが、 詳しくは知りません。
ベネチアの水上交通について
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