横山:
池田さんのお店は和食の店ですが、 遊歩道が開設され川に向かってお店が顔を向けるとなるとそれは、 和食の店にとってどういうことなのかなど、 そうした自店のありかたなどのお話もまた後でしていただけたらと思います。
さて、 最後にお話しいただく宗右衛門町商店会事務局の高見さんは、 学生の頃から宗右衛門町のにぎわい作りをされてきました。 その頃から街の変化を見てこられた高見さんの視点から今の現状についてお話しいただきます。
高見:
私がこの街に来るきっかけとなったのは、 大学生の時ある商店のご主人が自分の厄年に厄除けの餅振る舞いを相合橋でやるからと、 その手伝いに駆り出されたことです。 なかなか粋なことをやる人がいるものだと思い、 それがこの街に関わった最初の出来事になりました。
今はもうなくなってしまいましたが、 料亭いろはなど有名店の方が割烹着のままそうした餅振る舞いに参加するのが当たり前のような雰囲気で、 街にはまだ粋なものが残っていました。
また、 その頃は商店会ではなく町会という組織でして、 商店の方と街にお住まいの方が一緒になって街を形成して、 お祭りなども盛り上げていました。 有名なお祭りでは今宮戎さんの宝恵駕篭(ほえかご)行列をされたり、 共同事業としてアーチや街路灯を作っていました。 しかし、 伝統的なことだけやっていたのでは街の活性化は図れない、 もっと若い世代が活躍できる場を作ろうということで、 町会から宗右衛門町商店会に組織替えがなされました。 これは名の通り、 事業者が中心になってできたもので、 平成7年に結成されました。 その頃から私もお祭りなどで宗右衛門町に関わることが多くなり、 それが高じて独立し、 広告企画の会社をやったりしながら街の一員として宗右衛門町のお手伝いをさせていただいています。
当初私が来た頃はまだ街にも「よし、 やろう」という気運があったのですが、 ちょうど町会から商店会に変わる頃から宗右衛門町のイメージが急激に変わってきたようです。 古くからの人に聞きますと「昔は宗右衛門町にお店や本店があるのがステイタスやったんやけど、 もうアカンな」という話がよく出てきます。 そんな話が出始めたのが平成7年から5年ほどの間です。
その頃から風俗店が続々と出来始めました。 もちろん突然出来たわけではなく、 昔は2階に店があり、 客もこっそりと出入りするようになっていたはずですが、 いつの間にか堂々と1階で営業するようになっています。 つまり、 表通りで下心丸出しのやり取りが平気で交わされるようになったんです。 そんな光景が目立つようになり、 今度はそうした風俗の無料紹介所まで登場するようになりました。 これは20年前には考えられなかったことで、 多分新たな産業ではないかと思います。
これがこの7年間の大きな変化で、 とにかく風俗は1階を目指して開業しています。 空き店舗が出ると即座に買い取り、 1階は風俗店か無料紹介所になっていく。 一説によると、 20万円の家賃の所へ30万払うから風俗にしろと迫られたお店もあるようです。 こうなってくると、 空き店舗を抱えるビルのオーナーさんは風俗を入れざるを得ない状況になってしまって、 どんどん風俗が増えていくという状況が続いています。
ここ数年、 道頓堀川の水辺整備事業の影響で、 ミナミの商店街の横のつながりも出来ています。 「ウチの商店街ではこんなことを考えている」というお話をたくさん聞く中で、 「宗右衛門町は何とかならないのか、 無茶苦茶になっているぞ」と指摘されます。 ただ、 心斎橋筋や戎橋のように1店舗1ビルのような商店街と比べますと、 宗右衛門町商店会はテナントの数が異常に多いように見えるのです。 宗右衛門町だけで約500のテナントがあります。 ですから地域の意見ひとつまとめるにも、 大変骨の折れる事業になるだろうと予想されます。
産業構造そのものが他の地域と比べて、 特異なものになりつつありますので、 よそが閉店する頃に一番繁盛するという形になっています。 12時過ぎても客引きがウロウロしている状況ですので、 まちづくりとひとくちに言ってもどういう街にしたいのかというコンセプト、 方向性づくりが難しいのです。 今この街で営業しているみなさんに協力してもらって、 長く続けられるまちづくりへ賛同いただきたいと思案しております。
昔の風情のあるまちを取り戻したいという人もたくさんおられますし、 いやもう新しい産業構造でまちを作り直すべきだと言われる人もたくさんおられます。 この辺の調整ができ、 コンセンサスがとれないと双方がっかりすることになります。
ここ数年の間に何とか次の方向性を考え、 宗右衛門町が裏通りにならないよう、 お客さんのにぎわいがあるまちづくりにしていきたいと思っています。
宗右衛門町のコンセプト作りの難しさ
宗右衛門町商店会事務局 高見幸寿(株式会社ソウルダム)
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