一つ目は神戸の大日六丁目商店街です。 これは、 商店街地区活性化のプロポーザルコンペで最優秀をいただいたことから始まり、 いろんな職能が集まって提案をしたものです。 意志決定への試み。 そして葛藤
さて、 我々が空間のデザインをするということは、 まずはじめに空間の可能性を提示することだと思っています。 完成形の絵を描いて提案することけでなく、 例えば、 原っぱのデザインを頼まれたときに、 極端に言えば、 ここは、 原っぱのままでいいんだという提案をして、 そこでの原っぱの可能性を見つけ出すことも空間デザインといえるのです。 その可能性が、 共有できたときに空間は、 まだ、 できていないうちから「場所」として立ち現れることになり、 将来、 実際に形づくられる共有の「場所」へとつながる発端になるのです。
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ここで、 最初に商店街に入ったときは、 震災の影響もあり、 ビルが潰れて再建の目途が立たない空き地があちこちに残っていました。 商店街の人達は、 この空き地を隠して見せないようにしようとしていたのですが、 逆に可能性がある場所として、 まちの人々に見せ始めたらどうかと提案しました。 商店街が縦に長く繋がっているのに対して、 横方向にたまりの空間がとれることになるのです。 ここをどのような場所にできるのかを住民が参加して掃除をすることから可能性を探り始めたのです。 ところで、 最近、 よく「住民参加」と言われますが、 ワークショップで公園のデザインを実際に考えるものがあります。 これも住民参加の一つですが、 やはりデザインは、 そのプロフェッションが答えを出すべきものだと思います。 最後にできたものがプロセスを共有しているから、 そこそこのものでも満足するというのでは、 「住民参加」の可能性を逆に小さくすると考えています。 そこで、 この空き地をデザインするために、 みんなで空間の可能性を語り合い、 実感するための様々なイベントを行いながら将来の広場像を模索し、 デザインに繁栄することを試みたのです。
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我々が以前ボランティアで市民参加のまちづくりに関わったときに知り合った丹波の人達に声をかけて朝市をやったり、 商店街の人とものをテーマとした写真展を催したり、 「風船アート」と称して、 子供達がランダムに風船を並べていくことで空間感覚を得るというイベント等も開催しました。 空き地が市場や、 ときにはギャラリーの場にもなることを実感することで、 その他の空間の可能性を探る議論が活発になったことを記憶しています。
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これは毎年恒例になりつつある「鎮魂火」という阪神大震災メモリアルイベントです。 来年も4回目があるので、 興味ある方は是非参加して一緒にこのコップを並べていただければと思います。 このイベントによって、 儲けだけを考えているのではない、 地域に根ざす商店街へと変わろうとしている意思表明ができたと商店街の人々が言ってました。 震災の時にここで亡くなった方もおられましたので、 ここが自分達の力で祈りの場になるということも実感できたのです。 このように空き地ひとつとっても、 関わり方によって様々な空間の可能性があるということが共有できたのです。 その上で、 空き地に対する意見をできるだけ出してもらって、 その可能性を最終的には空間デザインとして我々が提供したのです。 このような展開のプロセスを踏むことができれば、 出来上がった場所を皆で共有することにつながると考えています。
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二年前にもお話ししましたが、 こういう広場ができました。 桜の木などを植えたいという話をしたところ、 近くの工事現場で桜を切ることになったという情報を住民の方が教えてくれて、 移植を試みて全体としてもかなり安く創ることができました。 この公園も今年でもう3年目です。 元々ここは〈恒久的な〉公園という意識はなく、 住民が管理するということで神戸市の管理地を3年の期限付きで借りたものなのですが、 このまま4年目に入れそうです。 最初はイベントも年間50回くらいしたらどうかという話だったのですが、 今では年に150〜200回くらいのペースでやっています。
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この広場の他に我々が手がけたものとして、 空き店舗対策として商店街の廃品なども利用して創ったコミュニティサロンがあります。 今ではそこに町医者がきて検診したり、 折り紙教室やアートギャラリー等の利用が図られており、 広場と共に、 地域の交流の場になっています。 このように今までにない、 いろんな場所が地域住民の協力をもとに商店街にできつつあるのです。 最初に我々が広場を提案したときは「そんなもん作って儲かるんか!」といった罵声を浴びたこともありました。 それでも他の商店街が没落していく中で、 この商店街だけは、 この場所でイベントし続けていて、 何らかの可能性があると思い始めている人が増えてきていると商店街会長が言っていました。 このような場所を提供することができたことで、 次には、 まちの可能性を発見することにつながれば良いと思っております。 以上が一つ目の葛藤としてあった「意志決定」に関わる試みです。 意志決定の方法については、 行政だけが決めることではないということで、 今そのプロセスが問われています。 その中で、 デザイナーが一義的に「これがええんや」というデザインを出したとしても、 一つのアイデアとしてはそれでいいのですが、 そのことが空間の可能性を共有できることに繋がらなければ意味がないと思っています。
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