東成区旧大今里・東今里村 |
赤い線で囲んである部分が明治以前に村だった部分です。 下の方が大今里村で、 上の方が東今里村になっています。 大今里村の南側に千日前大今里駅があり、 東側に神社があり、 ここで「熊野大神宮秋祭り」をやっています。
先ほど鳴海先生の話の中で、 「伝統的な祭りをもっている地区に住んでいる人」、 「それに巻き込まれる可能性をもっている人」、 「全く関係ない「サラリーマン都市」」という話がでましたが、 この地区では、 昔から農業をやりながら収穫のお祝いで祭りをやっていた地域、 つまり伝統的な祭りを持っている地域は赤い線の中だけでした。 その周辺は、 大正や昭和の初めに小さな工場が沢山できたスプロール地区で、 祭りに巻き込まれる可能性がある地区ということになります。 村と村がもっと離れていると、 その間に巻き込まれる可能性のない、 つまり祭りのない地区ができますが、 大阪市内の場合は歩いて10分くらいで隣の村に行き当たりますので、 村々がネットワークしており、 お祭りがないサラリーマン都市のような地区はほとんどないという状況になっています。
一番大きな青い線が旧村の地区です。 昔はこの辺り一帯が田んぼや湿地帯でした。 大今里村を東西に、 奈良暗峠街道が通っており、 街道沿いは宿場町のように町家が並び、 その裏手は農村のような様子でした。 最初は村にしか人が住んでいなかったのですが、 次第に田んぼだったところにまちができ、 現在は旧村の範囲全面に人が住んでいるという状況です。 青い線が町会の区切りを示しています(一般的には「町内会」、 大阪市内では「町会」という)。
先ほど先生の話の中で、 参加の制限という話がありましたが、 大阪市内の伝統的な祭りは、 神社だけでもなく、 地域と離れた任意団体でもない、 町会がうまくクッションとなって行われています。 ここには、 50個余りの町会がありますが、 それらの代表が神社の奉賛会に入り、 祭りの運営をしています。
東今里神路地車保存会 |
大今里地車保存会 |
東今里のお宮さんが大今里の神社に合祀されて一つの祭りを行っているので、 この祭りでは二つの地車が巡行しています。 どこの地車もほとんどそうですが、 普段は神社の境内に地車を保存する倉庫を作って置いてあります。 祭りになると宮入りのために東今里神路地車保存会は大今里村まで地車を引いて行きますが、 大今里地車保存会は地車を引かずに、 神社でおはやしをして踊っているだけです。 二つの地車にはこのような違いがあります。
地車を引く大きな目的の一つは、 お花代をもらうことです。 お花代をくれた家の前では止まって、 後ろについて歩いている人たちも一緒に「イキマーッショイ!」とかけ声をかけます。
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「地車を引くからには見て欲しい」ということで、 東今里では「何月何日の何分ごろに地車がここを通るから、 ふるってご参加ください」と、 場所ごとに時間を変えて広告を貼っています。 そして、 祭りのとき地車が通った後ろから係りの人が公告を剥がしていっており、 地車を引きながらその掃除もしているという手際の良さに感心しました。
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境内では奉賛会主催の福引もやっています。 まちの長老らしき方々が座っていました。 景品は「伊勢神宮に参れる」というものでした。 夜店もでていました。 小さなお宮さんなので、 夜店が沢山あると感じたのですが、 昔からここのお祭りに来ている人は、 昔はもっと沢山あったといいます。 戦後直後に警察が夜店を営業している的屋さんの出入りを禁止したことがあったために減ってしまったとのことです。 的屋さんは一度禁止されると来なくなってしまうらしく、 それでも負けずに残った人たちが現在もやっているそうですが、 年々減り続けているそうです。 地車を見るのも楽しいのですが、 子供も大人も沢山来ており、 すごく楽しそうに夜店で遊んでいました。 私自身が子供のころに夜店を楽しんだ記憶があって、 これがなくなってしまうと日本の祭りと言えなくなるんじゃないかと思います。
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熊野大神宮の奉賛会が出している幟です。 祭りの時期になると、 交差点や通行量の多い道などに立てられます。 元々は地車保存会の人が、 地車を見に来てもらうために始めた工夫でしたが、 現在はそのアイデアを受け継いで神社の奉賛会がやっています。
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隣にある西今里村にある大きなクスノキです。 村は少し高台になっていますが、 周りが湿地帯で昔は洪水が多かったそうです。 大きな洪水があった時、 多くの人がこの木に登って命からがら逃げることができたということで、 神社となって祀られています。 伝説では、 その洪水が起きた時に、 どこからともなく地車が流れてきて、 それから地車を引くようになったと地元のおじさんが話してくれました。
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