江川:
以上が、 皆さんの意見を簡略化したものです。
実はそうではない、 もっと違う思いがあって書いたという方もいるかと思いますので、 個別に意見を聞いていこうと思います。
照明はストリートファニチュアの一つでありながら、 電気設備という捉え方をされるため、 他の景観材と別のステージで決定されています。 そのため、 自分たちが納めたものが、 ちゃんとコーディネートされているのか常に不安が残る状態です。 我々は商品開発をする中で、 その他のストリートファニチュアと機能を複合化したいと思うのですが、 なかなか実現できません。 各メーカーとも専門領域を一歩踏み出すと知識もノウハウもないことが原因だと思われます。
JUDIが第三者的な立場でコーディネートしてもらえれば、 メーカー間のコラボレーションも実現するのではないかと思います。
江川:
研究会のように、 メーカー間のコラボレーションができるような場をつくって欲しいということですね。
GK設計などは景観的に非常に良いものをつくられていると思います。 しかし、 10年後に修理しなければならない時、 特注品なのでコストがかかってしまい、 また役所も管理にお金をかけられないため、 放置されている現場もあります。
つまり、 管理の必要性をデザインビジネスの中に組み込み、 景観美を持続させることを前提に設計していく必要があると思います。
一つ目は、 某ゼネコンから、 舗装材料などはデザイナーが使いやすいようなデザイン余地のある製品を開発してはどうかという提案を受けたのですが、 JUDIがメーカーに対してそのような製品の開発を勧めていかれてはどうかと思いました。
二つ目は、 環境やリサイクルはビジネスにならないと言われていましたが、 現在は大きなビジネスとなっています。 実際、 景観は良くなってきていると思いますし、 ビジネスになるのではないかと思います。 そのようなビジネスモデルをJUDIでつくってはどうかと思いました。
江川:
ビジネスの視点なしに景観を良くしようと言ってもダメだという意味もあるかと思います。
ものがつくられる過程は恐らくどの会社も同じだと思うのですが、 デザイナーや商品企画の担当者の文化度が高くなければ良いものはつくれないと思います。 各メーカーがお金を出して窓口をつくり、 商品コンサルをしていくことにより、 ベーシックな景観デザインの思想をメーカーの開発者が身につけていく必要があると思います。
また、 実際に決める側の意識を変えていく必要もあると感じています。 行政の電気の担当者に会うと、 昭和40年代と同じ話をしなければならないという現状があります。 メーカー側も窓口をつくり、 行政もやりませんかというような、 小さな活動から始めていかなければと思います。 そうすれば、 ひとつひとつのレベルが上がり、 全体としても質の高い景観になるのではないかと思いました。
評価としては、 「JUDI GOOD DESIGN 賞」のようなものをつくっても良いのではないかと思います。
江川:
JUDI大賞というのはありますが、 「JUDI GOOD DESIGN賞」というのも良いかと思います。 勉強会に関しては、 積極的に呼ばれないと参加しないというところがあると思います。 気楽に行けるような勉強会を増やしていくべきだという意味もあると思います。
まちづくりで住民がデザイン、 材質、 色などを選ぶということも起きてきます。 この場合、 まず協議会などで共有する抽象的な景観イメージなどがあるわけです。 例えばこの地域の土を感じる舗装にしようとか、 骨太な、 または繊細なデザインにしょうとか、 いったことです。 そのような視点からの優れたカタログがあれば便利だと思います。
ただし、 その場合のカタログは、 例えば公共施設のデザインは、 シンプルで材質感を重視する、 とかいった選定の考え方の議論がまずあって、 選ぶことになります。
その場合の選定の考え方そのものが、 他からの批評の対象となるでしょうが、 それでよいと思います。
江川:
そのような評価をJUDIが積極的にやっていってはどうかということですね。
行政が考えずにものを選んでいるのではないかという意見も出ていましたが、 それは必ずしも行政だけではなく、 メーカーや専門家の場合もあると思います。 しかし、 それは選ばれたものを誰も評価しないからできることなのだと思います。
普通の商品であれば、 コンビニに並べても、 変なものであれば売れませんし、 映画でも本でも同じです。 しかし、 公共事業はつくってしまえば勝ちというところがあるのだと思います。
それがダメだと思うのであれば、 専門家が自ら血を流して批評する必要があるのだと思います。 恐らく最初から大げさなことはできないと思います。 そこで、 今度JUDI NEWSの広報をJUDI関西で担当することになっているので、 例えば道頓堀の「とんぼりリバーウォーク」を計画に関係していないメンバーが厳しく批評してみるというあたりから始めてみてはどうかと思いますが。
江川:
専門家同士の問題が結構あるのではないかということを暗に言われているようです。
