質疑応答
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司会(前田):
みなさんありがとうございました。 いくつかの話題が提供されましたが、 今回のプロジェクトには報告者以外のJUDIメンバーも何人か参加されていらっしゃいます。 その方々からもご意見をいただきたいと思います。 いかがでしょうか。
私はこのプロジェクトでは途中で逃げた人間なんです。 ですから、 今関わっておられる方々に聞きたいのは、 JUDIでこれだけのことを提案し、 自分たちの作品としてどこまで認めるのかということです。 多分、 最終的にはJUDIがやったと大阪市から言われるでしょうが、 それに対してこれは自分たちの仕事なのだという自覚や責任感はあるのでしょうか。
堀口:
それはできたものが評価されたときに、 ちゃんと説明できるかどうかということになるんじゃないでしょうか。 自分たちでやったことを記録して、 公表することしかないのかという気もします。
僕たちの意識の中ではデザインとして意に添わなかった部分もあるので、 それは意に添わなかったとはっきり言うことが必要ではないでしょうか。
森重:
私は意に添わないことはやらない主義なので、 このプロジェクトから降りたんですが、 みなさんはそれでもやりつづけるのですか。
大阪市は当初、 橋の左右を同じ断面でやると言っていました。 道路の高さがそれぞれ違うのだから、 私は建築的な考え方から道頓堀側と宗右衛門町の断面は違う高さにしたいと提案して、 なぜそうなのかを地元に説明し、 地元も納得してくれたとおもっていたら、 途中でどんでん返しにあってしまいました。 つまり、 自分の考えとは違うことをやらされることに我慢できなかったので、 私は降りたという次第です。
今、 5橋の基本デザインをやらないといけない状況にある中で、 条件が最初の話とは随分変わってきています。 条件がコロコロ変わっていくのに、 それを受け入れて作業していくことについてのわだかまりが私の中にはあります。 ただ私が知りたいのは、 今回のものが出来上がったとき、 JUDIがやりましたと言えるのかどうか。 それが私が今一番危惧しているところです。
堀口:
設計条件、 計画条件が随分変わりましたよね。 私たちは計画条件そのものを提案している部分もありました。 変わったときにどこまで対応するのか。 森重さんが今おっしゃったことは、 計画条件が違うところに決まったことに対して、 どこまで付き合うのかについてメンバーの間で差があった。 条件が良くない方向に変化したので、 もうこれ以上はつき合えないという人と、 その中でもまだしぶとく改善しようという人と、 その個人差が随分とあったと私は思っています。
堤:
設計を進めていく中で条件が変わっていくのは、 普段の仕事でもよくある話です。 我々の事務所が仕事として受注した場合、 対応していかざるを得ないことです。 変更された条件の中で一番いい条件を見つけながら仕事を進めていくと思います。
今回は受けた立場が事務所ではなくJUDIという団体で、 デザイン監修という立場で大阪市の職員たちに物申し、 よりよいものを作っていこうといことが最初の趣旨だったことを考えると、 その責任を果たせなかったという反省点はあります。
ですから、 今後JUDIとして仕事を受ける場合、 どのような立場で、 またどこまでやるのかは難しいところで、 私自身もまだ結論は出せません。
ちょっと内輪の議論になっています。 普通なら民間企業が受ける仕事をJUDIで受けた意図と、 先方の意図についてもう少し説明していただけませんか。
森重:
当初は一コンサルタントが受けていたのですが、 そこの案がデザイン性に欠けていたのです。 それなら、 3、 4社のコラボレーションのデザインでいいものを生み出せないかという相談から始まりました。 JUDIならデザインをやっている人、 ランドスケープをやっている人、 もっと大きく「水都大阪」を考えている人の集まりですから、 JUDIでやってみようじゃないかというのが最初の仕掛けです。
鳴海(大阪大学):
みなさんにお聞きしたいのですが、 戎橋の検討はされたのでしょうか。 戎橋の話が全然出てこないのは片手落ちだと思います。
それと、 これは感想ですが、 公共事業の設計では、 誰が設計したのか分からない状況で、 役所が進めていきますよね。 役所の仕事の仕組みがそうなっているからなのでしょうが、 とても日本的な状況だと思います。 こういった公共事業の設計の場合、 普通は一社が受けるからブラックボックスとなって見えなくなってしまいます。 それが今回のようにいろんな人が関わると明るみに出てしまうんです。
今回のJUDIの関わりは、 今後のお役所仕事にけっこうインパクトを与える可能性があると思います。 その辺を評価できるかどうかをお聞きしたいですね。
