古の中のアヴァンギャルディズム
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古民家再生を広めるために

 

 以上、 私が手がけた古民家再生の事例を見ていただきました。

 見てお分かりのように、 古いもの、 伝統的なものをそっくり残していこうという考え方ではありません。 もちろん、 歴史を知っておくことは大事で、 歴史に対する作法や礼儀、 技術を大事にするのは当たり前、 それを否定するのはマズイと思っています。 しかし、 そればっかりにとらわれるのもマズイという気がしています。

 魅力的なものを作っていくことで、 初めて後につながることも出てくるのではないでしょうか。 例えば、 最近は住宅にもエコロジー、 バリアフリー、 リサイクル、 サステイナブルの考え方が流行になっていますが、 私は実はそれらをあんまり考えてなかったにもかかわらず、 今お見せした事例は多分全部当てはまっていると思います。 要は「ひとつの機能や要素だけにとらわれるな」ということです。 バリアフリーだけにこだわっていると、 たいていは手すりだらけの家が出来上がってしまう。 高気密・高断熱ばかりにこだわっていると、 倉庫みたいな家に住むことになります。

 ですから我々は機能性よりも、 家の魅力とは何かに常に比重を置いていますし、 それこそがまちづくりや伝統をつなぐことになると考えています。 極端な言い方をすれば、 20代の女の人が「あら素敵。 私もこんな家に住みたいわ」と思えば、 専門家が走り回らなくても民家や町家は残っていくのです。 そんな方法論を作った方がいいんじゃないかと思います。 バリアフリーやエコロジーにしても、 現代の生活に即して考えるとそこに行き着くのが当たり前でしょう。 一般の人が自然に魅力を感じ、 やってみようという気になる方法論が作れたらいいと思っています。

 最後に我々仲間が何を考えてきたかというと、 地方在住でありながらちゃんとしたレベルのものを作りたい、 少しは胸の張れるものを作りたいという思いだけで仕事をしてきました。 実をいうと、 まちづくり運動もあまり好きじゃありません。 頼まれたものだけに全力を投じ、 少しでも廻りにいい影響を与えられるものを作るのが我々の使命だと思っています。 建築家と呼ばれる人ひとりひとりがそれをやっていけば、 まちづくりにつながっていくのではないでしょうか。 建築家としてはそれしかできないだろうし、 点から考えていきたいと思います。

 また、 今は古民家再生がブームのようになって、 一般の雑誌でもよく取り上げられています。 別に悪いことではないのですが、 再生方法にもいろいろあることを知っていただきたい。 歴史を重んじるやり方もあれば、 我々のようにいろいろ手を加えるものもあっていいと思います。 ただ、 最終的に問われるのは質の問題でしょうし、 質を上げるためには我々作る側の人間が頑張らねばならないだろうと思います。

 なお、 最後に付け加えておくと、 古民家再生には一体いくらぐらいお金がかかるのか。 これは大体、 普通の民家の場合、 新築と同じぐらいと考えていただければいいでしょう。 つぶして新築にするぐらいだったら、 古民家再生にした方が相当いいものができますよ。 大工によっては「そんなことしたら新築の2、 3倍かかってしまう」と言う人もいますが、 それはやりたくないから言っているだけの話です。

 ではこれで私の話を終わります。

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