淡路景観園芸学校の現在と未来
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(2)景観園芸専門課程の学生生活

専門課程4期生 大木志津菜

 

 斎藤先生のお話の内容が実際にどのように授業に反映しているかを中心に、 私達の学校のことと、 それについて私自身が思っている事をご説明したいと思います。

 私達4期生は20人、 新卒で大学や大学院からそのまま入ってきた人が11名、 元社会人が9名おります。 中には60歳、 50歳の方もいます。 男性8名、 女性12名です。 南は愛媛、 北は山形から来ており、 一番多いのが神奈川県出身で5人おります。 ちなみに私も神奈川県出身です。 出身学部も、 農学部、 建築学部、 環境科学部のほかに文学部、 情報学部、 経済学部、 法学部、 海洋資源学部と、 バラエティに富んでいます。 全員、 学内の寮で暮らしております。


入学のきっかけ

 私は元社会人です。 大学を出ましてから不動産の仕事を1年、 職業訓練校でエクステリアコースに半年、 その後、 造園・外構の仕事を3年半経験してからここに参りました。

 造園・外構の仕事に興味を持ったのは、 植物が好きなことに加えて、 大学の時に、 世界の歴史的都市が何故そのような形になっているのかを学ぶ授業があり、 私達の住むまちには、 個性がないと思ったのがきっかけです。

 どこのまちに旅行しても同じような風景で、 「これでいいのかな」という疑問を解消できたらと思って就いた仕事でした。 ですが、 仕事をしているうちに色々疑問に思うことがでてきたことと、 それまで、 仕事に関わってくる植物についての学問的なことと、 都市計画やまちづくりに関すること、 庭園の設計にについてなど、 本で読んだりした以外に学んだことが無かったので、 ちゃんと学んでおきたいという気持ちがあり、 その両方を平行して学べるということで、 この学校に来たいと思いました。


ボリュームたっぷりの授業内容

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1年次後期時間割(紫:座学、 緑:植物関係演習、 黄:それ以外の演習)
 私達の後期の時間割は、 図のようになっております。

 紫色が座学、 緑色が直接植物に触る演習、 黄色がそれ以外の演習、 ピンク色が実際はその時間内には行われないけれど、 自主的に活動することによって単位として認められるという授業です。

 植物については、 前期・後期を通して、 座学で知識的に学ぶのと同時に、 演習で種を播いて育てたり、 手入れをしたりしています。 何百もの植物とその学名を覚えて、 学期末には同定試験も行われます。 同定試験とは100個の枝が並べられ、 そのひとつひとつを当てていく試験です。

 まちづくりの授業では、 前期には法律的なことを学んだり、 ワークショップやオープンガーデンの見学に行きました。

 植物をスケッチしたり、 庭を設計して模型を作ったりするデザインの授業や、 CAD、 GISを学ぶ授業もあります。 また、 外国から活躍されている方を招いて、 英語で行われる授業もあります。


学校の特徴

 実際に入学してみて、 想像していた以上に良かったと思える点が何点かあります。

 まず、 実践的とパンフレットにうたわれていた授業が、 思っていた以上に実践的だったことです。 そして、 他大学で教えられている先生や現役で実社会で活躍しておられる多くの方が、 非常勤講師やインストラクターとして教えに来て下さることです。 これは、 私達の学校の大きな特徴だと思います。

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景観計画演習:現地調査の様子
 例えば、 月曜の2限から5限まで通しで行われる「景観計画演習」という授業は、 先ほど斎藤先生の話しにあった、 過去に淡路町の茶間川の計画を行ったものですが、 今年も同様に何組かのグループに分かれてそれぞれ淡路島内の1個所をとりあげ、 そこの調査・計画・提案などを行っています。

