淡路景観園芸学校の現在と未来
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最近のまちづくりの動向

 

農業・自然再生分野での動き

 まず最近のまちづくりの動向について、 最近私が書かせていただいたものから、 お話ししてみたいと思います。

 たとえば農業土木学会の学会誌が「住民参加と情報公開」という特集を組む時代になりました。 平成11年に農業基本法が農業・農村・食料基本法に改正されたこともあって、 こういった概念がこれからの農村づくりに必要だという話が出てきているのです。

 次に「市民との協働による自然的環境の保全育成」という論文では、 データーベースをしっかりつくっていかないと、 これからの多自然居住地では計画論が進まないのではないかといった話を書いております。

 また、 今月「自然再生法」が国会を通過し、 2003年1月1日から施行されます。 自然再生法にのっとって我々は地域の自然環境をどう考えていくのかという時期に来ています。 その辺りのお話も書いております。

 それでは、 本論に入っていきます。


緑のコミュニティデザイン

 学芸出版社から11月30日に
『緑のコミュニティデザイン』という本を出版しました。 この本のきっかけは、 淡路景観園芸学校の学生だった新田佳代さんが卒業研究でこんな本を編集したいと言い出したことです。 彼女が提案したのは震災復興のときに緑がどんなふうに機能したかをまとめたい、 それを卒業研究にしたいということでした。 ではやりましょうということになったのですが、 学芸出版社に持ち込んだところ、 前田さんの厳しい指導を受けて挫折してしまったのです。

 その後、 彼女の意志を引き継いで我々が一生懸命に取り組みました。 その辺りのいきさつについてはあとがきにも書いてありますのでご覧になって下さい。

 彼女は頑張りまして、 現在豊岡市役所の「コウノトリと共生する推進室」というすごい名前の部署で一年目とは思えないほどの頑張りようで働いています。

 これは実は市長さんが地域の事を地域で実践的にやっていく人を入れようという事で、 彼女が入ると同時に、 この4月から新設した部署なのです。 そのくらい期待されながら、 彼女は当然事務職で入ったわけです。

 要は良い首長がいる所ではそれなりに、 景観園芸学校の学生のために、 今の仕組みを使い、 それ以上の事をしてくれることが期待できます。 またそういった所で卒業生達は結構頑張っているようです。

 園芸学校の学生さん達がこれから働いていくという事と、 まちづくりの話ですが、 人と自然の博物館長である河合雅雄の弟、 河合隼雄さんが「21世紀日本の構想」で“新しい公”とか“ガバナンス(共治)”といった概念を出されました。 私はひょっとしたらこれらの概念をリードし指導していくのが、 緑分野では景観園芸学校の卒業生であり、 彼らがそのコーディネーターの役割をする人ではないかと思っています。


NPM、 PFI、 PPP

 最近ではイギリスやニュージーランドあたりでNPM(New public Management)、 PFI(Private Finance Initigative)、 PPP(Public Private Patnership)といったまちづくりの新しい仕組みが出てきています。 これについては皆さんも既に十分取り組んでおられると思います。

 つまり新しいまちづくりをしていくために今までの仕組みでは無理だと言うことです。

 そうするとこれからの時代に耐えうる仕組みをどう構築するのか、 それは先ほどの「新しい公」という概念を出発点として日本でも進めていく事になるだろうと思っています。


NPOと市民活動の特性

 また、 そのような事から今NPOが大いに注目されています。

 NPOだけではありませんが、 ひょっとすると景観園芸学校の卒業生は緑のNPOのリーダーではないかという気がしています。 実際、 兵庫県の中でも修了生達がアルファグリーンネットというNPO法人をつくって地域で花と緑のコーディネーション役をしておられます。

 なぜNPOがいいかというと、 自主性がある、 柔軟性がある、 先駆性、 機動性がある、 専門性に富むという、 まさに行政とは違う種類・仕組みの運動をされているからです。 こういう運動と従来型のまちづくりがうまくマッチングしてくると良いのではないのでしょうか。

 そういう意味で、 そのような行政とうまくネットワークすることができるNPO的な仕事をしていただく事が大事なのではないでしょうか。


新しい公の領域

 さらに今議論している事ですが、 従来型の私領域と公領域との間に、 それらが一緒になった「新しい公」の領域を創造し構築する事が、 中山間地域のまちづくりなどで大事な事だと思います。

 ところがそれをうまくやろうと思うと、 この「従来型の私領域」と「従来型の公領域」の二つをうまく合体させていかなければなりません。 そのあたりの仕事が景観園芸学校の人達に期待されているのかなという気がします。


新たな社会活動システムの構築

 今の話を同じように「官」と「民」に置き換えると、 最近は官と民とでこれからどうするという話が一杯出てきています。 そこでそのNPO・住民・ボランティアといった「民」と市町村など「官」との二者がうまく協働できる仕組みを「新たな社会活動システム」として構築していく必要があると思います。

 そして景観園芸学校はまさにその中間領域で、 特に緑に関して、 情報の共有や、 担い手の発掘・育成といった機能、 さらには拠点づくり、 財源強化、 組織化といった仕事にも機能を発揮することを大いに期待されているのです。


バイオマス日本21

 林野庁が中心になって進めている「バイオマス日本21」という新構想があります。 あのCOP3のCO2の固定の話に関連して「バイオマスのテーマパークをつくろう」というものです。

 この中で私は特に「多自然居住地域のまちづくり」に一生懸命取り組んでいるのですが、 とにかくこういった議論がこれからますます増えてくると思います。 そうすると、 これには植物を知っていて景観を知っていて、 まちづくりを知っている人間でないと対応できません。

 多分今までは風力の専門家は風力を担当し、 太陽光の専門家は太陽光に取り組みといった具合だったでしょう。 しかしさらにそこでその両者をうまく統合しながら議論を進めていって、 まちづくりに活用していかなければなりません。

 例えばバイオマス日本21では「バイオマスのための人工林育生をしよう」という話が出ています。 多自然居住地域のまちづくりにおいても、 おそらくこういった辺りがこれから大事になってくるでしょう。 ところが、 そのコーディネーターがまだまだいないというわけです。

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