ただ、 これがJUDIの作品と言えるかどうかについてはまた別の問題です。 土木の仕事は誰のデザインだと記されることがほとんどありません。 JUDIは仕事をしたけれどもJUDIの作品ではないと紹介される可能性はあります。 もし土木関係の賞をとったら、 大阪市の作品として出る可能性はあるでしょう。
堀口:
戎橋がなぜ話に出なかったかについてお答えします。 最初、 どんな橋にするかという議論があったときに、 コンペをすることだけは決まっていたんです。 パブリックコメントをしてみんなの意見を聞いて、 広くみんなの知恵を得たいということだけが決まっていて、 中身をどうしたいかの要望はほとんどなかったんです。 コンペを行うなら、 我々のメンバーの中からデザインの提案をして下さい、 ということになって我々の提案分ははずれました。 位置づけ論しかやらなかったと記憶しています。
司会:
鳴海先生からもうひとつ、 お役所仕事の中で設計条件の変更も含め、 情報公開されることに意味があるというご指摘と、 完成した姿に対しては作者名として誰の名前が入るのかというご指摘がありました。 これについて、 どなたかコメントをお願いします。
江川:
誰が作ったのかと言われたら、 やはり大阪市ということになるんでしょうね。 JUDIはそれに協力したという立場になるでしょう。 最終判断は全て大阪市がやっています。 ただ、 我々は提案はしますが、 その提案を誰に向かって説得していけばいいのか分からない、 そういう状況はあります。 大きな流れの中で条件が変わるなら、 少しでも良くなるよう努力している気がしますけど。
長谷川:
先ほど森重さんが投げかけた疑問について、 私は大事なことだと受け止めています。 JUDI関西という百人の専門家集団でありながら、 道頓堀の水辺にどう関わるかという最初の詰めの段階でその議論があまりなかったことを反省点としてあげておきたいと思います。
もうひとつパブリックデザインの作品性についてですが、 我々がそれをやりましたということは言えるけれども、 基本的には大阪府・大阪市が実行者で、 我々の名前は協力者として記されることになるでしょう。 それは契約上のシステムですから仕方のないことです。
ただ、 今回私が手がけたのは遊歩道の空間デザインや素材選びでしたが、 どうも気になったのはプロセスについて意志決定権がないことです。 こんなデザインにしたい、 こんな素材がいいと提案し、 説明しても、 後で聞いてみると全然違うものになっていたという話が少なからずありました。
提案を受け取る側がどう判断するかの場面に我々は関われなかったわけで、 我々はかなりのジレンマの中でデザイン監修したのは事実です。 それぞれの専門家がデザインをし監修するからには、 その役割分担と責任を明確にするところからスタートしないと、 頑張ったわりには疑問の残ることになる。 それが今回関わった私の実感ですね。
鳴海:
地元への説明会にも立ち会えないんですか。 役所の人だけが説明するのですか。
長谷川:
そうみたいですね。 私自身は地元の人と顔を合わせて議論をしたことは一度もありません。 あ、 1回だけ「地元の人の話を聞く会」に出席したことがあるぐらいですね。
司会:
話をうかがっていると、 デザインの提案はしても向こうから返事を聞かないまま終わってしまうという気がするのですが。
堀口:
全部が全部そういうわけでもないんです。
もう一度地元との関係を説明すると、 会議は行政と地域団体の間で行われていて、 我々は合意形成の場面では関係のない存在だったのです。 しかし、 地元とのチャンネルが全くなかったわけでもないんです。 遊歩道の断面デザインが決まる前に一度説明会があったときに、 地元の人と意見交換をしたことがあります。
また、 JUDIメンバーである横山あおいさんは同時に地元のミナミまちづくりフォーラムの会員でもあるので、 地元の委員会にも入っておられます。 ですから意見交換の場は間接的にはありましたし、 やろうと思えばできる状況でした。 ただ、 向こうの団体があまりまとまっていないという話でして、 集団対集団の会合は開けませんでした。 一度話し合いの場を設けたかったのですが、 実現しなかったのは残念です。
司会:
もうひとつ、 情報公開についても問題があるようですね。 (長谷川:情報公開とは何を指して言っておられるんですか)
例えば、 今お話があったような提案した内容や、 設計条件がたびたび変わったこと、 提案したことがいつの間にか変更になったことなどの経緯は守秘義務の範囲なのかどうかということですが。
堀口:
個別のこと、 例えばどこのメーカーが受けたとか誰がこんな発言をしたというのは守秘義務だけど、 今言われたプロセスの説明は秘密でも何でもないと、 私は理解しています。
