大阪駅北地区国際コンペを考える
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都市を見る都市、 都市を生きる都市―コラボレーションがつくる―

大阪芸術大学 田端修

 

はじめに

 大阪芸大の田端です。

 佐々木さんの図面はとても明確かつ総合的であり、 素晴らしいと思いました。

 私はもう少し話を絞り、 今回のコンペに応募しようかどうか考えている初期段階で浮かんできた2、 3のアイデアを表明しておきたいと考え、 これを建築・造形的な提案ではなく、 プランニング的方法として提案しようとしました。

 提案するにあたって三つのテーマを設定しました。

 一つ目は、 「普通のまちのつくり方」でまちをつくるということです。 つまり、 ゆっくり時間をかけて、 きちんとした基盤をつくって建築が徐々にできあがっていくという流れであり、 このような緩速的建設に対応できる提案にしたいと考えました。

 二つ目は都市的伝統を活かすことです。 大阪では、 御堂筋のような町並みが揃った地区や船場建築線などに見られるように、 様々なまちづくりを行政と建築主がうまく協調しながら進めてきました。 「コラボレーション」が、 京都や神戸とは違う、 大阪的なまちづくりの大きな特徴であるといえます。

 しかし、 大阪での近年の開発は、 近代的、 現代的なまちをつくらなければならないという強迫観念のもとで、 あまり良いまちができていない感じがします。 人びとがもっと素直にまちを見る、 まちを歩くことのできる考え方を提案しようとしています。

 駅南地区では、 様々な開発が既に終わっているという感じがあります。 そして地下街が縦横無尽に張り巡らされて、 地上が寂しいまちが出来上り、 推奨するに足る景観が地上に表われていません。 駅北地区の場合は、 これを改善し、 地上にもっと質の高い景観をつくることを三つ目のテーマとしました。


提案内容

 提案の具体的な内容としては、 大きく三つ挙げています。

◇提案1「人の集まる名所空間づくり=すぐれた都市骨格の提案」

 ミナミに比べ、 キタにはわんさか人の集まるような楽しさ、 賑わいに溢れた場所がほとんどないように感じます。 そこで、 このような都心的界隈をうまくつくるという提案をしました。

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計画図
 先ほども佐々木さんが言われていましたが、 茶屋町と駅北地区を結ぶ東西軸をもっと強調しようと考えました。 新梅田シティから阪急三番街、 茶屋町をつなぐ東西の軸をきちんと整備し、 まちにベルトをつくることを計画しました。

 東西に都市計画道路が通っていますが、 その北側に立体的な広場をつくることを提案しました。 駅から直接アプローチできるデッキが建物の間を縫って北の方へ上がっていき、 大階段を主軸とした一体的な広場である「北テラス」をつくり出しています。

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模型
 鳴海先生の応募作品の分類の「表現技術の不足」に当たるかと思い、 少しドキッとしていましたが、 学生と一緒に作った模型の写真です。

 広場に突き出した建物がいくつかありますが、 そこには小劇場や芸能寄席のような小さな劇場、 ちょっとしたミュージアムをはめ込むという形で、 広場と文化ゾーンを一体化した空間をつくり出しています。

 きちんとした都市骨格をつくれば、 人もディベロッパーも集まってくるだろうということです。

◇提案2「賑わいを楽しむ場所づくり=コラボレーションによる立体歩廊の誘導・創出」

 ロウズと呼ぶデッキが建築や賑わいの場所づくりと一体化していく方法を考えました。

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ロウズの仕組み
 イギリスの中世都市チェスターでは、 2階部分にお店が並び、 その前の歩廊を歩けるようになっています。 これをロウズと呼びますが、 その仕組みを参考にしています。

 図はわれわれが提案する街区の断面図です。 ロウズの高さは6mで駅前を渡るデッキと同じ高さです。 さらに上に歩く場所をつけることもでき、 2〜3階くらいの高さにお店が広がり、 人が歩くルートが広がっています。

 ロウズの幅は6mくらいを考えていますが、 そのうちの半分を道路上に、 残りの半分は建築側につくっています。 開発途上では建築物や敷地が整っていない段階があるのが普通ですが、 その時でもロウズが成立する必要があります。 そのため、 3mは公共がネットワークとしてつくります。 このようなつくり方はまさにコラボレーションということができるでしょう。

 このような立体的な歩廊は、 向い側のロウズ、 その下の歩道を往きかう人びとが、 お互いを見る場所、 見合う場所となり、 今までとは違うまちの見方を引き出してくると思います。

◇提案3「小さな仕事にも応じる建築づくり=ロウズと連動しつつ『ロの字型建築』を誘導」

 大阪都心の3区(北区、 中央区、 西区)では1人から9人までの小規模事業所の数が全事業所の75.9%、 就業人口では21.2%となっています。 都心部の仕事は大きな事業所と小さな事業所が助け合って成立しています。

 ところが、 近年出来上がっている建物はワンフロアが大きく、 小さいスペースをつくれないものが多くなっています。 そうなると大きな事業所だけが入ってきて、 いろんな人が知恵・アイデアを出し合うような都心的な仕事の場が成立しなくなってしまいます。

 小さな事業所もきちんと仕事ができるような建築をつくらなければならないと思います。 それが、 中庭をもつ接道型の建築であり、 いわゆるロの字型の建築によってこのまちの基本的な部分をつくりだそうという提案です。

 このロの字型の建築は、 駅北地区の南側部分の基本的な街区システムの提案であり、 その北側に先ほど述べた北テラスがあるという構造になっています。

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