地域での実践(事例紹介)
茶間川緑化研究会 |
岩屋地区は淡路町の中の一番の集落地で、 淡路町全体で7000人くらいの居住者のうちの5000人弱が住んでいる漁村地域です。
そこに実際に入ってこの地域の魅力とよべるものを、 やはり花と緑といった自然の保護という視点を一つの軸にして発見してこいという課題を学生に出しました。
グループに分かれて調査して後でお互いに発表することにしました。 最初は自分たちだけでやろうと思ったのですが、 それでは面白くないということで淡路町にかけあったところ、 淡路町の若手職員の方々が授業に参加してくれることになりました。
授業は昼間にあるので、 普通ならば役所の人間は職務に専念していなければならないのですが、 町長や議会が理解があり、 実現できました。
そのときの魅力発見発表会には町長以下、 助役、 各課長が全て来て下さったのですが、 その方々と我々教員達は後ろで見ているだけで意見を言わないという約束で、 若い人だけに自由に発言してもらいました。
学生の発表に町の若手職員の方達に来てもらったことは効果的でした。 外の人が来てくれるということで気合いが入り、 本格的にわかってくれるようにプレゼンしないといけないということで徹夜で準備しました。 そこで初めて手応えを感じたわけです。
そのときの若手職員との討議の中から、 一つ、 「茶間川」という空間が発見されました。 茶間川は県の2級河川で、 実態は地域の中を流れる3面貼りのどぶ川ですが、 学生達と若手職員達は今はどぶ川だけど、 うまくすればこの川は魅力的な存在になるんじゃないかというふうに考えたわけです。
緑化の方向と資質把握(緑化研究会の発足) |
まず、 様々な現況調査を行いました。 このときにも必ず学生と若手職員とがリンクして活動していました。 さらに有志の住民の方も参加させてくれと言ってきてくれました。
第1回 橋の竹飾りと川床の清掃 |
この写真のおじいさんなどは園芸の好きな方で、 これは竹をシュロ縄で結んでいる所なのですが、 学生のやり方が違うといって教えてくれたりと、 色んな面で勉強になりました。
実際には河川法の保全整備の話だとか、 道路構造令の話など、 色々クリアしなくてはならない問題があったのですが、 そういう事についてもこのイベントを通して学ぶことができました。
同上(イベントでの製作) |
事故が無く幸いでしたが、 そういった安全面での配慮が不可欠であるという現実的な教訓と、 デザインの難しさを私も学生も改めて学ぶことができたことも実践による成果だったと思います。
橋の緑化空間整備(整備計画・緑のデザイン賞めざして) |
そこでみんなで橋の両側を緑化するデザインを考え、 副賞(賞金)の高いコンペを探して応募し、 賞金で整備しようということになりました。
入選するかどうかはわからなかったのでギャンブルに近かったわけですが、 結果として運良く緑のデザイン賞に入賞する事ができました。 最大1000万円までの助成金で、 実際に整備を行うことができたというわけです。
このときの検討会でも町の人と若手職員と学生が中心になって進めました。 随分回を重ねて、 8月の最後あたりは約2週間ほとんど徹夜に近いような状態で仕上げました。
同上(イベントでの製作) |
この頃になると近くの住民の方からデザインもやらせてくれというお話しもあり、 できるだけ住民主体に移行していこうということもあって採用したのがこの住民によるデザインでした。
クリスマスにはここをライトアップして、 橋のたもとに住んでいるおばあちゃんがその点灯係をかって出てくれるなど、 随分住民主体に移ってきて面白くなっています。
橋の緑化空間整備(完成した中道橋緑化空間) |
実は賞をとって以降、 町役場の方に実施設計と整備の管理をお願いしました。 もちろん研究会のメンバーだった建設課の若手職員の人達が中心に行ってくれました。 いろいろあって最後は随分違ったデザインになりました。
このデザイン的には学生の間でも色々論議を呼びましたが、 今では住民の憩いの場として好評を得ているので私たちも満足しています。
またここには町の木であるツツジを象徴的な植物として植えてあるのですが、 植物の管理を近所の方達がやってくれることになっています。 剪定など管理方法を教えてということで、 私達教員の中の盆栽技術を持った教員が先生になって青空教室を開きました。 現在はこの時の町の人達が中心に管理を行ってくれています。
3年間かかってしまいましたが、 先ほどから申し上げている通り、 実際に学生達がここが良いという所を発見してきて、 それをまずは行政の人達に伝えて、 それがきっかけで研究会ができ、 色々勉強する過程で暫定的な緑化イベントを行い、 最終的には町の人達にいっぱい入ってもらってある程度恒久的な緑化空間整備まで進めることができました。
川を魅力ある存在にかえるにはまだまだ時間がかかると思いますが、 学生にとっては良い成果が得られたのではないかと思います。
このように、 徹底的に一つの地域にこだわって出来るところまでやってみようという形で先ほどの地域にこだわる演習が行われているわけです。