熊野古道で探る歴史と向き合う街とは、癒しの風景とは
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中心市街地の再生・整備

 

 地方都市において、 そのようなエネルギーを働かせるための具体的な一歩として何ができるのでしょうか。

 まず考えられることは、 中心市街地をもう少し魅力的にしていくということです。 固有の地域資源も沢山あり、 現在埋もれている資源も沢山あると思います。 それを掘り起こしていく必要があると思います。 しかし、 このことだけでは中心市街地の魅力化を進めるための動きは出来難いと思います。 一般的には、 地方都市の中心部は密集市街地であり、 人口も郊外化して少なくなっているためです。

 このような中で、 中心市街地での動きをつくるテーマとして、 田辺市の動きはひとつの良い事例であると思います。 田辺市では中心市街地を活性化するために、 「味光路」のネーミングのもとでの飲食街整備やアオイ地区、 銀座地区での沿道型土地区画整理事業などが行なわれてきました。


味光路

 
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味光路案内図
 
 飲食街の環境整備事業として行なわれた「味光路」のイラストマップです。 街路のペーブメントを整備して、 光のケーブルを地中に埋め込み、 夜間に色々な色が出るようにしています。 また、 サインのデザインなども行ない、 街の魅力化が図られています。


沿道区画整理街路事業

 
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田辺駅周辺商業業務拠点地区位置図(出典:田辺市『田辺市特定商業集積整備基本構想・資料』1996年)
 
 点線で囲まれた部分が、 重点的に商業集積に取り組んでいこうという田辺駅周辺商業拠点地区です。 この地区は、 旧市街地部に位置しており、 戦災も受けていないため、 昔からの道路復員、 道路線形となっています。 そこに少し広い道路が欲しいと言うことで、 街路整備を行なうことになりました。

 しかし、 街路整備を単独事業で行なうと、 街路にあたるところの店舗だけ買収されて立ち退かされ、 他の市街地がそのまま残ってしまいます。 そこで、 協議した結果、 沿道区画整理街路事業を行なうことになりました。

 したがって、 沿道区画整理街路事業を用いることにより、 事業施行区内の敷地を整序化し、 幹線道路に面しない住民も便益に応じて負担し、 従前の権利者が全てもとの場所で商売できるようになりました。 これはなかなか良い判断だと思いますが、 そこまで至るのには随分時間がかかりました。

 

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2地区の沿道区画整理街路事業の概要
 
 アオイ地区と銀座地区の沿道区画整理街路事業の概要です。 事業規模は大都市の事業に比べると非常に小規模です。

 地方都市の中心部では市街地を整備する動きがほとんどありません。 そのため、 このような事業は非常にインパクトがあり、 都市環境デザインに対する理解と支持を得るための契機としては非常に期待できると考えています。

 現在、 事業は2箇所について完了しており、 もう1箇所で事業を継続しています。


地域への影響

 沿道区画整理街路事業が地域に与えるインパクト及び新しい動きを調査しました。

 

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営業年数と改造の有無
 
 沿道店舗が事業を契機に店舗の整備・改造をしたかどうかを尋ねたものです。 店舗を設置してからの経過年数で区分しています。 その結果、 昔からある店舗で改造したところが多いことが分かり、 この点では中心市街地の店舗にインパクトを与えていると言えます。 また、 事業後立地した店舗も11店あり、 多少の影響はあったと思われます。

 

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整備事業後の評価
 
 各地区の商店主と来街者に事業の評価を尋ねた結果です。 来街者はあまり高く評価しておらず、 「商店の魅力が足りない」「楽しむ施設が少ない」「駐車スペースが少ない」など、 まだまだ不満はあるようです。 しかし、 商店主は各地区とも概ね良いと回答しており、 商店主にはひとつの前進として評価されていると言えます。

 しかし、 この事業がもう少し発展して、 田辺市中心部の新しい都市環境デザインの起爆剤となるためには、 まだ大きな課題が残っています。 それは、 中心市街地で店の改造をしても、 人口の動きは郊外へ向かったままであり、 中心部へ人が戻ってきていないことです。

 中心部にもう少し人が住めるような、 住みたくなるような魅力的なものをつくる必要があると思います。 店舗だけを魅力的にしても、 中心部が魅力的になるとは言えません。 中心部を魅力的にする別の方法を考えていく必要があると思います。

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