アジアの大都市における都市デザインの状況
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3.事例

 

 ではここで実際の事例を見ていきましょう。


CBD(北京商業中心区)

 最近話題となったCBDのコンペでは、 国外、 国内より100案あまりが寄せられました。 大都市中心部の再開発のプロジェクトです。

 市街地を取り巻く環状線は第5環状線まで完成しており、 第6環状線もそろそろ完成する予定です。 CBDは国際貿易センターの東側にあり、 約4km2の面積を占めます。 この地域の再開発は10年前から進められていましたが、 今回のコンペの設定では4km2の敷地の中に1000万m2の床面積をとるということになっています。

 また、 その3割に住宅を作るという条件でいろんな案が出されましたが、 私は容積率が高いと思っています。 交通の問題が将来発生すると思います。

 このコンペの一等案はアメリカの事務所が作った案です。 構造がはっきりしていると評価されました。

 日本の都市環境研究所が出した案は2等賞でした。 審査員によれば、 交通計画が最も丁寧だと評価されました。

 3等案は中国北京審査会の案です。 この案のいいところは、 より進めやすいように段階的開発を取り入れていることです。

 賞は逃したものの、 ドイツの案はけっこうレベルの高い案でした。


オリンピック公園

 2002年に行われたオリンピック公園のコンペでは、 オリンピック公園の北14kmに南北軸線が延長され、 最後は緑地を設けることがコンペの要件として出されました。

 1等賞に選ばれたのは、 アメリカ・ササキ事務所の案です。 評価されたポイントは、 北京市を南北に走る中央の軸線を明快に強調したことです。 中央軸線を通って天安門広場と紫禁城がありますので、 この軸線を強調することで北京市の特徴が際だつ事になります。

 2等賞は二つ選ばれましたが、 そのひとつが北京市とオーストラリアが共同して作った案です。 これも、 中央軸線を強調しています。

 同じく2等賞だったのが、 日本の佐藤総合計画の案です。 この案は、 ランドスケープに特徴がある案でした。

 このコンペは3等以下がなく、 優秀賞がいくつか選ばれました。 北京大学の案も優秀賞をとりました。

 オリンピック公園では、 2008年のオリンピック終了後にどう利用するかが課題です。 昨年より北京市とオリンピック委員会で議論が続いています。 オリンピックに備えて、 かなりの施設を作らなければなりません。

 そのうちの5つの施設は北京市内の大学が作ることになり、 北京大学も卓球施設を作ることが決まっています。 これはオリンピックが終了した後、 大学が自分の施設として利用するため、 予算は大学持ちで政府からは一切出ません(臨時施設の場合は別です)。 オリンピック終了後にうまく利用できなければ大変な負担になりますので、 北京市はじめオリンピック委員会は慎重に検討しているところです。

 また、 2008年のオリンピックはスポーツ、 ビジネス面のことばかりでなく、 文化や緑のオリンピックも実現することが課題です。 今はそれをどう進めていくかを検討しているところです。


歴史文化地区の保存

 近代化が進んだとはいえ、 北京市は二千年の歴史がある街なので、 紫禁城を始めとする元代以降の文化財が蓄積しています。 近代化を進めつつ、 これらをどう保存していくかは大きな課題です。 学者や都市計画プランナー、 文学者なども声を上げていますが、 なかなか難しい問題です。

 政府は、 第2環状線内の明・清時代の街区を25地区指定して、 保存地区とすることに決めました。 指定が終わり、 今は実行段階に入っています。 この25地区については、 かなり丁寧に保存計画が行われています。

 紫禁城周辺は、 故宮博物館、 中南海、 国会公園など中国を代表する文化財が集中しているところです。 周辺の市街地にも歴史的なものが多く、 四合院なども多く残っています。

 しかし、 北京市の中央に位置するために、 最近は業務化と商業化の圧力が強まってきました。 そのため、 この地区では残されている文化財や街の機能を綿密に調査して保存計画を作成しました。

 イタリア、 フランスの都市風景計画と同じ手法で、 軸線や景観の位置づけの分析もしています。 この方法は
 また、 電柱などのインフラ設備を地下に埋めて、 四合院などの歴史的町並みを損なわないようにしています。

 さらに一軒一軒の建物を調べて保存する価値があるかどうかを評価し、 どの程度の保存にするかを調査しました。 つまり、 この建物はファサードだけの保存にするとか、 中身も含めて完全に保存するかどうかということも決めました。

 中央軸線の西側に、 四合院も含め歴史的な建築が多いゾーンがありますが、 ここも紫禁城周辺と同様な手法で調査し、 保存計画を立てました。

 このように保存計画が作られてそれを政府が認可すると、 そのとおりに実行されなくてはなりません。


北京市のその他のまちづくりプラン

 北京ではこのように最先端の建築プロジェクトから歴史的な町並み保存までいろんなアーバンデザインが行なわれています。 このほかにもユニークなまちづくりプランがありますので、 それも紹介しておきます。

 ひとつは、 街の色彩計画です。

 1999年に中国は建国50周年を迎え、 建国記念日の前に街をきれいにしようと大規模環境整備を実行することになりました。 その際、 汚い建物を全部建て直すのは無理だから、 せめて色彩だけでもきれいにして欲しいと北京市から建物の所有者・管理者に要望が出ました。 ところがやってみると、 みんなテンデバラバラの色を塗って前より変な色彩の街になってしまったんです。

 そこで北京市は基本的な色彩としてグレーを街の色として採用しました。 それが市民の間で議論を呼ぶことになり、 一般的な市民は「グレーは暗い感じがする」と反発しました。 この問題はテレビ・新聞を通じて論争が続きましたが、 結局は色彩の専門家が出てきて「グレーと言っても実際には20種類の色がある」と解説し、 街の色とは何かを説明することで落ち着きました。

 北京だけでなく各都市で今は街の色彩をどうするかが課題になっています。 JUDIメンバーの吉田慎吾さんも、 昨年遼寧省のある街で都市の色彩マスタープランを手がけているとおっしゃっていました。

 もうひとつは、 夜の照明計画です。 今は照明計画が過剰になっているきらいもありますが、 これも今どうしたらいいのかと課題になっています。

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