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「Full Green Jaket」2000 (Uenodesign)
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去年のセミナーでは今お話したような問題を踏まえながら、 個々の土地利用の中で環境を内化していく建築や土木構造物の形態として、 どのようなあり方が考えられるかをお話ししました。 この写真はその中の一つの例です。
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「Hill Housing」2000 (Uenodesign)
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これも昨年のセミナーの時に出したもので、 環境を内化する建物の可能性の一例です。 こういう形で建物を建てることが緑を作ることになるというあり方が考えられないかを提示しました。 その考え方を整理したのが、 これから紹介する「緑としての建築」という概念です。
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緑の「外皮」と都市環境(Uenodesign)
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この「緑としての建築」の狙いは、 都市における物理的環境の改善、 あるいは生態的環境の改善、 さらには緑を通じての人と人の社会的なつながりを考えることです。 一方ここにあげた「裸の建築」は、 専ら物理的な問題だけを解決しようとしたものといえます。
改めて説明することもないのですが、 通常我々が目にしているのは「裸の建築」であり、 特に夏の受熱が大きな環境負担になっています。 それがヒートアイランド現象の一つの原因になっていると考えられます。
つまり、 コンクリートのような蓄熱する材料を直接日光で暖めてしまったり、 それによる室内の熱負担が大きくなってしまうことに対して空調を使うと、 それによる外への放熱が増えてしまいより熱負荷が大きくなる、 その結果発電量が大きくなりCO2
の排出量が増えるといった悪循環に陥ります。 今の我々の都市環境がまさにそういう状態です。
ですから、 そのような「裸の建築」をなるべく緑の外皮で包んでしまうことで、 建物自体は日陰に入るようにすればどうかと考えました。 無論植物自体は加熱してしまいますが、 蒸散作用で気化熱を奪いますので全体の熱収支が良くなるはずです。 それによって室内への負荷や空調負荷も減っていき、 全体の発電量も減っていくだろうと考えています。 また、 道路への照り返しも少なくなるだろうと思います。
もちろん、 これだけでヒートアイランド現象が全て解決されるわけではありませんが、 少なくとも軽減させる、 エネルギー負荷を少なくさせることは可能になるだろうと考えています。 さらには、 ここで使われる緑が都市の生態的バランスを回復させることも期待できます。
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緑の「外皮」 bio clading (Uenodesign)
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これは今回のスタディとは別に、 あるハウスメーカーに依頼されて出したプロポーザル案です。 今の建築に対し、 緑の「外皮」のあり方の可能性を示したものです。
一番簡単なのは、 建物にメッシュを取り付けて緑をはわせるか、 途中にプランターを置いてそこから緑をはわせるなどして、 建物全体を緑で覆っていくというやり方です。
さらには、 切り芝のようなものを何らかのメッシュで挟む形にしてパネル状にしてそれを建物の覆いにするなど、 いろんな考え方があります。 いずれも建物を「ダブルスキン」にして、 外側のスキンは受熱した場合に蒸散作用で環境への負荷を少なくするという生物的要素をもった建築形態です。 これも緑としての建築の一つの考え方です。 私は建築の目的の一つとして、 緑を都市の中に回復していくことを考えており、 そのために必要な構造を考えてみたわけです。
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システム図1 (Uenodesign)
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これもその考え方の基本を示した一例です。 ここではガラス壁面の前にブリーズ・ソレイユ(日除け)を作って、 それがプランターの機能を持っています。 壁が直接受熱することはなく、 プランターの陰になることで日光の直接の影響を受けなくなります。 屋上も緑化することで、 断熱できるように考えています。 また導入された植物が、 都市全体の生態的な環境に寄与していくことも期待できます。 こういうことも原理的には可能ではないでしょうか。
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システム図2 (Uenodesign)
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システム図1は喬木を使っての緑化ですが、 システム図2はメッシュと蔓性植物を使ってより簡易に緑化する例です。 屋上にパーゴラを作って、 屋上への直射日光を避けるようにしました。 開口部についてもダブルスキンにしています。 外側のスキンに植物を這わせることで、 建築本体への直接の受熱を防いでいます。
ところで、 システム図1、 2の建物はいずれも階段状になっています。 これはそれぞれの植物に直接雨が降ってくるようにしたものです。 このように建物全体をセットバックさせるような作り方が緑としての建築には有効です。 ただ、 これらはいずれも基本的な考え方を示しただけですから、 実際にはいろんな形が出てくることが予想されます。
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原宿・同潤会(Y. Ueno)
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建物が緑の外皮で覆われるようになると、 それが社会における一つの環境ストックとして考えられないかという視点が出てきます。 これはそうしたストックの好例で、 原宿にある元・同潤会アパートです。 もともと集合住宅として建てられたのですが、 今はほとんどが店舗として使われています。 つまり、 建物の姿は変わっていないのですが、 中の機能はどんどん更新されているのです。
この緑に覆われたたたずまいが社会的なストックとして評価されて、 その中でいろいろな使い方をしてみようという流れになったのでしょう。 つまり、 このたたずまいが建物のスケルトンになり、 その中にいろいろな建築機能がインフィルされていると見ていいのではないでしょうか。 ここでは緑としての建築が環境ストックの働きをしていると、 私は思っています。
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NEXT 21 (Y. Ueno)
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同潤会では緑が建物の外皮になっていましたが、 NEXT 21では緑が廊下などの共用部分を覆っています。 共用部分を緑化していくことで、 建物全体を一つの緑のストックにしようとしたものです。 こういう考え方も、 緑としての建築として考えられます。
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緑の外皮を持つ建築/チリ・サンチャゴのオフィスビル(設計:E. Browne & B. Huidobro/出典『New Tec Garden』Michell Beazoey)
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南米チリのサンチャゴにあるオフィスビルです。 出版物に掲載されていた写真です。
先ほど話したシステム図に近いやり方で、 ガラス壁面の前にメッシュを組んで蔓性の植物を上に立ち上げています。 よく見ると、 それぞれの階がセットバックしてプランターに直接雨がかかるようになっています。 このような形態が、 壁を緑にしていく基本的なあり方だと思います。
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緑としての京都駅モンタージュ(Uenodesign)
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緑としての建築を説明するために作った京都駅のモンタージュです。 京都駅にダブルスキンをかぶせ、 それを緑にしていくことによってある種のインパクトを作り出しています。 ただこれは議論のために作ったモンタージュであって、 必ずしもこうすべきだと言っているわけではありません。 むしろ、 こんな建物をどう思うか、 どう考えるかを議論していただきたいと思います。
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