熊野古道で探る歴史と向き合う街とは、癒しの風景とは
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課題

 

 最後に地方都市における都市環境デザインにおける課題として以下の2点を挙げさせてもらいます。


計画の実現性

 良い環境を守っていこうと、 デザインや計画などを考えても、 実際に建設される段階ではなかなか実現されない場合が多くあります。

 和歌山県橋本市も歴史街道のモデル地区であり、 田辺市と同様のスタディをして報告書を作成しました。 橋本市の中心を流れる橋本川にかかる橋の改修工事の際、 由緒がある橋なので、 できるだけ歴史的な雰囲気を残したデザインで改修するという報告書が出来上がりました。 しかし、 事業を発注するときに、 そのような話は一気にどこかにいってしまったという話があります。

 これは、 地元経済の振興のために地元に工事を流していこうと、 分割発注したことが大きな要因となっています。 分割発注すると、 ちょうど橋のところを担当させられる業者にとっては、 事業資金的な余裕がなく、 そんなことは考えてはおれないということで、 通り一遍の橋がつくられました。

 このように、 計画で位置付けをしても実現するかどうかは工事の発注のあり方と深く関係してきます。 できるだけ地元業者を使うために細かく工事を発注する仕組みでは限界があるのかと思われます。

 分割事業発注ではそのように大きくものごとを考えていくほどの事業資金的余裕がないため、 できるだけ小さな単位の工事で利を出していかなければならない。 利が出る形でしか工事が実現していかないのです。 このようなことをいかに改善していくかは、 具体的な名案はありませんが、 よくあることだと思います。


地域資源の活用方法

 歴史・環境の保全と活用を両立させる工夫をしていかなければなりません。

 現在も非常に苦労して天神崎の土地を買い取っていますが、 買い取った土地が良い状態であるかというと、 全くそうではありません。 天神崎の今後の方向性についての考え方が明確になっていないのです。

 ひとつは開発を防ぐために買い取ったのだからできるだけ自然を残していくというものです。 しかし、 これでは普通の小さな丘が景色よく残っているという感じだけで、 観光客が行ってもこれが有名な天神崎ということは全然見えてきません。 駐車場は少し整備されていますが、 人々が何かを学ぶような状況にはまだなっていないのです。 もう少し整備する方法もあるのではないかということです。 もちろん大型バスが乗り入れてくるようなことは考えてはいけないと思います。 しかし、 もっと別の整備方法があると思います。

 例えば、 田辺市の奇絶峡やひき岩群も景色の良いところです。 そのため、 観光客に来て欲しいのですが、 そうかといって沢山来られるのは困るということです。

 このような状況に対処するためには、 限定的利用が一番良い方法だと思います。 しかし、 どのように限定的にするのかなど、 具体的な仕組みとしての検討も進んでいませんし、 運用できるような体制にもなっていません。 予約制にして、 駐車場は離れた場所に設けて、 駐車場からの交通手段は地元が提供するという仕組みも考えられます。 しかし、 それをどこが世話していくかということも、 今後考えていかなければなりません。

 田辺には非常に良い地域資源が沢山あります。 しかし、 これらが生き生きとして地域の人たちに活用されているかというと、 それはまだまだ問題が多いという状況です。

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