緑としての建築
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追記 − 集合住宅と都市の遺伝子治療

 

 集合住宅が「町家の智恵」に学ぶ点は、 通りや町との関係を「閉ざす」と「開く」のバランスで回復し、 居住と生業と美的趣味(市中の山居)をコンパクトにまとめ、 光や風、 草花や鳥などの自然(花鳥風月)をしなやかに室内に取り込む工夫である。

 かなり高度な課題であるが、 “緑としての建築”が一つの解となるであろう。

 また、 町家が道(通り庭)を内包しているように、 “緑としての建築”が緑へのアプローチを外部に開き、 新たな交流の場を提供することも考えられる。 (例えば、 「アクロス福岡」の空中庭園は、 隣接する公園と隣接し一体的なオープンスペースを形成している)

 京都盆地の「水と緑の構造」は、 三方を山の緑で囲まれ(三山)、 鴨川、 桂川が南北に流れ、 疎水の水が縦横に走り、 御所と二条城の大きな緑のかたまりとしてあり、 小さな丘陵や寺社や公園の緑が点在するという構造である。

 (御池通のケヤキ並木は航空写真で見ても分かるくらいのボリュームを持っていたが、 残念ながら道路改修のために撤去されてしまった)。

 これらの緑のスケルトン(永続的で基幹的な構造)の隙間を“緑としての建築”がインフィルとなって満たしていく、 このような都市構造レベルでの役割も忘れてはならない。

 また、 遠方から持ち込まれる「造園木」は遺伝子レベルの撹乱を招くと言われるが、 身近にある三山の緑(郷土の自生種)を都市の中に広める発想も必要である。

 香川県で行われている「どんぐり銀行」のような試みは、 都市住民と山の緑を楽しく結びつける参加型システムの良い例である。

 大小さまざまの「緑の島」づたいに自然は都市の中に帰ってくる。 失われたウグイスのさえずりも戻ってくるであろう。

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