アジアの大都市における都市デザインの状況
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4.天津の再開発

 

 続いて、 私が手がけたプロジェクトについて紹介しながら、 中国のアーバンデザインの実際の現場を見ていきます。

 まずは環境デザインについてです。 行政としてはまず一番目立つところをやりたいということで、 2年前に天津経済技術開発区の第3大街の環境デザインを依頼されて、 実施計画から施工図までを作り上げました。 最近では大分工事も終わりましたので、 出来上がってきています。

 この天津経済技術開発区は1984年に指定された中国沿海部14都市のうち、 最初に指定されて都市で、 今は最も成功した都市になっています。 アメリカのモトローラを始め大企業のいくつかが天津に入っています。 しかし、 大都市からは離れたところに位置していますので、 今後も工業団地に人を集めるためには、 もっと都市機能を充実させる必要がありました。

 開発区の3分の1が生活ゾーンとなっていて、 そこを貫く一本の通り(大3大街)を環境デザインいたしました。 この通りの北が工業ゾーンとなっています。

 第3大街は南北7kmにわたる大通りで、 この20年間は段階的にスプロールしてきた街です。 ですから景観上もバラバラで、 まとまりがありません。 開発された当初は工業重視でやっていましたから、 景観についても配慮されていなかったのです。

 また、 当時建てられた建物はレベルが低く、 最近建てられたものと比べると格差が大きくどうしても見劣りがします。 ですから、 全体の景観も含め、 どう見栄え良くするかが私の課題でした。

 現況を調べてみると、 オープンスペースも足りないことが分かって、 それも頭に入れてデザインを考えることになりました。

 学校のフェンスや形もバラバラに作られていました。 建物のデザインもバラバラで、 1本の通りとしてみたらそろっていませんでした。

 そこで、 現況にもとづいて将来の業務機能を考え、 いくつかのゾーンに分けました。 景観構造の分析をしたわけです。

 基本的には、 ガーデン型の通りとするという位置づけです。

 また、 この再開発はサイン計画を施した最初の事例だと思います。 この7kmの通りにどんな種類でどんな密度で入れるのかを計画しました。 私としては、 サインを外部空間のファニチャーとして位置づけています。

 それ以前の中国にはサイン計画まで考えるという意識がありませんでしたから、 作ってくれる業者から捜さねばなりませんでした。

 さらにこの計画では、 公的空間と私的空間がなるべく一体化するように考えています。 公共空間と私的空間の際から壁面までを広くとって緑化スペースとしました。 植栽も高木と低木を組み合わせ、 ファサードの表情を豊かにしました。

 電柱も私がデザインし、 業者に作ってもらいました。

 通りの幅も以前より広げました。 開発区の役所を通じてやったことですが、 法定計画で決められた位置よりももっと奧に建物をセットバックしたのです。

 道路際にあった高級住宅地についても、 私有地の境目をフェンスで区切るのではなく、 公共空間と一体化したオープンスペースにしてはどうかと提案し、 その通りにやってもらい、 フェンスがなくなったことで、 芝生がつながって見えるようになりました。

 ただ住人以外は私有地に立ち入ることは出来ないようにしています。 フェンスの代わりに、 低い植栽を植えて境界線の役目としました。

 バス停もなるべく人にやさしいデザインにしました。

 建物については環境との融合を目指しています。 都市プランナーと建築家がうまく協同して出来上がった事例もあります。 建築家も私の案を尊重してくれて、 公共空間の緑とあうよう緑地を提供してくれました。

 一般的に建築家はあまり回りを見ないで建物のことだけ考えてしまうのですが、 ここではスムーズに環境デザインとつながる建物になっています。 建物側は緑地部分をとるためかなりセットバックしていて、 境界を示すフェンスも最小限にしデザインも配慮しています。 こうしてくれて景観上もよかったと思います。

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