質疑応答
|
さて、 今日は特別に3人のゲストをお迎えしております。
今回、 このテーマでセミナーをやることになったとき、 私は今の子供たちは何を考えているのかがとても気になりました。 私の故郷は青森県なのですが、 ある時帰郷して新聞を読んでいると、 「中学生のアル中が増えている」と出ていてぎょっとしたことがあります。 僕らも中学生の頃こっそり酒を飲んだことがありますが、 アル中になるほど飲んだという話は聞いたことがありません。 アル中になるということは、 日頃から飲んでいるということです。 田舎は子供たちが健全に育つというイメージがあるのですが、 どうもそれは現実ではなくなっているようです。
20年前には学校で窓ガラスがしょっちゅう割られるようなことが相次ぎ「荒れる中学校」がクローズアップされましたが、 最近の子供たちの有り様はそのころと違ってきているように思われます。
また、 違う例を紹介しますと、 関西の郊外住宅地で三田というところがあります。 ここにショッピングセンターが出来ると、 神戸の北区やらいろんな地域の子供たちがやってきて、 町の補導の方々が困っているという話も聞きました。 本来は地元の人たちがやってきて楽しむための場所なのに、 なぜか結構広い地域から若者がやってきて、 彼らの遊び場所になってしまったのです。 地元の防犯協会の人はとても悩んでいます。
もちろんすべての若者が悪いことをしているわけではないのですが、 私としては若い人の意見を聞いてみたいと思い、 いろんな人に声をかけてみたら、 アルパックの堀口さんが今日若者たちを連れてきてくれました。 3人の高校生です。 堀口さん、 3人を紹介してください。
堀口浩司:
先日鳴海先生とお話しているうちに、 こういう運びとなりました。 実は私自身も郊外住宅地に住んでおり、 今の中高生の親ではありますが、 日常はあんまりコンタクトがないんです。 ですから、 子供たちが今の都市環境に対して何を考えているのかは私も関心があり、 家に帰って「こういう集まりに出ないか」と娘に持ちかけました。 きっとおこづかいにつられたんでしょうが、 娘とその友達がきてくれることになりました。
じゃあ、 それぞれ自己紹介してもらえますか。
白井:
豊中市に住んでいる白井大貴です。 大阪学院大学高等学校へ通っています。
堀口:
箕面市に住んでる堀口朋葉です。 大阪府立箕面高等学校に通っています。
松本:
豊中市に住んでる松本恵です。 同じく箕面高等学校に通っています。
まず最初に、 先ほどまでの話を聞いて、 何か感じたことがあれば話していただけますか。
堀口:
ひったくりのこととかは考えたことがなかったんですけど、 みなさんが考えながら仕事されていることが分かりました。
松本:
暗いところで犯罪が起きることに、 照明が関わっているなど考えたことがなかったので、 今日はいろんなことが分かりました。
白井:
僕の住んでいる地域にも街灯が暗いところがあるので、 気をつけないといけないと思いました。
鳴海:
最近は中学生の犯罪が急増しているのですが、 そういうことをする子供たちの気分は分かりますか?
堀口:
たぶん1回やってしまったら2回目からは慣れてしまうんだと思うんです。 だから、 2回目からは照明があろうとなかろうと気にしないんじゃないでしょうか。
白井:
たぶん好奇心でやってしまうんだと思います。
松本:
私も堀口さんと同じ意見です。 1回目の壁を越えたら、 2回目は平気になってしまうと思います。
前田:
僕らが中高生の頃も、 必ず「悪さ」はしていました、 万引きとか。 度胸試しみたいな感じで一度はやったことのある人も多いと思います。 しかし、 一度やってしまえば後はやり放題というのとはちょっと違うと思うんですが。
私の住んでいる郊外の住宅地は、 夜になると家の周りがけっこう暗いところになるんです。 自分が歩いていても怖いなと思うのですが、 塾から帰ってくる子供たちは怖いという感覚はあるのでしょうか。
家の近所で怖いと思うところは避けるのか、 それともあまり気にせずどこでも行ってしまうのか、 その辺を教えてください。
松本:
細くて暗い道は怖いです。 家と駐車場の間にある道です。
堀口:
怖いところはとにかく自転車を速くこいで家に帰るようにしています。 怖いと思う道はやはり電気がついてない道。 それに車が入れないような狭い道も怖いです。
白井:
夜、 人通りが少なくなった道とか、 街灯があまりない道は怖いと思います。
みなさんやみなさんの知り合いがやっているかどうかは別として、 今の学校ではひったくりや万引きを悪いことだと思う雰囲気がないんじゃないかと思うのですが、 それはどうですか。
白井:
友達で万引きをやっている人もいるから、 そんなに悪い犯罪だとは思ってないです。 ひったくりをやっているというのは周りで聞いたことはないですけど。
堀口:
ひったくりは盗られた人が困ります。 万引きはされても店が大損害というわけじゃないと思うので、 やる人はそんなに大した犯罪とは思っていないと思います。 身近な人がやってると、 「あの人がやってるんなら、 たいしたことないわ」という気分でどんどん増えているように思います。
松本:
万引きが大犯罪だというイメージはないけれど、 私はやろうと思いません。
ここで、 2001年11月の中頃、 大阪府警が行ったアンケート調査結果を参考までに紹介します。 これはひったくり容疑者100人にアンケート(16問)したもので、 年齢は少年から76歳まで、 男性94人・女性6人です。
