淡路景観園芸学校の現在と未来
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地域での実践(事例紹介)

 

 それでは、 実際にどのような授業をやっているか一つの例をご紹介しましょう。

 あくまで地域の中で、 地域の抱える問題を抽出し、 その解決方法を自分たちで考え、 そしてその考えを地域の人に伝えて評価してもらう、 そしてその中で可能なものは実現してしまうという、 実践を目指した授業を行っています。

 もちろんこれを実現させる事はなかなか難しく、 今も試行錯誤の状態ですが、 いくつか実現している例をご紹介したいと思います。 これも授業の中で地域に入って実際進めているプロジェクトの一つです。

 また、 せっかく淡路島に立地しているのだから、 淡路の地域にどんどん入っていこうということで、 実際に今まで地元の北淡町や淡路町に行き、 去年は洲本市に入りました。

 さらに今年は兵庫県の方で地域別に「県民ビジョン」の策定を行っています。 淡路地域においても「淡路地域ビジョン」ができ、 メインテーマを「環境立島淡路を目指して」として「県民行動プログラム」に従って淡路島民が活動を続けることになりました。

 それは私たちの学校の目的とリンクするということで、 今年は淡路地域ビジョン委員会の方々とタイアップする形で作業していきたいと考えています。

 しかし今年の授業はまだ途中ですので、 今日は昨年の淡路町でやった活動をご紹介したいと思います。


茶間川緑化研究会

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茶間川緑化研究会
 これからの地域づくりでは、 地域の魅力である物的・人的資源を自分で現場から発見する事が大事だと考えています。 そこで、 地元の岩屋地区(淡路町)の魅力をきちんと発見するという授業をしました。

 岩屋地区は淡路町の中の一番の集落地で、 淡路町全体で7000人くらいの居住者のうちの5000人弱が住んでいる漁村地域です。

 そこに実際に入ってこの地域の魅力とよべるものを、 やはり花と緑といった自然の保護という視点を一つの軸にして発見してこいという課題を学生に出しました。

 グループに分かれて調査して後でお互いに発表することにしました。 最初は自分たちだけでやろうと思ったのですが、 それでは面白くないということで淡路町にかけあったところ、 淡路町の若手職員の方々が授業に参加してくれることになりました。

 授業は昼間にあるので、 普通ならば役所の人間は職務に専念していなければならないのですが、 町長や議会が理解があり、 実現できました。

 そのときの魅力発見発表会には町長以下、 助役、 各課長が全て来て下さったのですが、 その方々と我々教員達は後ろで見ているだけで意見を言わないという約束で、 若い人だけに自由に発言してもらいました。

 学生の発表に町の若手職員の方達に来てもらったことは効果的でした。 外の人が来てくれるということで気合いが入り、 本格的にわかってくれるようにプレゼンしないといけないということで徹夜で準備しました。 そこで初めて手応えを感じたわけです。

 そのときの若手職員との討議の中から、 一つ、 「茶間川」という空間が発見されました。 茶間川は県の2級河川で、 実態は地域の中を流れる3面貼りのどぶ川ですが、 学生達と若手職員達は今はどぶ川だけど、 うまくすればこの川は魅力的な存在になるんじゃないかというふうに考えたわけです。


緑化研究会の発足

 それをきっかけにして、 そのままにしておくのはもったいないということで、 若手職員と茶間川のことをやりたいという有志の学生そして我々、 教員が集まって緑化研究会を発足し、 それが中心となって緑化を実現していこうという事になりました。

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緑化の方向と資質把握(緑化研究会の発足)
 そのようなきっかけづくりになったという意味でも、 この最初の発表と交流会は成功だったと思います。

 まず、 様々な現況調査を行いました。 このときにも必ず学生と若手職員とがリンクして活動していました。 さらに有志の住民の方も参加させてくれと言ってきてくれました。


第1回イベント(暫定緑化)

 そのうち学生の一人から、 川を良くしていこうという活動においては単にハード的な話だけではなく、 もう少し住民に認識してもらう必要があるということで、 何かアクションを起こして住民とのコミュニケーションのきっかけづくりしようという、 面白い提案がありました。

 

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橋の暫定緑化・川床美化(イベント開催概要)
 
 ちょうど2000年末の話だったので「きれいな川で21世紀を迎えよう」というかけ声で、 茶間川の掃除とそれがかかる橋に竹を使った暫定的な緑化をしてもらうことにしました。