 1グループにつき1人以上の先生が付いて見てくださるのですが、 私は斎藤先生のグループに入っております。 そこにもう一人、 業界の第一線で活躍されているコンサルタント、 株式会社ヘッズの田中先生が加わってくださいまして、 今、 あるまちの活性化のための「ランドスケープの視点からみたエコ・ツーリズムの提案」という計画案を作っております。

 また、 これからのまちづくりを考える上で欠かせない、 NPOについて学ぶ授業もあります。 この授業は、 地元のNPOを発展させて、 より多くの住民を巻き込んだものにしようというものです。 これには「NPOを立ちあげる時にその支援をしてくれる」というNPOであるCS神戸を主催しておられる中村順子先生に見ていただいております。 本格的に授業が始まるのは来年の春からで、 今はその準備段階なのですが、 すでに何度かそのグループの方々と話し合いを持っています。 最近も、 その地元NPOグループの事務所にお邪魔して、 リーダーの方と町の女性議員さんに聞き取り調査をさせていただきました。

 そして、 これは私達の学校の非常にすばらしい点だと思っていますが、 学内、 学外で行われるセミナーや勉強会、 ワークショップなどの情報が、 学内の先生や学生はもちろん、 非常勤講師の先生、 卒業生からもメールでたくさん送られてきます。

 そのセミナーなどに参加することで、 ポイントとして加算されて、 単位になるという「周辺学」という授業もあります。 これは自分の興味ある分野に絞って参加する学生もいますし、 植物やまちづくりや環境保護などいろいろな分野にまたがって参加し、 知識の幅を広げようとする学生もいます。

 ちなみに、 私の例でいいますと、 後期に入ってからは、 グループでアートフェスティバル(新庄市最上環境芸術祭)に参加して作品を作ったり、 先生に同行して頂いて高知県立牧野植物園を見学しに行ったり、 地元のクラブ活動に参加したりしています。 図は私が参加しているクラブの様子で、 先生のご指導の元に地元の人たちと共に学んでいる淡路盆栽クラブです。 月に1回、 学内の作業室で行われています。

 その他にも、 卒業生を通じて知り合った樹木医さんに、 滋賀県にあるウツクシマツという珍しい松の自生地を見学させていただき、 樹木診断の方法を教えて頂いたりしました。

 また三田市にありますヒノマルナーセリーを見学させてもらったり、 金岡町のワークショップに参加したりもしました。 この時は、 私どもの学校の先生が進行役をつとめている金岡町の河川の緑化に関するワークショップに学生4人で参加し、 ファシリテーター役をやらせてもらいました。 これ以外にも、 いくつかのセミナーに参加しております。

 これらに参加することで、 授業で学ぶことプラスアルファの勉強が出来ているのではないかと思います。 来年は、 この1年学んだ内容を発展させ、 各自テーマを決めて卒業演習に取り組む予定です。

 授業のボリュームが大きい上に、 週末も周辺学などで活動しておりますので、 授業で習ったすべてについて理解し、 覚えるということは私にとっては難しいのですが、 ノートや資料を整理しておけば、 卒業後大いに役に立つと思っております。


広がる人の輪と卒業後の不安

 学ぶこと以上によかったと思えたことが、 つながりの強い人脈を得られたということです。 一つの寮で毎日顔をつきあわせて生活していますから、 学生は皆、 家族のように仲良しです。 学生の人数に対して先生の数が多いので、 先生方とも授業外でも親しくさせていただいています。 実は昨日も先生の家に押し掛けて、 朝まで飲み会でした。 きっと、 卒業してからもこのつながりは変わらないと思います。

 それに加えて、 その学生や先生を通じて知り合ったり、 学外のセミナーなどで知り合った方々を加えれば、 まだ入学して1年もたたないこの短い期間に、 ずいぶん多くの人と知り合うことが出来たと思います。

 ただ、 学校形態については不安がないわけではありません。 卒業しても学位が取れるわけでも、 資格が取れるわけでもないため、 就職活動が難しいこと、 この点は不安に感じております。

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