質疑応答
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今はまだ区画整理をされているところだと思いますが、 周囲はまだ多くが工場系の土地利用です。 集客産業であるUSJと周辺の工場との間で問題が発生することはないのでしょうか。 また、 工場地帯が将来はどうなっていくのかの展望についてもうかがいたいと思います。
北野:
USJは常にアトラクションを増やしていかなければなりません。 ですから、 経営が順調に行けば10年以内に第2のテーマパーク拡張に着手する可能性があります。 シティウォークの周辺までパークを広げていくことはイメージできます。
近隣の工場地帯の地権者との関係は良好ですが、 周辺住民等に環境上の悪影響を与えないため、 行政協議により環境アセスメントに基づく規制条件下でパーク運営を行っています。 例えば、 テーマパークですからいろんな騒音を出すことになるのですが、 その音への注文は厳しいものがあります。 ですから、 近隣との調整はあるのですが、 今のところなんとかなっているという次第です。
工場地帯の将来の展望については、 かなり厳しいご質問です。 USJと違ったテーマパークを別に作ったり都市再生を追加指定するのは考えにくいことですので、 工場側の自発的な動きと合わせ技として地区計画や景観条例を考えるなどの作業になっていくと思います。 それをしながら、 どういうまちづくりにするのかというイメージが出てくると思います。
もてなしをいろんな形で演出しておられるというお話でしたが、 実際に行ってみるといろんなアトラクションの音が混じってしまってけっこう五月蠅い環境だと思いました。 サウンドスケープの基準はあるのでしょうか。 例えば、 それぞれのアトラクションの音はどっち方向に何デシベルとか、 こちらの方向には聞こえないようにするとか。 もしないとしたら、 今後考えられる予定はあるのでしょうか。
北野:
確かにパーク内の音は課題になっています。 パレードの音にしても、 ディズニーは最初から音響的なことも考えていたのですが、 USJは後からパレードを導入したものですからアトラクションの音と交錯してしまうことがあります。
特に視覚障害者にとっては音声誘導装置が場所により十分聞き取れなくなって困ってしまうのですが、 その場合は機械ではなく人間が案内するようにして、 ソフト面で対応せざると得ないと思います。
日本側はアメリカ側にもっと音を下げて欲しいと要望しているのですが、 できたばかりのパークで音に関してはアメリカ側のコンセプトに関することですから当面変更は難しいようです。 音の出る方向については工夫しているのですが、 音源自身のレベルが高いものですから、 少々の変更ではどうにもならないと聞いています。 しかし、 今後はバリアフリーの観点からも集客していくためにアメリカ側も改善を考えると思います。 彼らは聞く耳は持っていますから。
角野:
では今のところ、 USJ本社としては音の基準は持っていないということですね。
北野:
おっしゃるような意味の基準は、 たぶん持ってないと思います。
USJの影響かどうかは分かりませんが、 USJのオープン後に地元の老舗である阪神パークや宝塚ファミリーランドが次々に閉鎖になりました。 まるで既存の商店街と新しく郊外に出来た大型店の関係を見るようですが、 テーマパーク業界ではシェアを分け合ったりするのでしょうか、 それとも食い合いですか?
どうも戦い合っている世界のようです。 現在、 世界中で年間500万人以上集客できるテーマパークは、 ディズニー系が七つ、 ユニバーサル系が五つ持っています。 香港では2003年1月に香港ディズニーが工事に着手しました。 上海でもユニバーサルとディズニーが争ったんですが、 ユニバーサルが勝った形となりました。 2006年に開業する予定だそうです。
アジアは人口が多いので、 今後もテーマパークが乱立するのではないかと思います。 協調関係どころか、 どこも熾烈な戦いを繰り広げる厳しい環境です。
植栽デザインや植物に関係することで、 USJでは特に工夫されたことはありますか。 ワシントンヤシがたくさん植えられていますが、 あれは潮風に対してもつのでしょうか。
北野:
植栽関係は私の不得手な分野なのですが、 植栽の選定についてはかなり工夫しているので、 潮風の問題もクリアしているはずです。
外線に緑地面積もかなりとってあって、 全敷地の約14%が緑地で、 見かけよりはずっと多いんです。 アメリカのフロリダのディズニーになると、 森のような緑地の中にテーマパークを作る発想ですが、 ここでもテーマパークと緑地の関係で言うと、 外周部に緑地を設け、 中は都市という形態になります。 パーク内のゲストの目から見ると、 都市の中に緑が点在するように見えます。 しかし、 もう少し中央部に緑地をとっておけば、 夏の暑い時期に快適な休憩場所ができたのにと思います。
ただ元々がアメリカで植栽計画されたもので、 そのガイドラインに合わせて日本人デザイナーが日本の気候に合わせた植物を植えています。 ここの風土に合ったものを考えて選定しているので、 潮風には丈夫な筈です。 鹿児島から潮風に強い木を運んできました。 一部に外国産もありますが、 基本的に植栽は日本のものを使っています。
