京都は再生するか〜百年後の水と緑をデザインする
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「緑としての建築」以後

 

さまざまな意見を受けて

上野

 パート2では、 これからの京都の都市環境を考えていくときに、 どういう街区のあり方が良いかを中心に、 一つの問題提起としてお話しをしたいと思います。

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オモテの積極的緑化からオモテの歴史的文脈の重視とウラの積極的緑化へ
 昨年のセミナーでは「緑としての建築」と題して、 建物を積極的に緑で構成していくことを考えました。 建物を建てることによって、 都市の中に緑が増えていくというシステムを考えていけないかという問題提起をしたわけです。 それが左側の絵になります。 しかし、 その建物全体を緑で覆い、 植物がつくりだすクールスポットで建築を包み込む、 というシステムでは通り側のオモテと呼ばれているところにも緑が出てくる。 それについて京都らしい都市景観という視点から色々な批判をいただきました。 京都における緑のあり方は、 オモテに出てくる緑ではないのではないかという意見もありました。

 そこで今年、 街区レベルでこの問題を取り上げるのに先立ち、 右側の図のように考えました。 背割りのほうに積極的に緑が出てきて、 オモテには局部的に出てくるといった緑の構造に転換して考えたわけです。

 昨年のセミナーの後で、 都市環境デザイン会議会員へのアンケートを、 清水さんのほうでまとめていただいたのですが、 その時にも、 オモテとウラの構造の中で緑を考えていくのがいいんじゃないかという意見がありました。 そこで今年は建物全体が緑で覆われていくというものから、 京都の文脈を重視してオモテとウラのあり方を意識的に変えていこうという試みをしてみました。


「明日の京都の住まい」応募作品

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明日の京都の住まい(2001)
 昨年のセミナーの後、 やってきたことのいくつか紹介したいと思います。

 セミナーの後、 京都府の建築士会が募集した「明日の京都の住まい」というコンペに、 コーディネーターの中村さんと私で応募し、 特別賞をいただいた案です。 ここでは典型的な京都の町家に見られる、 間口が狭くて奥行きが大きい敷地を想定しました。 コンペの条件が敷地180mでしたので、 街区の通りから通りまでが約60mですから、 奥行きはその半分の30mとし、 間口は6mという想定でつくっております。 また基本的に低層とし、 住居が三つと店舗が入っているという構成としました。 そしてその屋上、 あるいは場合によっては壁面を緑化していこうと考えました。

 こういう建物が集合していくことによって、 まち全体が緑に覆われていくのではないかというストーリーです。


西新井再開発プロジェクトでの試み

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西新井再開発プロジェクトのコンセプト(2001)
 これは西新井という、 足立区の工場跡地の再開発プロジェクトです。 プロジェクトに先だって、 どういうコンセプトで考えるのかという段階で、 私が提案してきた「緑としての建築」の面的な展開として提案した絵です。 低層の建物と高層の建物の組み合わせで、 低層の部分を積極的に緑化していきながら、 まち全体としての環境をつくっていこうという考え方です。

 これは初期の検討なので、 これから色々形は変わってきています。

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西新井-多孔質な建物と緑の組み合わせ・模型(2002)
 これは同じプロジェクトの、 委員会としての最終のアウトプットです。 このプロジェクトでは委員会の座長を法政大学の陣内秀信先生にやっていただき、 建物はシーラカンスアソシーエイツの小島一浩さんが担当しました。 小島さんの提案は、 全体として穴あきチーズのような多孔質の低層と高を組み合わせた建物で、 それと緑を組み合わせたシステムを考えました。

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西新井・模型(2002)
 多孔質というのは、 ちょっとわかりにくいのですが、 光庭のようなものがあったり中庭があったり、 通り庭のようなものがあったりして、 大小さまざまの穴のあいた低層の建物で、 縦横に光や風が抜けていくような建築となるといったイメージです。

 その多孔質の建築と緑を組み合わせていくことで、 まちをつくっていけないかということを考えているのです。

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