道頓堀川プロジェクトに関し、 JUDIメンバーで議論していく中で、 宗右衛門町については今までビルの裏側だった所が表側になる可能性があると予測しました。 そうなったとき、 今のように風俗だらけの店では一般の方は行きにくくなるのは容易に想像できます。
今、 宗右衛門町を裏通りにしないようにとの話が出ましたが、 昼間は車が通っている通りですから裏通りになってしまうのは仕方のないことだと思います。 では夜はどうか。 夜は多分、 裏と表の性格を区別して使う可能性があるのではないかと思います。 つまり、 遊歩道はカップルで歩けるけれど、 北側は男性だけが歩くという使い分けが出てきそうな気が今はしています。
どうするかについてですが、 私自身は風俗の無料案内所がもっとも効率のいいビジネスであるうちは恐らくなくならないだろうと考えています。 規制でそれをなくしていくのは、 この街の振る舞い方に多分合わないでしょう。 むしろ、 宗右衛門町に必要なのは風俗に負けない付加価値の高い産業じゃないでしょうか。 そういうアプローチをしない限り、 風俗をただなくせばいいという方向だけでは街は生き返らないと思うのですが。
私は宗右衛門町によく遊びに来ますが、 やはり一人では歩けないのが実情です。 ここ5年くらいで急激に歩きにくくなった感じがします。 風俗店がだんだん増えているように感じますが、 現在、 宗右衛門町には何軒くらい入っているのですか。
江崎:
宗右衛門町だけのデータがないので正確には把握できていませんが、 間違いなく数百軒はあると思います。
大矢:
風俗店とは、 直接対話ができる状態にあるのでしょうか。
江崎:
商店会としてはいつも風俗店と仲良く話をしたいというスタンスを持っているのですが、 風俗店の方が寄り付いてきません。 宗右衛門町商店会は、 風俗店の集中するような繁華街の商店会にしては稀に見る仲の良さです。 風俗店の人たちもなんとか商店会に引き込んで、 少なくとも路上での客引きを遠慮してもらえないかと思うのですが実現しません。 商店会への入会すらしてくれそうにありませんので、 話し合いはなかなか難しいです。
大矢:
風俗店をまちづくりに引き込んでいくシステム作りを考えなければならないと思います。
私は京都に住んでおり、 京都市民としてまちづくりに参加しています。 規模が少し違いますが、 京都の木屋町筋でも小学校が廃校になったため風営法の規制が外れて風俗店が進出してきています。 地元の方は「風営法の知識があれば小さな図書館だけでも残して規制を残したのに」と言っています。
そうは言っても、 まだ木屋町筋は楽しいと思います。 それは住んでいる人が存在感を示しているからだと思います。 例えば、 夏には高瀬川沿いで地蔵盆をやっており、 こんなところに結構子どもがいたのだと分かります。 また、 秀吉の時代にお寺が集中して建てられたため、 お坊さんが多い地域です。 お坊さんには地域のことに関心がある人が多く、 高瀬川を掃除したり、 店の若い人を集めて坂本龍馬を検証する「龍馬会」を作って土佐の小学生との交流を図ったりもしています。
風俗店だけだと単一文化のまちだと見られてしまいます。 風俗店もあるけれど、 こんなに頑張って色々なことをやっているのだ、 こんなに楽しい生活や文化があるのだ、 ということを住民がアピールしていくことが重要だと思います。 その点では、 おかみさんの会が街のテーマ曲を録音されたCDを出されたことは非常に良いことだと思います。
このように、 どんどん声を出して、 できればマスコミにも取り上げてもらっていけば、 風俗のイメージを逆手にとってまちを豊かに見せることもできるのではないかと思います。
皆さんのお話を聞いて思いついたことを話させてもらいます。
私は学生時代にお酒を飲むところをピンからキリまで知りたいと思い、 京都でそれを実践しました。 ですから、 外から見ただけでどういう店かということはだいたい分かります。 そして、 どんなまちに行っても時間を30分与えられると自分で気に入った店を発見できるという能力を身に付けました。 時々この界隈にも来ますが、 残念ながら良い店はこの界隈から外れたところにしかないので、 探しようがないのが現状です。 少し前にはこの界隈にもあったと記憶しておりますが、 急激に少なくなってきたようです。
宗右衛門町が裏通りになるという話がありましたが、 裏通りにしてしまう何らかの要因があるのだと思います。 その理由は、 先ほど話題に出たテナント料のように、 どちらかというと簡単な理由だと思います。
それにどこかで歯止めをかければ、 別のところに裏通りができるわけで、 別にそんなに難しい問題ではないのです。 つまり、 これはビル経営上の単純な問題である可能性があるのです。