それによると、 犯行動機は7割までが「遊ぶ金が欲しい」と答えています。 なぜひったくりという手段を選んだかについては「簡単にできるから」と答えた人が大半です。 どういう人をターゲットにしたかは「一人歩きをしている」「自転車の前かごに荷物を入れている人」がもっとも狙いやすいと答えています。 ひったくりの方法をどうやって覚えたかという質問で、 「友人や先輩から聞いた」という答えが54%、 「新聞・テレビの報道で自分もやれると思った」が33%となっています。
私の専門である夜間街路の明るさについては、 「関係ない」が45%、 「薄暗いからやった」が38%、 「明るくてもやった」が12%、 「真っ暗だからやった」が4%という結果になっています。
まさか照明のことを気にしながらひったくりをやっているわけではないでしょうが、 結果的には「薄暗いからやった」が38%になっていて、 犯罪対策は容疑者に聞いてみることも大切だと改めて思いました。
私には高校1年の弟がいて、 6つ離れているだけなのに何を考えているのか分からないと思うことがあります。 弟の話を聞いていると、 イヤな感じの性格の悪い友達のことでも「ま、 俺のことじゃないから関係ない」という態度なんですね。 みなさんの話を聞いていても弟と同じで、 万引きをしている友達のことをそんなに深く考えてないように思えるのです。
万引きをしている人のことも「悪いことだからやめろ」と言うんじゃなく、 たぶん「あいつのやっていることは僕には関係ない。 どうでもいい」と思ってるんじゃないでしょうか。 もっと他に考えるべき大事なことがあるんでしょうが、 こんな風に犯罪が多発して、 世の中がどんどん監視型になってくると、 今万引きをしている人はやめようという気になるものなんでしょうか。 例えば「あいつ、 警察につかまった、 もうやめよう」という風に。 それとも「あいつはドジなだけ。 おれは大丈夫」という風に考えるんでしょうか。
松本:
「あいつはあいつ」と思います。
堀口:
友達がつかまっても、 自分はどうにかなる。 もし自分がつかまることになってもどうにかなると思っていると思いますよ。 だからやっぱり「あいつはあいつ」という感じですかね。
白井:
「人は人で自分は自分で関係ない」のだから、 「あいつはあいつ」になると思います。
みなさんもコンビニの前で集まって遊んだりするんでしょうか。 ウチの近所のコンビニは暴走族の出撃基地になっていて、 バイクの音が轟音と振動となって我が家に響いてくるんです。 集まって遊んでいる分には犯罪でも何でもないのですが、 コンビニの前でたむろしているのを見るたびに、 ああこいつらが犯人なんだよなと腹立たしく見ています。
みなさんもコンビニの前でたむろしているのですか。 どういうところで遊んでいるのか教えてください。
白井:
大体、 コンビニで何か買ってきて地元の公園とかで食べて遊んだりしています。
前田Y:
公園でカップ麺を食べるんですよね。 夏場だったら花火をしたりするんですか。
白井:
はい。
前田Y:
そのとき、 周辺の家に「今から花火をして遊びます。 ちょっとうるさいけどすいません」と回ったりしていますか。
白井:
いいえ。
前田Y:
自分のしている行為は迷惑行為だと思います?
白井:
……。 そう言われたら迷惑だと思います。
松本:
コンビニに行くのはわざわざ集まりに行くのじゃなくて、 行くと誰かがいてちょっとしゃべるという感じです。 それがひょっとしたら「たまっている」という風に見えるのかもしれません。 でも、 ウチラの中には「しゃべっているだけ」という感覚しかないのですが。
堀口:
帰り道に「遊ぼうか」ということになると、 ファミレスとか行ってしゃべるぐらいです。 コンビニは、 買い物に行って誰か知り合いがいるとしゃべるぐらいです。
おもしろい企画で、 楽しみながら聞いていましたが、 今のやりとりで十代には都市に居場所がないなあと考えてしまいました。
小学生までの子供にならプレイロットや幼稚園をどこに配置するかを考えますし、 二十歳以上の世代なら都市計画のどこかに組み込んでいけるのですが、 どういうわけかティーンエイジャーは昔から都市計画にのらない世代なんです。 日本に限らずどこの国の都市計画でも十代の居場所がないんです。
公園でたむろしてても変だし、 コンビニにいてても変ですよね。 まあ、 僕の友人に言わせると「そりゃ当たり前だよ。 ティーンエイジャーのことまで面倒を見出したら、 その国は滅びてしまうよ」ということなんですが、 あなた方が都市計画に「自分たちがしっくりする場所」をリクエストするとしたらどういうところなんでしょうか。
要するに、 自分たちの居場所がないから、 あなた方は攻められているんだと思うんですけどねえ。
3人:
………
堀口:
あんまり自分らが居場所がないという自覚がないので、 質問に答えられません。
鳴海:
いろいろ難しい質問をしてすみませんでした。 今日はどうもありがとうございました。
高校生をゲストに迎えて
鳴海:
犯罪をする中学生の気分について
鳴海:
家の近所の怖いところ
堀口(浩):
ひったくりや万引きはどのくらい悪いか
山崎:
ひったくり容疑者のアンケート結果
須谷:
今の中高生は友達感覚
会場の女子大生:
近隣の怒り
前田Y:
十代の居場所がないのでは
丸茂:
(注:ティーンエイジャーというのはもはや死語である。 このとき意味が理解されていなかった。 )
このページへのご意見はJUDIへ
(C) by 都市環境デザイン会議関西ブロック JUDI Kansai
学芸出版社ホームページへ