葛藤の都市環境デザイン
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リアリティを持てる都市

 

 さて今回のセミナーに先立って、 セミナーのスタッフから「何に確信を持ってデザインをやっているのですか。 その確信をもってやっていることに対して葛藤していることは何ですか」という問いを受けました。

 最近、 ランドスケープ・デザイナーで集まる機会がありまして、 この問いに近い議論をしたことがあったので、 少しまとめてみました。

 今日、 都市環境を語る上では「都市再生」ということを意識せざるをえないところがあります。 それではなぜ「都市再生」が必要とされ、 語られるのかというと、 政治経済における構造改革など色々な話がありますが、 本質的にどういう事なのかと考えると、 住んでいる環境に良い意味でのリアリティを持てない。 つまり現在の都市に対して「確信」あるいは「自信」を持てていないからなのだろうと思うのです。

 例えば、 仕事で商店街に行くときがあっても、 商店街の人達が自分たちの商店街が見すぼらしいとか汚いとか、 こちらは、 良い素質を持っていて可能性を感じるのにも関わらずそうことを言うのです。 自信を持てないとなかなか一歩前に進めないものです。

 大きな意味で、 自信が持てない原因の一つに、 「地球環境」があります。 実際、 見ることはできないのですが、 いろいろな場面で意識せざるを得ないことになってしまっている現在の状況下にあって、 今、 住んでいる都市がそのまま地球全体に広がるというイメージを持てないということがあると思います。

 つまり、 現在の都市が「地球環境」にとって良くないものであって、 あくまでもイメージなのですが、 このまま拡大していくと、 ひどいことになるというような意識をもたざるを得ないことが、 都市に対して自信が持てない一つの理由だと考えます。

 もう一つの原因は、 人々が、 住んでるまちを自分が作ったものだと思えないということが挙げられます。

 行政が作ったまちを使わされているという風にしか感じることができないのであれば、 まちへの愛着や地域らしさも醸成していくことはできません。

 これら二つが自信の持てない大きな理由だろうと思われるのです。

 したがって、 生き物としての人にとって必要な都市における生態系を考慮した環境づくりと、 様々な住民の多様な価値観を活かしながらまちづくりをしていく、 あるいはデザインしていくことが、 ランドスケープ・アーキテクトとして、 都市環境デザインに関わるものとして大切なことだと考えております。

 計画の際に決定の方法論が問題になったり、 まちづくりの中でソフト重視が叫ばれたり、 生態系においても科学や技術的側面の話が出たりするのですが、 そういったことを同時に展開していくということは、 結局のところ我々がどういう生活をしたいのかということを意志決定するということです。 それは意図を持って住む。 すなわち、 広義の意味でわれわれの生活をデザインするということであると思います。

 その意図は、 必ず空間デザインとして立ち現れてきます。 その空間が、 人と語り合う時間を共有できる場所になることが、 住んでいるまちを自分たちが作ってきたと思えたり、 自信の持てる豊かな場所と感じることができるきっかけであると考えます。 それが誇りに繋がり、 それによって都市を再生、 復権できる可能性があるのではないかと思っています。

 以上を前提としてでてきた都市環境と関わる際のキーワードが、 「意志決定」「自然環境」そして「連続性」の3つです。 思い悩みながら葛藤しているまちの事例を、 一つ一つは小さい試みであり断片的でもありますが、 紹介していきたいと思います。

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