緑としての建築
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「緑としての建築」への提言

小浦久子

 

建てないことをデザインする

 基本的な考え方はプレセッションのホームページに書いていますので、 それを見ていただければよいかと思います。

 緑はやはり土があって、 空地・空間があるということを確保するものです。 むしろ緑側からものを建てないということを、 きちんとデザインするということ、 建築ではないオープンスペースとか空地をきちんとデザインする、 まちの中の構造としてデザインするという事を提案してほしかったと感じています。

 これから人口も減っていくし、 先ほどのコンパクト化するという話や、 都市の構造を整理していく、 再編していくということが必要になってくる中で、 モノを建てるということよりもモノを建てないということ、 あるいは建てない所や建物と建物の間の空間の構造をどのようにデザインしていくかが、 非常に大事になってくると思います。

 その時に緑サイドは建てる側に荷担するのではなく、 建てない側に荷担してほしいのです。 もう少しオープンスペースの意味や都市の中に空地を持つ意味をきちんと主張していってほしいというのが一番感じたことです。


相互関係の中の空地と建物

マンション建設ラッシュの中で
 京都に関しては調査がきっかけで関わりができていますが、 マンションの高さ問題やまちなかの容積の問題が言われています。 京都のまちなかで今の状況であれば、 最初に江川さんが見せられたようなマンションがいっぱい建つわけです。 それが隣同士に建っていったら住環境としては非常に厳しいものになります。 ただ建たないだろうという想定の元に、 周りの環境を搾取することで成立するマンションが建ち並び始めています。

 それは何も京都だけの問題ではないんです。 特に分譲マンションは、 どこの都市でも同じだと思いますが、 殆どが土地の利用効率とか商業的な経済効率のみで最大限のものをつくって売り逃げしていくという状況です。 それを買った人たちが住むというなかで、 どのように地域とつきあっていくかを考えて行かねばならないのですが、 考える材料もない。 そういった中で、 今日のような議論は、 住み続けていくための手がかりをつくるという意味で、 緑や空間、 そして周りとの関わりを見せていくことが、 非常に大事な事だと思います。

環境構造をどう共有化するか
 このマンションの問題については、 環境改善型以外の開発マンションはしばらく設計停止にしたい気分です。 今、 私たち自身が、 地域そのものがこれまで持ち続けてきた、 今後も持っていきたいという地域の空間構造、 環境構造を、 きちんとデザインとして提示し、 共有化するための時間が少し欲しいと思います。

 マンションは、 それをしなければならないということを考えさせるきっかけにはなっていると思うんです。 しかしまちのイメージをつくろうと言っている間に、 どんどん変わっていってしまって、 気がついたら、 まちづくりの意味もなくなっているかもしれない。 もうそんなに住戸も要らないというのに。

 以上二点、 緑からは建てないということをどうデザインするか、 そういう環境構造の捉え方を持ってほしい。 それから住むことのなかで、 相互関係の中の空地と建物、 その中で緑がどういう手がかりを与えていくか、 そういうデザインを考えていきたい。

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