私が気になるのは、 協議や意見を聞きながらどんどん条件が変わり、 デザインも変わり、 その結果、 計画そのものまで変質してしまうことです。 森重さんが指摘されたのはその点で、 計画そのものがダメになったと言うことは政策的な発言なんですよ。 川と建物の関係をどう作って行くかということについて、 今のかたちに落ち着いたことに不満があるのは、 地元の中にもあると思いますよ。
今の土木的な方法論の中で、 一体我々はどこまでさかのぼって提案するのかが極めて曖昧なんです。 私個人の本音としては、 随分無駄なことをしていると思いました。 かなり後ろに戻ってやり直し、 それがさらにやり直しという感じで、 本当にこれが普通なのかと思いました。
仕事柄海外へ出張することが多いのですが、 海外の街並みは本当にデザインを大切にしていると感心するのにひきかえ、 どうして日本のまちはこんなに美しくないんだろうとよく感じます。
今日のお話はこれが日本的なやり方だという風に聞きましたが、 やはりそんなシステムは変えていく必要があると思います。 行政主導ではなく、 デザイナーのみなさんがイニシアチブを持つべきじゃないでしょうか。 その辺はどのようにお考えでしょうか。
今回の橋ももっとデザイン重視で、 江戸情緒あふれるものにするとか。 デザイナーが行政を動かして形にしていく事例が日本にもっとあっていいと思います。
司会:
つまり今回は、 デザイナーが行政を動かすには至っていないとのご批判ですが、 これについてデザイナー側からのコメントはありますか。
長町:
今のお話に少し関わるエピソードがありましたので、 それを紹介します。 今回のプロジェクトではJUDIという専門団体でデザインを考えたからこそ、 問題点を突破できたこともあるんです。
というのは、 こうした公共事業における照明のあり方は、 背の高いライトをいっぱい付けなさいと言われるのが普通です。 それに対して普通は一プランナー、 一デザイナーの立場でデザインを守るために闘うのですが、 今回はJUDIの提案なのでぎりぎりの所で踏ん張っています。 先の報告にあったように15ルクスという異常な照度基準を示されていますが、 実施計画の中ではもっと低い照明の話でまとまっているんです。
スムーズにいったのは、 見識のあるデザイナー達がみんなで監修したからこそできたことだと思います。 そういう意味では、 多くの環境デザイナー達が関わっていく仕事の価値は非常に意味があると、 私は前向きに考えています。
司会:
元気の出る発言でした。
道頓堀という場所柄、 どれだけ、 お店側が参加することができるのかが、 プロジェクトの成否に関わってくると思います。 いいものを作っても回りのお店が
司会:
川辺空間の利用の仕組みについてですね。 どなたかご存知の方はいらっしゃいますか。
堀口:
河川空間は使っていいんですが、 周りに多くの飲食店や店舗があるので特定のお店が使うのは不都合がでると思います。 例えば、 レストランの前で別のレストランを出すわけにはいかないでしょ。 行政と地元の組織が契約するなどの工夫がいると思います。 河川空間は公共空間ですから、 所有権は大阪市にあります。
司会:
利用権はNPOに預けて、 NPOが貸し出しし、 その利益を橋の維持管理費に回すという話も聞きましたが。
森重:
地元でNPOを立ち上げ、 そこと大阪市が契約して借りるという形です。 NPOがどこかに又貸しするんじゃなく、 NPOに参加している人が利用する形で運営します。 その利益で清掃費や電球の維持費が出るといいねという話はしていますが、 実際は細かい所までは決められていないと聞いています。
堀口:
そもそも河川空間では、 飲んだり食べたりの商売ができないと法律で決められています。 特区を申請中で、 それができるようになるという前提で今の話は進んでいるんです。
長谷川:
私が聞いた話では、 NPO団体か第3セクターのような形を市がお膳立てして、 そこを窓口にして一定のルールに基づいて隣接する沿道商店が借りる形になるそうです。 ですから、 各店が勝手に河川で商売を始めるのは、 基本的にはダメだそうです。
今話に出たNPOとは別ですが、 水辺のまち再生プロジェクトというNPOの代表理事をしています。
先ほどの太左衛門橋のデザイン提案についてですが、 出てくるデザインに対して時代性を意識するのかどうかについてうかがいたいと思います。
中村:
私は都市の持つ「場所の匂い」は継承していきたいですが、 それは時代や様式を継承するということではありません。 デザイン的に江戸時代を再現すると伊勢の「おかげ横丁」のようにテーマパーク化してしまいます。 ただ、 匂いは忘れてはいけないと思います。
デザインにはある意味、 時代を超えたスピリットがあると思います。 江戸時代の芝居小屋の提灯や張りぼてが今のネオンの光景に通じているように、 連綿と続くスピリットを受け継いでいきたいと思っています。
