21世紀 都市デザインの課題


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<報告>日本の高容積集合住宅のデザイン
 
江川 直樹/現代計画研究所・大阪

1.神戸/キャナルタウン兵庫(街なかの事例)
キャナルタウン兵庫

敷地周辺との関係

関係性を連続させる計画

環境構造としての空間計画

街に開かれた集合住宅地区

街の中を流れるように引き込まれた水路

街の風景になったブリッジ

既成市街地と連続する通り抜けピロティ

鉄道線路沿いの長さのある景観を構成する駐車棟

小さなスケールの鉄のディテール

ボイドな空間性の強い駅前レンガ広場
幕張ベイタウン

囲み型集合住宅による街区構成

街区構成の鳥瞰

街路に面した集合住宅による街なみ

パブリックな街路側とは異なる、静かな中庭環境

水面が静かさを強調するスティーブン・ホール街区
多摩ニュータウン

有機的な全体構成の日本最大の郊外ニュータウン

小さな集合単位の集積によるベルコリーヌ南大沢

有機的な集落のように見えるベルコニーヌ南大沢

JR神戸駅に隣接する、廃止された貨物ヤード跡地の計画であり、市街地の中心に位置する。
計画に際し、この場所の持っている歴史や記憶を探り、場所の持つイメージを連続させることが、この場所の特殊解、界隈性を創りだすと考えた。神戸港の発祥地、「大和田の泊り」から運河が近くまで来ており、貨物ヤードも含めて赤レンガの倉庫や小さな建物が多く、水と、線路の鉄と、赤いレンガが印象的な場所である。
そのうえで、地域全体の中に織り込まれ、全体として開かれた街にすることが重要であると考えた。
線路沿いの細長い敷地なので、その敷地の個性を生かした計画にすることも重要であると考えた。運河を水路として敷地内に引き込み、駅前広場まで連続させることにし、その水路沿いを、住民も市民も、普通の街として通り抜けていくような風景を思い、計画を練った。
建物も、いろんな建物が建ちならぶ、そんな建て方とし、南北に長大な壁を感じさせないように、南は塔状の建物を低層な建物と交互に配し、北側も、建物の際は低くして建ちならぶ基本構造を提示したうえで、何人かの建築家に参加してもらうというマスターアーキテクト方式で、協議を重ねながら設計を進めた。
足元は道や広場、建築の2階までを質感のある本物の赤レンガ、その上に色の薄いレンガタイル、中間部はあっさりとさせ、頂部は様々なラスタータイルという基本構成を示し、極力、周辺の一般敷地の3層から4層ぐらいまでの建物のボリュームに分節した形を浮き出させ、市街地に溶け込むスケールの表出に努めることをルールとした。
一般市街地の道路のつきあたりは、極力ピロティとして、街を歩いていて、運河の水面が見えたり、通り抜けができたりと、市街地との連続性に配慮した。
自走式駐車場棟は、線路と住宅の間に細長く設け、鉄道騒音のバッファーゾーンとするとともに、耐火性能のある鉄の建物として、小さなスケールの集積したイメージ、鉄道沿い長さと連続感のある風景の創出に勤めた。車で家に帰ってきたときの意識上での景観的連続性と、駐車場そのものの明るさ、住棟廊下からの透けた景観の享受など、この鉄の駐車場はいろんな意味で大きな意味を持つ。端部に設けた自走式斜路や、何箇所かに設けたエレベーターシャフトは赤レンガとし、低層部の景観的連続性は確保している。
夕方には線路側に太陽が沈み、ラスター部が時間と共に微妙に色を変え、光り、象徴的な風景を呈する。
駅前広場も、日本には珍しく赤レンガ敷きのボイドな空間で、朝晩の通勤客の人ごみ時との対比が駅のホームからも良く見える、気持ちの良い空間になっている。引き込んだ水路際には、操車場に使われていた鉄材を再利用しているし、広場に設けられた時計は、近くの小学校の生徒と、専門家との協作でつくったものである。
3つの超高層棟は、それぞれ、事業主体の異なるもので、賃貸ゾーン、商業施設と一体的な商業、施設ゾーンの分譲、図書館などの公共施設ゾーンの賃貸というように、事業主体が異なっている。
引き込まれた水路の維持管理は、神戸市と、事業主体で積み立てた基金で維持される。

2.千葉/幕張ベイタウン(郊外市街地の新しい開発事例)
日本の集合住宅は、南面思考が強く、板状の形態となることが多く、いわゆる団地の形態になってしまい、パブリックな市街地になりにくい。ここでは、街路に沿って建ちならぶ住宅、街区を囲むような形を基本形とすることで、集合住宅で街をつくることを目指している。
全体のデザイン調整者(委員会)はもちろん、街区毎に複数の建築家と街区のデザイン調整者がいるというマスターアーキテクト方式を採用している。
中層主体で、縁辺部に高層を配する計画で、中層主体のエリアではヨーロッパ的な気配がする。1階の足元は、メインの通り沿いはできるだけ商業的な施設を配し、にぎわいを表出しようとしている。
事業主体は、街区毎に異なり、建ちならぶ異なる建物で街をつくっていこうという趣旨は、先に紹介したキャナルタウンと同じである。
広大な埋立地であり、近くにはコンベンション施設も多く、海沿いの開放的な雰囲気のする場所で、明るい空のもと、どちらかというと明るく派手目な色彩による分節のデザインが特徴的だ。
外国の建築家も参加しており、スチーブン・ホール街区では、まわりのにぎやかさに対し、端正な雰囲気が特徴的で、色合いの異なる場所性が街には心地よい。

3.東京/多摩ニュータウン ベルコリーヌ南大沢(大規模な郊外住宅地の開発事例)
多摩ニュータウンは、日本で最大の郊外ニュータウン。
駅を中心にして、いくつかの街に分かれているが、幾何学的ではなく、有機的な全体構成になっている。その結果、写真のように、異なる集落が連続するかのように、周辺環境に溶け込むように、やわらかな風景が実現している。
街区毎の建築家だけでなく、離れて全体をつつむかのような塔状建築を担当した建築家もいる。
広大な郊外に開発される、ニュータウン市街地として、わが町意識の感じられる場所性の確保のために、マスターアーキテクト方式が採用され、小さなスケール、分節感、個性の集積によるヒューマンな市街地の実現が実現した。
ベルコリーヌ南大沢は、マスターアーキテクト方式の先駆的事例。

4.終わりに
前日には、動態保存型のすばらしい民族村を見せていただいた。
韓国の美しい風景に溶け込むような、新しい集合住宅市街地の実現を期待している。



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