街区システムのイメージ |
大きく通りに面したオモテという部分と、 オモテとの間の背割りになってくるウラの部分、 それから屋上のオクの部分という三つの空間的なカテゴリーを想定し、 それぞれのあり方を考えいこうというものです。
オモテはこれまでの京都の持ってきた町並みという都市的で文化的な文脈を受け継いでいく空間と位置づけました。 それは例えば、 二階とか三階という低い建物で構成されていく町並みのスケールであるとか、 あるいは機能的には職住混在の町並みというようなあり方であるとか、 そういうこれまで京都が持ってきたまちの構造を積極的に受け継いでいく空間として考えたわけです。
それに対してウラは、 これまで例えば路地とか、 あるいは中庭の連続によって形成されていた空間です。 それをここでは積極的に確保し、 緑化していくことによって、 例えば風が通るスリットをつくりだしていくといった事をウラで考えていこうというものです。
それに対してオクは、 例えばヒートアイランドに対する対策など、 まち全体の物理的な都市環境対策に積極的に使っていこうと考えた部分です。
また、 これまでの京都の再生プロジェクトの中では、 共同建替のような共同化が大きな条件として考えられていたのですが、 これからの百年を考えた時に、 おそらく共同建替は部分的なものにとどまって、 ほとんどは個々の敷地の中の自律的な建替になっていくだろう。 だから、 共同建替を前提としない、 個別の建替でこういうものをつくっていくシステムを考えていくことが、 必要になってくると考えています。 (明日の京都のすまいコンペ案参照)
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これはウラのイメージで、 東京の原宿です。 ウラは、 碁盤の目でつくられてきたまちのあり方とは違って、 もう少し自由な違った意味でのヒューマンな形になっていくわけです。 緑も多いし、 建築のあり方もオモテのようなこれまでの文脈に縛られない自由度をもっているということもあるかもしれない。 ということで、 ウラがオモテに対して、 あるコントラストを持っているという街区を考えてみることにしました。
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それに対してオクは、 都市から排除されてしまった自然的な要素を回復していくところ、 あるいは同じく都市から排除されてきた農・園芸のための空間です。 そういったものもオモテ・ウラとは違ったフェーズでつくりだしていくことを考えました。 そういう形でオモテ・ウラ・オクの役割分担と形態を、 仮設してみたわけです。
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これは断面図としてそれをあらわしたものです。 ご覧のようにオモテの道とウラの道がある。 それに対してオクを構成する屋上部分があるということです。 図中ではそれぞれの仕掛けについてコメントしていますが、 先ほどのプレゼンテーションで見ていただいたイメージのようなものだと考えていただいていいと思います。
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これは街区の基本的な成り立ちを別の切り口で書いてみたものです。 オモテに対してウラがあると申しましたが、 ウラは、 先ほどの背割り部分のオープンスペースの連続、 緑と水の連続が大切です。 しかし必ずしも路地として人が通り抜けられなければならないということではありません。 言い換えれば、 これまでの京都の町家がつくりだしてきた、 中庭の連続と言った空間秩序と同じ様なものであって良いのではないかと言うことです。 路地はつながっている場合もあるし、 あるいは行き止まりのものもあるかもしれない。 あるいはU字型に戻ってくるかもしれない。 色々な路地形態がそこに絡んできて、 街区全体をつくりだしていくのだろうと思います。 図で赤く印しているのは、 非住居的な床利用を想定している所ですが、 オモテにあるもの、 ウラにあるものと色々なものが出てきて、 全体として住居だけに純化されていない、 職住混在のまちをつくりだしていくということを表しています。
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これは先ほどの背割りのスリットのあり方です。 気象統計を見ますと、 京都では年間を通じてほとんど北からの風が卓越しているのですが、 ただ、 夏の昼間は大阪湾からあがってくる海風が京都まで入ってきます。 特に風通しについては、 夏をどう快適に過ごすかに大きく関わってきますので、 ここでは夏の夜間の山から吹いてくる風と昼間の大阪湾の方から吹いてくる南西の風をうまく受け止めて、 まちの中に流していく街区のあり方を考えました。 ただ、 ここで示したこういう形にすれば、 それが解けるということではなく、 風の道を持つ街区形状を考えていこう、 と言うコンセプトを表している絵です。 例えば風道実験をやっても、 実際まちなかに吹いている風は、 様々な障害物によって乱流を形成しているので、 なかなか実験室では解けないかもしれない。 しかし街区というものを考える時に、 一つの要素として風を考え、 それがまちの中にうまく入ってきて、 最終的にそれぞれの部屋をうまく風が抜けていくとことを考えていけないかが課題になると思います。
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これも同じものを立体的にあらわしているわけですが、 夜間の北からの風と昼間の南西の風をうまく受け止めるような街区のスリットの開け方を考えていく必要があると思います。
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そういった風を引き込むスリットが、 ウラの緑の連続をつくっていきます。 これは必ずしも人が通り抜けられるということではなく、 風が抜けて緑が連続する、 さらに水が連続していくという空間として、 全体が一つのクールスポットとしての役割を果たす、 そういうウラのあり方を考えてみようということです。
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