緑としての建築
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都市と緑の関係

 

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16世紀のパレルモ鳥瞰図(『図説 都市の世界史2 中世』相模書房)
 第1の類型の典型的な都市で、 イタリアのパレルモの16世紀の鳥瞰図です。 城壁に囲まれたコンパクトな都市で、 しかも中は密度の高い市街地が形成されています。 城壁の外側にはずっと田園が広がっています。 城壁がありますから都市が容易にはスプロールしていきませんし、 都市域と田園がきっちりと分節されています。 その関係が崩れてしまうと、 都市自体がその都市機能を失ってしまうという構造になっています。

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花洛一覧図(黄華山 19世紀初頭 出典:別冊『太陽』86号)
 これは江戸時代後期の京都を描いた黄華山の絵です。 五条通から三条通、 御所、 東西の本願寺、 二条城、 六角堂などの名所が描かれ、 その都市域を囲んだ御土居の竹藪も見えます。

 京都もそうですが、 アジアの都市は都市のバウンダリー(境界)が不明確です。 そして、 都市域の中のいろんな土地利用とからんで緑が入っているのが特徴です。 この絵自体には町家の緑は描かれていませんが、 寺社の豊富な緑や御土居の中の田んぼが描かれたりと、 都市域の中に田園的な要素が入り込んでいる様子が描かれています。

 これが第2の類型の特徴です。

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千里 青山台(石原正)(出典:『千里絵図』バーズアイ)
 これが近代的な都市計画の考え方で生まれた街の典型で、 第3の類型です。 公的なオープンスペースや集合住宅の中の共用のオープンスペースによって、 都市域の環境を担保していこうというのが基本的な考え方です。 ただし、 先ほど述べたように現行の公園・緑地システムはその存在だけで都市の環境を担保できるものにはなっていません。

 「多分、 周辺の敷地も環境の質を担保するだろう」という前提でその量や質が決まっているので、 周辺の土地が細分化されたり高密度化してくると、 街全体の環境を保つのは難しくなっていきます。 あるいは集合住宅のオープンスペースにしても、 駐車場が増えると面積は変わらなくてもその質は破壊されてしまいます。

 ですから、 個々の土地利用の運動を無視して都市全体の環境を語ることは出来ないのではないか、 と私は思うのです。

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京都・御池通り(写真:N. Nakamura)
 中村さんが撮った御池通りです。 真ん中に見える空地が、 後で説明する江川さんが設計されるアーバネックス中京の敷地です。

 現実の京都の街は、 このように建物が高層化しつつあります。 どうすればこの環境を良くしていけるのかを考えていく必要があるでしょう。 そのためには、 個々の土地利用から考えていくことも必要でしょうし、 都市基盤構造や都市のコンパクト化の視点から考えていくことも求められます。

 これだけのボリュームの建物がすでに出来上がっている都市の環境をどう考えていくかは、 とても大きな問題です。

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