ビルのオーナーに「このまちのビルのオーナーはこのようなことをしなければならない」という志があれば、 風俗店に店を貸したりしないと思います。 風俗店に貸しているオーナーは、 宗右衛門町に関心がないのではないかと思います。 風俗店が増えているという現象は、 ただお金だけで考えている人が沢山いるということの証明になっているのだと思います。 では、 それをどうしたら良いのかというと名案はないのですが、 その前提として二つのことをする必要があると思います。
風俗という言葉は、 例えば「バリ島の風俗」というように従来はそこの暮らしぶりを風俗と言ったわけです。 風営法ができ、 そこで風俗という言葉が使われたのがまずかったと思います。
それはそれとして、 風俗には以前からニーズもあれば商売もありましたし、 そのような商売の文化があることは当然だと思います。 しかし、 なりふり構わずやってもいいということはありえないと思います。 風俗店の経営がなりふり構わずやるようになってきたのは、 ここ10年くらいだと思います。 なりふり構わずやることにも理由があるのだと思います。 その理由が一体何なのかを知らなければならないと思います。
現在、 どのような商売でもなりふり構わずやりたい人が増えているようです。 商売には商売のスタイルがあって、 皆さんは「こういう商売ならこういうやり方」という見識があって商売をされていると思いますが、 そのような見識がなくなってきていること自体に問題があります。 しかし、 それが問題であり商売として具合が悪いと主張してもらわないと誰も気付かないのです。
景気の問題やテナント経営の問題も背景にあると思います。 どうしてなりふり構わずやるようになったのかというメカニズムを理解して、 相手を知った上で取り掛からなければならないと思います。 一つ目としては、 このような風俗店のメカニズムを知ることができているのかということを伺いたいと思います。
二つ目は、 同じような問題で悩んできたところは日本中に沢山あるということです。 例えば、 京都の先斗町が一時期非常に危なかったのですが、 ある時期から風俗店に店を貸さなくなったため変わってきました。 先般の新聞によると、 歌舞伎町でもこのようなことに取り組むと言い出したらしいのです。 世界中でも同様の問題は相当あり、 ニューヨークのタイムズスクエアもマフィアなどの問題で、 大変なところでしたが段々良くなっています。 また、 ドイツのフランクフルトでも駅の近くがポルノショップなどが集中し大変な状態でしたが段々改善されてきました。
そのようなことに取り組んで成功した町や、 いくらやろうとしてもできなかった町など、 先輩の町は沢山あると思います。 このような他の地域での取り組みをもっと知った方が良いのではないかと思います。
横山:
色々なまちの取り組みについては勉強されているのでしょうか。
岡本:
宗右衛門町のまちづくりをどうしようかということを考え始めたばかりで、 大阪市や官公庁関係と協力しながらなんとかスタートしようというところです。 まだ事例を勉強しに行っていません。 また、 具体的に成功した町とお話をしたことはありません。 これからどういう形で勉強してまとめていったら良いだろうかと考えている段階です。
相手を知るということで、 風俗店のメカニズムは研究されているのでしょうか。
江崎:
後学のために、 数件の風俗店に行ってきました。 どのような商売をしているか知っている人もいるかと思いますが、 驚くべき商売をしています。 しかし、 一応営業しているので合法なのでしょう。 遊びですから、 ちょっと危うい雰囲気がなかったら面白くないですし、 別に風俗店を否定しているわけではありません。
しかし、 1階で堂々と経営し、 道の中央まで出てきて卑猥な言葉で客引きをすることはやめてもらいたいです。 性産業ですのでもう少し恥ずかしげにひっそりとやってもらいたいのです。
しかし、 今の日本は経済性が優先しており、 テナントビルはお金を沢山出す方に店を貸すため、 需要が沢山ある方が勝つという構造になっています。 このような経済的背景があるため、 経済性だけで対策を考えることは無理ではないかと思います。 やはり行政と一体となって規制を敷かなければ無理なのではないかと思います。 何かそのあたりで良い方法があれば教えてもらいたいと思います。
商店会ができた当時には、 カラー舗装の実施に対する同意書をビルオーナーからももらうことができ、 ある程度連絡が付き、 話ができる状況でした。 現在は、 企業化され、 ビル管理を専門にやっているところが増えていますが、 ビルオーナーの8割から9割は話ができる状態だと思います。
また、 先ほどの無料紹介所も含めて風俗店についても、 店の店長さんやスタッフは顔が見えており、 話もしています。 しかし、 その後ろの店のオーナーはどこにいるのかは全く分からない状況です。
3ヶ月おきに店長は替わるけれども、 経営の系列は同じだということを小耳に挟みました。 これは多分税金逃れなどの理由があるのでしょう。 そのような状態で経営されているので、 例えば、 店の人に「商店会に入ってください」と言うと「分かりました。 聞いときます」と返事をしてくれますが、 誰に聞けば良いのか分からないという状況になっています。
