海外建築家の日本での仕事
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シーザー・ペリ&アソシエーツジャパンのスタンス

 

日本での軌跡

 シーザー・ペリの日本事務所が設立されたのは12年前です。 私は大阪生まれの大阪育ちの人間ですが、 日本事務所を立ち上げる際にスタッフを募集していたので、 それに応募して以来ここのスタッフとして働いています。 日本事務所の所長である光井はイェール大学大学院在学以来のペリの弟子としてずっとアメリカで仕事をしていたのですが、 日本事務所を立ち上げることになって初めて日本で仕事をすることになりました。

 事務所をスタートさせた頃の仕事が福岡のシーホーク・ホテルとNTT新宿本社ビルです。 これらの仕事はプロジェクトごとの仕事ですから、 続かなければ日本事務所をやめたらいいという程度でしたが、 この国立国際美術館の提案競技(公募型プロポーザル)が1995年8月にあり、 それを獲ったことが大きな転機になりました。

 今にして思うと3人しかいない事務所でよく獲れたと思うのですが、 安藤さん、 黒川さん、 佐藤総合さん、 日建設計、 坂倉事務所さんなどそうそうたる顔ぶれの中から我々の案を選定していただきました。 それを皮切りに、 それ以外の仕事もいろいろさせていただくことになりました。 私自身も東京や福岡など忙しく動き回っていたのですが、 2年前に大阪事務所を構えたことで、 やっと大阪に戻ってきました。

 私が大阪に戻ってきたのは10年ぶりなのですが、 確かにこの辺りはずいぶんと変わったと思います。 仕事では大阪に良く来ていて知っていたつもりですが、 いざ住んでみるとその変貌を実感した次第です。


勝ちを意識しすぎると……

 では改めて、 美術館を中心に話を進めていきたいと思います。

 今日のセミナーでは「ペリ事務所の日本での戦略」「日本で仕事を行う場合の課題」「プロジェクト紹介」の三つを中心に話せと言われています。 「戦略」という言葉を使うととても生々しい感じがしてしまいますが、 確かに我々はプロポーザルやコンペで仕事を取ることが多いので、 「勝つための仕事」を毎日考えているところはあります。

 ただ個人的な実感として言うと、 勝ちを意識しすぎると勝てないものなんです。 そのプロジェクトなり建築がどうあるべきかを根本から考えてやらないと勝てないものなんだと、 最近つくづく思います。 ちなみに私がトライしたコンペは今まで50いくつかありますが、 勝ったのは五つぐらいです。 それでも勝率としては良い方だと言われますが、 まさに安藤忠雄さんの言う「連戦連敗」の状況です。

 私たちの事務所のポリシーを紹介すると、 ペリ自身がいつも言っていることですが「建築は建築家より重要で、 都市は建築よりもっと重要、 そして人の存在は一番重要」ということです。 つまり、 そこに住む人や使う人など、 人の存在を常に考えながら仕事をしていくことをペリは重要視しています。 ですから日本のスタッフも当然この思想に賛同しており、 全てのプロジェクトにおいてこのことを考えながら仕事をしています。 この考えを基本において、 それ以外のことは自然体でやっているのが我々の事務所の姿勢でしょう。

 では、 その思想をどう具体的に国立国際美術館で実践しているかをお話ししていきます。

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