木造にすることも時代を感じさせる要素と言えるのかもしれませんが、 ただそれだけじゃないんですよね、 江川先生。
江川:
直接の橋の話ではありませんが、 日本で木の持つ意味は大きいですよね。 本当は橋を舞台にして、 日本の山、 川、 海という国土を考えるきっかけになればいいなあと思っています。 というのも、 今は国土、 特に山が危機です。 私はだからこそ、 日本の木を使って作るべきだと担当の人には話すのですが、 なかなかそれが伝わらないのがもどかしいところです。
今回は火事になったらとかノコギリで切られたらなどの話に終始してしまいましたが、 JUDIとしては今回の経験を踏まえて、 これからも日本の国土につながる話をしていかねばならないとつくづく思うところです。 今すぐ解決できる問題ではありませんが、 あきらめず地道にやっていくしかないでしょうけれど。
私も中村さんと同じで、 時代性じゃなくその場の雰囲気や匂いを重視してデザインしていくことを職業としてやっています。 私自身は公共のデザインもやっていましたが、 その時は自分たちが提案したものを相手も納得し、 双方が理解した上で進むという手法でやっていました。 ところが、 今回はそれが違っていたので私はもうやめますと相手さんにも言いました。 これ以上我慢できないところが正直ありました。 行政からは自分勝手だと思われているようですが、 自分の限界だったと思っています。
JUDIがデザイナーにとっていいと思うのは、 考え方の違いを見方のひとつとして受け止めてもらえることで、 コラボレーションしたことは意味のあることだと思います。 いろんな考え、 いろんな職業の人がいますから、 いい仲間達であると思っています。
司会:
そろそろ締める時間になりましたので、 最後にひとことみなさんからコメントをいただいて終わりたいと思います。
堀口:
今回のプロジェクトではコラボレーションのいいところも悪いところもありましたが、 参加した人にとってはいい刺激になったと私は理解しています。 まあ、 まだ終わったプロジェクトではないので、 どういう風に落ち着くのか分からないところはありますが。
私の本音を言うと、 集団で物事を進めていく時、 難しいのは集団的決断がなかなかできないということです。 しかし、 ねばり強くやっていくしかないので、 一緒にやっている人とはもうしばらく頑張りましょうというしかないです。
長谷川:
今回はどちらかというとネガティブな話が多かったように感じましたが、 しかし今、 長町さんがおっしゃったようにJUDIという専門家集団が提案することで、 個人ではなかなか認知されないことが通ったことも事実です。
いろいろ反省するべき点はありますが、 これからもいろんな場面でJUDIのメンバーはコラボレーションしながら、 積極的にやっていくべきだと思いました。
もうひとつ私たちが関わった時点ではすでに道頓堀川の幅31mのうち両側8.5mを埋めることが決まっていたのですが、 私はこれほど川を埋め立てることは水辺の再生にはならないと言ったのですが。
しかし、 その条件を覆す訳にはいかないということでした。
ではその条件の中でなるべくいいものに近づけることがランドスケープデザイナーの仕事だという気持ちがあり、 参加し、 どんどんと提案を試みました。
いろんな課題は残りましたが、 これでこりごりだということに終わらず、 JUDIの新しいデザイン展開ができるチャンスだったわけですし、 JUDIとして参加できる、 期待されるプロジェクトがあるんだということを今日来た人に知っていただきたいと思います。
堀口:
私も最後にひとこと。 今回参加した人々はとても熱心にやりました。 その分、 報われないことがかなりあったことも事実ですが、 それだけにみなさんの期待や熱意が高かったのだと感じました。
司会:
江川さんの模型なんかすごかったですものね。
では今日のセミナーはこれで終わりたいと思います。 みなさん、 どうもありがとうございました。
JUDIのこのプロジェクトに対する責任感とは
森重(GK設計):
お役所仕事にJUDIが踏み込んだ意義
司会:
もっとデザイン重視で進めてほしい
玄道(歴史街道推進協議会):
どんな団体が川辺空間を利用できるのか
松久(大阪芸大):
相変わらず川に後ろを向いていたら、 無駄な公共事業になってしまいます。 回りのお店は、 どのくらい川辺空間を自由に利用できるのかをお聞きしたいのです
が。 勝手に出入り口を川側にオープンして、 川辺空間を使えるのかどうか。
デザインに時代性を意識するか
中谷:
コラボレーションについて
森重:
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