建築では、 『GA』では専門家同士が有名建築物○×という企画や読者が批評するFAX批評という企画もあります。 また、 『日経アーキテクチュア』では、 建築物の事後紹介や利用者意見の紹介などもあります。 このような意味では、 土木の分野でも『日経コンストラクション』などの土木雑誌などでこのような内容を扱ってもらうように働きかけていく必要があると思います。 さらには、 一般の人が気楽に読める新聞で扱っていければ良いかと思います。
公共建築や土木構造物などは批判すると批判される側の立場もあって、 様々な問題もあるのかもしれません。 しかし、 そういうことを言っていては何も進みませんので、 割り切ってやることも必要かと思います。
そもそも景観マテリアルと建築を分けていることが問題だと思います。 最大の景観マテリアルは住宅であり、 ハウスメーカーにも参加してもらうべきだったと思います。
もう一つは、 経済的なインセンティブの話です。 住宅に関しては、 地域性を活かした住宅建設を進めていこうというHOPE計画が、 住宅金融公庫の優遇貸付などを利用して進められていましたが、 現在はあまり機能しなくなってきています。 関西にはまだ良い集落がたくさん残っていますが、 そこにハウスメーカーの住宅が建ってしまうだけで雰囲気が一変してしまうことがよくあります。 地方銀行などのローカルな金融機関が生き残っていく道として、 例えば屋根に瓦を葺いたら融資するというようなシステムを一緒につくっていければと思いました。
江川:
確かに景観を考える際、 住宅が最も重要な景観要素であり、 建材メーカーなどにも参加してもらう必要があったと思います。 JUDIはメンバー的にも議論的にもそのあたりが別になっているため、 改善していく必要があると思います。
今までは景観の背景となる法や考え方がありませんでしたが、 景観法ができ、 丸茂先生が言われたような経済的なインセンティブは法的背景のある条例としてできるようになってくるのではないかと思います。
良い風景をつくろうと思ったら、 発注者側もそれなりの努力をしなければならないと思います。 現在、 多くの企業で基本設計は計画部隊、 実施設計は工事部隊と分かれていますが、 基本設計の段階から工事部隊を入れておくことにより、 実施の担保が取れるのではないかと思います。
逆に、 ものをつくるだけでなく、 コーディネート業務もやっていますので、 そこに〓〓てやれば、 例えば研究所と建築家の共同デザインなどの様々な調整が可能になると思います。 担当者が高い意識をもってコラボレーションのシステムをつくる努力をしていく必要があると思いますし、 メーカー側からもその必要性を説得していく必要があると思います。
行政も公団も担当者の質の向上が進んでいません。 行政も公団も担当が3年から5年で代わっていきます。 そのため担当者だけの質の向上をしようとしても良くはならないと思います。 全体として質を上げていく必要があるのだと思います。 景観法ができて、 景観に対する意識が高まってきている今が良い機会だと思います。
もうひとつは、 「とんぼりリバーウォーク」のデザイン監修の依頼がJUDIにくるというのはたいしたものだと思います。 このような機会を利用して世の中にもっと訴えていかなければならないと思います。 社会実験なども含めて、 外に出て色々主張しなければならないと思います。 次の仕事を受託した時には、 メーカーさんとのコラボレーションもしていってほしいと思います。
江川:
ご存知ない方に補足しますと、 道頓堀の遊歩道「とんぼりリバーウォーク」と太左衛門橋について、 JUDI関西がデザイン監修を依頼され、 有志を募ってやっています。 前田さんは、 JUDIの中でそのデザインの是非を評価していけば良いという意見でした。 また、 千葉さんは、 このような社会にアピールしていける機会をもっと増やしていくことが重要だという意見でした。
製品や性能の比較をするときに、 共通のフォーマットがないと、 製品推奨に対する説得力の向上につながらないと思います。 個別メーカーのカタログをみても必要な項目を把握できないという状況があるため、 JUDIでこういう共通項目を一覧表としてつくろうということを提案し、 比較検討項目が一覧できれば我々も助かります。
それをもとに、 メーカー側では企業秘密の公開にならない程度に、 情報提供をしていってもらえればと思います。
こういう場でいつも思うのですが、 JUDI自体が本当に良いのだろうかということもあると思います。 前田さんは、 お互いに批評し合ったらどうかと言われましたが、 実際にやれるのかどうか分かりません。 現在、 JUDIはこうあるべきだというものを持っておらず、 まずはそれを持つことが大事だと思います。
私は全体的に日本の環境デザインの質は上がったと思います。 しかし、 今日のモニターメッセでは「これを出せばJUDIから文句はないだろう」というように、 JUDIが考えていることを見透かされている気がします。 しかし、 実際のカタログにはとんでもないデザインのものがちゃんと入っていて、 大体それが使われているのです。
私は、 もう製品のデザインはしなくていいのだと思います。 そのような状況のなかで、 デザイナーやメーカーは何をするのかというと、 それは地域性のデザインなのだと思います。 この地域でどのような材料、 色、 ものを使うかを考えることなのだと思います。 横山さんのカエル橋のように、 北海道だから北海道的な、 大阪だから大阪的なとする必要はなく、 どこでも使える目立たないものでいいのだと思います。
