私たちからは、 これまでお話のあったそれぞれのコンセプトにもとづいた照明デザインについて説明いたします。 今日に至る過程の中では、 照明に関しても熱いディスカッションが繰り返されました。 それをちょっとでも感じていただけたらと思います。
まず私の方からは、 照明計画のコンセプトと最終案に至る過程を説明し、 その後で具体的な内容を田中から説明させていただきます。
我々照明チームがディスカッションに加わったのは、 ちょうど個別案が整って統一案に至ろうというタイミングの時でした。 遊歩道や橋について様々な議論が繰り返されていて、 そこが照明計画のスタートラインになりました。
それについて簡単に申し上げると、
(1)照明計画は完全に作り込んだものを全面に出すのではなく、 年月を重ねながら住民やそこにやってくる人々が関わることによって成長していく照明をJUDIらしい形式のもとでプレゼンしていく。 つまり、 インフラとして完成せずに、 最低限の足元の照明だけ確保しているシンプルさにしておき、 追加発展していく余地を残しておく照明設備を何としてもやっておこうと思いました。 これを一番大事な考え方としました。
(2)時間軸によって明るさを演出する。 夕方から深夜、 深夜から早朝までの2つの時間軸の照明を設定し、 この場所ならではの照明を考えました。 最初に何度も指摘されたように、 道頓堀のネオン、 水面に映るネオンの光はここだけで見られる大事なインフラですので、 橋の照明でそれをつぶさずに人工的な明かりの中に取り込んでいくことが大事だと思いました。
(3)ただ、 橋の照明を人工的な明かりに取り込むとは言っても、 何かアイポイントとしての照明設備が必要になった場合は、 環境エレメント(例えば石積みやウッドデッキなど)と呼応する素材感を重視した照明設備にしたいと思いました。
これらの考え方をスタートラインにして何か違うアイデアが乗せられないかと考えていました。
また大事な場所のコンセプトのひとつとして、 祝祭性、 舞台、 パートタイムなイベント(今だったら若い人たちが踊ったりする出来事とか)が行われる場所というのがありました。 その時の照明はどうあるべきか、 またやってくる人々の姿を影のようになぞれないかということをあれこれ考えながら、 照明計画を進めていきました。
計画を進めつつ、 メンバーと様々なディスカッションを行っていきましたが、 その中で照明のパターンランゲージを決めていこうということになりました。 例えば環境エレメントのひとつである階段の明かりはどうすべきかでは、 点にして踏み面を照らすのか横から照らすのかを考えました。 最初に申し上げたように、 成長するあかりの場に一番近いのはどんな手法なのかをディスカッションいたしました。
またディスカッションの結果、 エレメントを絞り込んでいくことになりました。
まず、 基本的には間接照明で様々な部位を照らし上げることにします。 重要なエレメントとしては石積みがあり堀の復活というイメージを持っていましたので、 それをしっかり照らして目に入ってくるようにしました。 また階段を作って空間の立体性、 石とウッドの素材感の違いを出していますので、 それを分断しないで川に沿った流れを感じさせるためにはどうしたらいいのかなどをディスカッションしました。
別の観点からの問題点については、 樹木のライトアップがありました。 これも白熱した議論がなされ、 何でもかんでもライトアップしてしまうのはいやだという意見も随分出ました。 ですから樹木のライトアップについては悩んだところですが、 結果としては樹木に当たる光を環境光(場の明るさ感に寄与する)のひとつとしてとらえて生かしていくことになりました。
なお、 照明計画全体を通して、 最低照度との闘いが予想されました。 時間によってどこを明るくしておくかを考えようという意見が出まして、 常に明るくして歩行のための空間だと言い切れる場所とそうではない環境、 つまり後から光を足すことのできる場所とを整理していきました。
舞台部分についてですが、 当初は舞台感を出すために、 例えば川岸から橋に向かってのスポットライトの効果を出しましょうなどの案を出してみたのですが、 それは案としてはもうひとつだなとなり、 結局、 舞台の結界だけを表すものをひとつ置いてそれをアクセントにすることにしました。 ここでは形で遊ぶのではなく、 素材感が前面に出る物体にしようということが最終案になっています。 5 照明計画
長町志穂&田中稔(松下電工)
コンセプトの検討
長町:
照明の考え方 |
また橋上の照明は防犯性のほかライトアップ効果を阻害しないために光の高さや配光、 輝度の加減を検討しています。
階段については段差の視認性を確保するため、 遊歩道との関連性を持たせることに気を配りました。
橋下の照明は、 遊歩道との連続性と共に防犯性が求められますので、 上部からの補助照明を付加していくことを考えています。
CGシュミレーション |
例えば、 先ほど模型で見た橋上の照明については、 天井を照らすだけでちゃんと照度も防犯性も確保できるという検討をしています。 上部の照明のあり方も、 高い照明、 低い照明といろいろ考えられますが、 外から見てライトアップを阻害しない照明はどちらなのかを考えていきたいと思います。
これ以外にも段差の照明がきちんととれているか、 ライトアップは建物中心でいくか視認性中心でいくかなども、 今は比較検討しつつ進めているところです。
ですから、 照明計画もまだ流動的なところがありまして、 このような形で進んでいます。