 この「暫定緑化」というのは、 非常に効果的な手法ではないかと思います。 初めから恒久的な緑化を計画実行していくことは色んな意味で大変です。 しかし実際に緑化してみないと住民に成果を理解してもらいにくいという事で、 その両方を合わせた手法として「暫定緑化」を実践してみたわけです。

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第1回 橋の竹飾りと川床の清掃
 このイベントは自治会を通して参加を呼びかけるといった事をしないで、 全くの口コミでやりました。 だからもし集まらなかったら研究会のメンバーだけで実施する覚悟をしていたのですが、 実際には延べ50〜60人くらいの住民が参加してくれました。

 この写真のおじいさんなどは園芸の好きな方で、 これは竹をシュロ縄で結んでいる所なのですが、 学生のやり方が違うといって教えてくれたりと、 色んな面で勉強になりました。

 実際には河川法の保全整備の話だとか、 道路構造令の話など、 色々クリアしなくてはならない問題があったのですが、 そういう事についてもこのイベントを通して学ぶことができました。

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同上(イベントでの製作)
 竹飾りのデザインも学生と若手職員達で考えたものでしたが、 完成後に実は非常に見通しが悪いことがわかり、 実際に子供が飛び出してぶつかりそうになりました。

 事故が無く幸いでしたが、 そういった安全面での配慮が不可欠であるという現実的な教訓と、 デザインの難しさを私も学生も改めて学ぶことができたことも実践による成果だったと思います。


橋の緑化空間整備

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橋の緑化空間整備(整備計画・緑のデザイン賞めざして)
 さて、 これがうまく行った後、 今度は少し本格的な緑化を行うことにしたのですが、 それについて「デザインは自分達でやるけれどお金は役所」というのではなく、 お金も含めて、 自立してやりたいと考えました。

 そこでみんなで橋の両側を緑化するデザインを考え、 副賞(賞金)の高いコンペを探して応募し、 賞金で整備しようということになりました。

 入選するかどうかはわからなかったのでギャンブルに近かったわけですが、 結果として運良く緑のデザイン賞に入賞する事ができました。 最大1000万円までの助成金で、 実際に整備を行うことができたというわけです。

 このときの検討会でも町の人と若手職員と学生が中心になって進めました。 随分回を重ねて、 8月の最後あたりは約2週間ほとんど徹夜に近いような状態で仕上げました。


第2回イベント

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同上(イベントでの製作)
 12月になって住民からまたやってほしいという要望があり、 2回目の竹飾りをつくるイベントを実現しました。

 この頃になると近くの住民の方からデザインもやらせてくれというお話しもあり、 できるだけ住民主体に移行していこうということもあって採用したのがこの住民によるデザインでした。

 クリスマスにはここをライトアップして、 橋のたもとに住んでいるおばあちゃんがその点灯係をかって出てくれるなど、 随分住民主体に移ってきて面白くなっています。


緑化空間の完成と維持

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橋の緑化空間整備(完成した中道橋緑化空間)
 そしてこれが、 その間にできた恒久的な橋です。

 実は賞をとって以降、 町役場の方に実施設計と整備の管理をお願いしました。 もちろん研究会のメンバーだった建設課の若手職員の人達が中心に行ってくれました。 いろいろあって最後は随分違ったデザインになりました。

 このデザイン的には学生の間でも色々論議を呼びましたが、 今では住民の憩いの場として好評を得ているので私たちも満足しています。

 またここには町の木であるツツジを象徴的な植物として植えてあるのですが、 植物の管理を近所の方達がやってくれることになっています。 剪定など管理方法を教えてということで、 私達教員の中の盆栽技術を持った教員が先生になって青空教室を開きました。 現在はこの時の町の人達が中心に管理を行ってくれています。

 3年間かかってしまいましたが、 先ほどから申し上げている通り、 実際に学生達がここが良いという所を発見してきて、 それをまずは行政の人達に伝えて、 それがきっかけで研究会ができ、 色々勉強する過程で暫定的な緑化イベントを行い、 最終的には町の人達にいっぱい入ってもらってある程度恒久的な緑化空間整備まで進めることができました。

 川を魅力ある存在にかえるにはまだまだ時間がかかると思いますが、 学生にとっては良い成果が得られたのではないかと思います。

 このように、 徹底的に一つの地域にこだわって出来るところまでやってみようという形で先ほどの地域にこだわる演習が行われているわけです。

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