犯罪防止に都市環境デザインはどう貢献できるか
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1. 安全と安心

 

正木

 正木でございます。 私が「安全・安心」あるいは「防犯まちづくり」に関わり始めて、 まだ4年ほどです。 その間、 少しは防犯の勉強をしましたので、 今日はその関わった最初の所からお話させていただきます。


安全・安心まちづくり女性フォーラムの活動

 平成9〜11年度の3ヵ年にわたって「安全・安心まちづくり女性フォーラム」が組織され、 全国23地域で様々な活動を展開しました。

 まず平成9年度に東京で開かれたイベントで、 「安全・安心を考えて行動していこう」という「東京宣言」を行い、 平成10年度からは全国23ヵ所に展開した活動が始まりました。 関西では阪神地域や姫路市で活動しました。

 「安全・安心」と一言で言っても、 防犯や防災に関するものから環境的なもの、 福祉の安全性もあるというように広い範囲に渡りますので、 各地域でそれぞれ異なる課題をもって今も活動を続けています。

 平成11年度には全国レベルのフォローアップイベントを行ない、 全国的なイベントは終了し、 現在はそれぞれの地域で引き続き安全・安心の活動を続けています。

 これらの活動の中で、 平成9年に「安全・安心まちづくりプランニングノート」というものをつくりました。

 その中に「“安全・安心なまち”とはどんなイメージですか」というアンケート結果を載せていますが、

など様々なまちのイメージがあるという結果でした。

 この「みんなで育てるまち」は、 「まちづくり」という言葉の中にある「つくる」という時期は既に終わっているから、 私達は「つくる」という言葉は使わずに、 一緒にまちを「育てる」という意識「まち育て」に取り組みましょうというところから、 使ったものです。

 また、 ちょうどこの頃、 阪神・淡路大震災、 地下鉄サリン事件、 神戸市児童殺傷事件などが続いていた事もあり、 安心して暮せるまちをつくるために様々な側面から安全・安心を考えていたのですが、 なかでも「防災」と合わせて毎日起こりうる犯罪への「防犯」を日常的な視点から考えて行かなければならないという議論から、 先ほどの「防犯まちづくり」にとりかかったわけです。


安全は周辺状況、 安心は人の心

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崩壊する安全と安心のバランス
 図は日本女子大学の清永賢二先生が春日井市安全なまちづくり協議会出版物に描かれたものです。

 ここでは日本とアメリカを例にとり、 日本は「安全で安心」、 アメリカは「安全でなく安心でない」と両極端に描かれています。 しかし最近では日本もかなりアメリカに近づいてきていると思います。

 「安全」と「安心」が必要十分条件ではないという事は、 阪神・淡路大震災でも立証されました。

 例えば、 被災者に仮設住宅を出たあと「安全」な構造で建てらた公営住宅等に住んでもらったときに、 コミュニティが十分育っていないため、 「安心」して住めないという話が出てきました。

 また、 それまで「安心」して住んでいたコミュニティが豊かな地域は、 一方で密集市街地であり、 今回の震災においてはハード的には「安全」ではありませんでした。

 「安全」と「安心」の両方を満たすためには、 それなりの努力を要します。 そしてどちらか一方が緩むと、 両方が悪化していきます。

 一度悪化させた状況を元に戻すには大きなエネルギーが必要です。 だからこそ「安全」と「安心」とをしっかりと考え、 努力を重ねなければならないのです。

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