松下電工の製品は、 デザインに関しては非の打ちどころはありません。 しかし、 10年経つとメンテナンス上の問題があると言われるように、 むしろやるべきことは新しいデザインの製品開発ではなく、 100年間きっちり製品保証できる性能をもつ製品の開発・改良なのだと思います。 そうすれば、 カタログは現在のものの10分の1くらいで済むと思います。
吉本ポールの檜を使った地場のポールなどは、 ひとつの良い答えだと思います。 大メーカーであっても、 そのようなことを可能にするシステムをもつべきだと思います。
江川:
社会構造、 経済構造を変えないと何もしなくても良いというようにはならないというあたりが皆さんもお悩みのところだと思います。
行政から仕事を受けると、 まずデザイナー自身が素材や空間デザインを選び考えて行政や発注者に説明し、 その中から様々な過程を経て最終決定されるわけです。 従って、 素材を選ぶ側がもっと勉強することと、 人を説得する技術を身につけることが大切だと思います。
自分の意図するものを相手に伝えるための説得力は、 その人が持つ全てのアイデンティティにつながるものであり、 メーカーの方にもデザイナーにも非常に重要な能力だと思います。
モニターメッセでも、 プレゼンテーションが上手なところと下手なところがありました。 パワーポイントに細かい文字で沢山書かれても全く見えないのです。 良い製品を作ることと同時に、 説得性のあるプレゼンテーションや表現技術を養う必要があるのではないかと感じました。
以前、 私はバリアフリーのまちづくりのマニュアル作りに関わったことがあります。 現在、 全国のほとんど自治体で整備されてきてはいますが、 同じようなデザインになってしまっています。 全国で同じように「あれができたらいいでしょ」というような形でまちづくりが行なわれていくことは少し心配です。
メーカー、 JUDIメンバー、 学校の先生を含め、 このような状況を改善する方法を考えていかなければならないと思います。 例えば、 点字ブロックについては、 センサーで誘導するなどの新しい技術で代替させていくようなことも是非とも検討してもらいたいと思います。
特に行政についてですが、 材料やデザインの決定プロセスが内部化・密室化されていますが、 それを外部化していくことが必要だと思います。 それに関わるのがJUDIの役割だと思いますし、 景観法ができても都市デザイン室等を新たに設置するような動きがあまり見られないので、 JUDIが働きかけていく必要があると思います。
もう一歩突っ込んだ意見
コラボレーションに期待
田中稔(松下電工):
管理がきちんとできるデザインを
山室(コトブキ):
製品やビジネスモデルの開発を
菰田(太平洋セメント中央研究所):
ベーシックな景観デザインの思想が大切
長町:
大きな視点から横断的に考える
久保:
共通の指標によるカタログが必要
松山:
メーカーは立派なカタログを作っていますが、 それぞれ評価項目が異なっています。 JUDIとメーカーが共同で景観材料を評価する項目をつくり、 メーカー 共通のカタログを作成してはどうかと思います。
事例の検証などを盛り込み、 成果として年に一冊くらい出版することが出来ればと思います。
とんぼりリバーウォークの批評から
前田:
ハウスメーカーや金融機関の参加が必要
丸茂:
基本設計から工事部隊に参加してもらうべき
西:
コスト削減も大切
難波:
現在、 行政ではコスト削減と質の向上という二つの課題があります。 今年も公共事業の財源は厳しく、 今後ももっと厳しくなると予想されます。 また、 上の人は良いものをつくれと言うわけですが、 実際の現場ではコストを気にしなければならないという状況があり、 そのため良いものを使えないという行政側の事情もあると思います。
行政担当者の教育という話が出ましたが、 例えば震災直後のこのセミナーで、 横山さんが<これは困った環境デザイン>の例としてカエル橋の話をされましたが、 そのようなデザインが良い悪いという教育をやっても「そういうものがあるのか」という程度で効果がないと思います。 実際に設計者が何を考えてこれを使い、 何を考えた結果こうなるのかというプロセスを、 行政担当者に分かってもらうような教育が必要なのだと思います。 講習会や講演会をやるだけでは、 本当に教育できたことにはならないと思います。
メーカーも色々やっていますが、 メーカーがあっと言わせるようなものをつくり、 そこに第三者的にJUDIが加わることによって、 最終的に普遍化され、 使えるものができれば良いと思います。 そのためには、 業者側にもメリットがある有効投資が出来るシステムを作る必要があると思います。
次の仕事はメーカーも一緒に
千葉:
製品が比較できる共通のフォーマットが必要
宮前:
100年間きっちり製品保証できる製品開発を
井口:
デザイナーの説得力が大切
長谷川:
「あれができたらいいでしょ」というのでは問題
金澤:
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