風俗店の90%くらいがこのような状況にあると思います。 逆に、 オーナーが分かる店は反応があって、 例えば無料紹介所でも商店会に入会してもらえるところが何軒かありますし、 ちゃんと話をすると街路灯に名前を挙げてもらえたり、 総会への出席の返事をもらえたりもしています。
しかし、 そういう人たちの構造を勉強し、 要求をしていく先がちゃんと見えているのかという問題で言うと、 ここ数年このような状況になっているため、 できれば官公庁などとの話の中で、 なんらかの規制や対話の場所を無理矢理にでもつくってもらわないと、 話すことすらなかなか難しいという状況にあります。
岸田さん、 今までのお話を聞いて、 何かアイデアやご意見はありませんか。
岸田:
大阪人でありながら、 これまで宗右衛門町には縁がなかったなと思います。 大学生の頃は高い店が多くて関係ありませんでしたし、 社会人になってからはなんとなく怖いというイメージがあって寄り付きませんでした。
都市がバランスを取りながら発展していく上で、 やはりどこかに風俗店が必要なのではないかと思います。 かつて色町だった宗右衛門町に風俗店が集まってくる土壌があり、 ミナミ全域の中で宗右衛門町がその役割を担うことになってしまったのだと思います。 ここが風俗店を排除すると、 代わりに風俗店が増えてしまう場所が生まれるものなのでしょう。
多くの商店街が衰退している中で、 風俗店ではあるけれど500店近くの店が次々と高い家賃で店を借りてくれるということは、 ある意味、 宗右衛門町にはものすごいポテンシャルがあるからだとも思います。 そのポテンシャルをいかにプラスの方向に向けるかということをさっきから考えていました。
答えは見つかってませんが、 やはり、 風俗店を排除していく方向ではなく、 共存していく方向を探していかざるを得ないのかと思います。
その上で、 宗右衛門町という町名こそがこの町の大きな財産であり、 この特徴ある町名を活かしていく方法はないのかなと思ったりしています。
風俗側の立場で、 なぜ宗右衛門町に立地するのかを考えてみたのですが、 要するに集積のメリットがあるからです。 刹那的に事業をやっている業者は、 いわゆるまちづくりには全くなじまない人たちで、 それを引っ張り込んで一緒にまちづくりしましょうというのは無理だと思います。
先ほど規制の話がありましたが、 このようにしてくださいと言って要求を聞いてもらうという形にしないとだめだと思います。 需要がある限りどこかに行くわけで、 行き先ができた時にはじめて出て行くのだと思います。
昨日、 三宮を歩いていたのですが、 生田新道のところで随分客引きが出ていました。 以前は出ていなかったと思います。 新しい集積のメリットのありそうなところを見つけて荒らしていくという感じです。 需要があるのだから仕方ないのかもしれません。 多分役所に期待してもだめだと思います。 このようにして欲しいということを役所に要求していく必要があると思います。
風俗営業の取り締まり規制に話題が集中しがちなのですが、 尼崎市でも最近風俗店の立地を規制する地区指定をしているように、 新たに立地する風俗店を規制するのは単なる技術的な問題にすぎないと思います。
重要なのは、 ビルのオーナーを含めた商店会の方々の間で、 まちづくりの目標を共有化することだと思います。 風俗店が大手を振って営業しているのではなく、 色々な人が歩けて、 カップルでも来れるまちが良いなどという目標を共有することとがまず必要だと思います。
その上で、 その目標をPRしていき、 風俗店のオーナーが新たに宗右衛門町に出店しようと考えにくいような状況をつくっていくことが大切だと思います。 あとは技術の問題で、 それは他の事例もあるのでなんとかなると思います。
通りを歩きにくいことがストレスになるため、 普通に歩いていて客足が遠退くということがあるのではないかと思います。 そういう意味で、 まちのゆとりがないなという気がします。 ゆっくり歩ける、 ほっこり歩けるという気分がないような気がします。 30年近く大阪に住んでいますが、 20年前の宗右衛門町は車も多かったのですが、 酔っ払ってうろうろしていても安心できました。 しかし、 今は看板だけでなく車の通り方も荒っぽいし、 もっとその辺は色々な工夫ができるのではないかと思います。
風俗店との共存共栄は可能か
規制で風俗を追い出すのは無理
堀口(アルパック):
風俗店との付き合いは可能か
大矢:
住んでいる人がいるか、 いないか
中村:
相手を知ること
鳴海:
成功事例を知ること
鳴海:
やはり経済性だけで対策を考えるのは無理
横山:
風俗店のオーナーと話せない
高見:
宗右衛門町のポテンシャル
横山:
風俗店からみた集積のメリット
難波:
目標の共有化
堀口:
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