水路を使うアクセスと言えば神戸・三宮から関空行きの船(Kジェット)がありましたが、 なくなってしまいました。 南海電鉄のラ・ピートもお客さんが減って経営が大変だという話です。 USJのアクセスでも、 以前は中之島からUSJ近くまで出ていた船がなくなってしまいました。 どうも今は「民活、 民活」と言って食い合いをしたあげくに、 魅力向上のためのまちづくりだったはずが予想外の方向に行ってしまうという話が多いようです。
もし大阪市が本気で水都再生を考えるならば、 船を利用したら優遇策があるとか、 ホテルからUSJ内まで船で直結できるようなことをして欲しいと思います。 大阪市内からすでにUSJの気分が始まるような方法を積極的に考えるべきではないでしょうか。 アクセス方法はどうでもいいと言っていたら、 あんまり水路を生かせないように思うのですが、 いかがでしょう。
北野:
今はまだ直接水路でUSJ内に入れる形態になっていません。
最終的には独立採算がとれるようにならないといけないとしても、 そうなる前の過程では行政の支援が必要でしょう。 実際、 今は淀屋橋から大川を上る水上バスには何千万円も支援していると聞いています。
今言われたアクセス方法を増やすことは可能だと思います。 ただ、 モチベーションとしては民間企業が相乗りしてくれないといけません。 以前大阪ドームとUSJをつなぐとか、 道頓堀とUSJをつなぐというアイデアをみんなで出したこともあるのですが、 民間企業と条件が合わなくて断念したこともあります。
これから新しいアクセスを作っていくとすれば、 二期工事の時に工夫できるだろうと思います。 ですから、 食い合いをしているところもあれば、 そうでないところもあるということです。 市としては水都再生のため、 水にからめた予算はつけていくだろうと思います。 ただ、 こういうことは時間がかかると思います。 USJがしっかり集客を継続した上で、 市や関連企業等がタイアップしていく可能性はあるでしょう。
私は中小企業診断士として大阪の東側、 大坂城のあたりや生野あたりをよく回っています。 今日のお話は主に大阪の西側がクローズアップされていましたが、 大阪の東側もそれなりの面白さがあるし、 まちづくりの資源もかけがえのないものがたくさんあると思います。
USJは大阪の観光のために多大な貢献をしていただいていますが、 観光の基盤はやはり都市です。 大阪のまちがどれだけレベルアップするかで、 USJの集客も変わってくると思うのです。
ですから、 大阪の中心市街地の活性化ももっとプロデュースしてほしい。 USJの手法をもっと大阪の町中にちりばめられないでしょうか。
水都再生も素晴らしいプロジェクトですが、 残念ながら市民の意識はもうひとつ盛り上がらない。 まちづくりは市民の盛り上がりも大事な要素ですから、 市民にもっとも身近な存在であるJR環状線を使うことでもっとうまい工夫ができないかと思うものです。 USJと一緒になって何か出来ないでしょうか。 JR環状線を活用しろと市の人には何回も言っているのですが。
北野:
環状線については、 今景観の方から検討をしています。 私が以前大阪市の計画調整局にいたときに景観や緑のマスタープラン策定過程で、 各駅にもっと緑を増やして緑のルートを作るというアイデアも持っていました。 ただ実現までは時間がかかりそうです。 JR環状線だけでなく、 民間の駅の緑化も増やしていく指導をしていくことは可能性がありそうです。 まだ構想段階ですが、 以前からこういう話はあります。
あとUSJとJRのタイアップは作戦として可能性はあります。 実際、 今ユニバーサル駅までの駅ごとに特徴のある景観を作り出せたらいいという議論は出ています。 ただ環状線まで含めてというのは考えたことはありませんでした。 非常にいいアイデアだと思いますし、 多数の人が利用していることを考えるとまちづくりに利用すべきものだと私も思います。
北野さんは大阪市からUSJに出向されているとうかがいましたが、 USJではアトラクション施設も作っておられるそうですね。 一体、 ご専門は何なのですか。
北野:
私自身は建築出身です。 USJ以前は港湾局でウォーターフロントの開発に携わっていました。 大阪市の計画調整局にもいて、 主に計画部門の仕事をやっていました。
USJでは建築の仕事をしています。 「スパイダーマン」(2004年1月グランドオープン予定)のアトラクションに建築の仕事として参加しています。 ただし、 許認可、 環境のことまで関係していかないと、 施設だけでは仕事をやらせてもらえないということもあります。
前田:
では、 大阪市とUSJとのコミュニケーション役を務めているということになりますか。
北野:
そういうことですね。
司会(鳴海):
では時間が迫ってきましたので、 今日は終わりにしたいと思います。 北野さん、 貴重なお話をどうもありがとうございました。
USJ周辺のまちづくりとの関係について
堀口(アルパック):
音の基準について
角野(武庫川女子大):
今後のテーマパーク業界について
難波(兵庫県):
北野:
植栽デザインについて
松久(大阪芸大):
水路を使うアクセス方法について
江川(現代計画研究所):
JR環状線もまちづくりに一役買えないか
弓場(中小企業診断士):
北野氏の正体は?
前田(学芸出版社):
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