木造の部分には様々な模様と彫刻と彩色がなされています。
ブータンに見る歴史主義の進化
伝統的な家屋
昔の農家・全景
壁面
フォークミュージアムにあった伝統的ブータンの農家です。今も、多くの人がこのような農家に住んでいます。農家は版築といって(ちょうど日本で土塀を作るのと同じ方法で)型枠を作って、だいたい50cmほどの土を固めて、その上にまた50cm型枠をたてて固めていくというやり方でつくります。これは2階建てですが、下の部分が版築で上が木造という混構造になっています。
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これは我々が泊まらせてもらった民宿の平面図です。3階部分が居室になっています。真ん中の黒い部分が60cmの厚さの版築でつくられた土の構造です。そのまわりは木造でつくられた部分です。木造の部分は下の階より20cmだけ外に張り出しているのが大きな特長です。
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これは2階です。版築の構造が二重になっていて、外側の版築に3階の木造の壁がのるという構造です。版築は下のほうが厚くなっていて、1、2階が70cm、3階が60cmの厚さです。
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これが1階です。版築の壁が二重になっています。
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矩計りはこのようになります。 屋根の下にもう一枚フラットな屋根が在ります。本来ならば屋根は下のフラットな屋根だけでよいのですが、そこにもう一つ木造の屋根をかけています。もとはフラットルーフの構造だったそうですが、これはチベットのほうの伝統が受け継がれたと言われています。木造屋根の下はふきっさらしで物干し場になっています。これが基本的な家の構造です。
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このような建物が基本になって、商店街も出来ています。昔は商店街などなかったわけですから、新しく商業地としてパロの街なみがつくられたと考えてよいと思います。しかし、全て伝統的な建築物を並べて街ができています。2階建てです。 奥のほうにパロのゾン(お城)が見えています。
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1階が店舗で、2階が居室になっていますから、人が住んでいるわけです。屋根裏はここでもふきっさらしになっています。店舗は道路から窓越しに中の商品を買うという構造になっています。
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首都のティンプーに行きますと、どんどん鉄筋コンクリートの高層化が進んでおります。先ほどの千葉さんの二兎を追えるか追えないかという問いかけに近づいてくるわけですが、それでもティンプーでは5階建てまでというふうに決められているそうです。
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もともとはパロのような2階建ての家並みがずっと並んでいたそうです。まだかなり残っています。古い2階建ての家並みを再開発して5階建てに変えている一角がありました。中心には立派な広場をつくったりして、国家的な再開発をやっているという印象でした。 写真は新しい建物と伝統的な建物が並んで建っているのを見られる街なみです。 手前に伝統的な商店があって、窓越しに商品を売り買いしているのが見られます。
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これは新しい5階建ての商店街です。RC造の5階建てになっても伝統的な建築の様式を残しています。 日本建築史では歴史主義という言葉を使っていますので、それにならえば歴史主義でつくられた街が、ここにできているわけです。上にいくと壁が20cm(30cm、40cmのときもあるでしょうが)張り出していて、細かいくり型が全部ついています。窓の形も伝統的な形になっていますし、模様が描かれています。 それからアーケードといいますか、ポルティコがつくられています。ポルティコは、民家にはないのですが、ゾン(お城)にはたくさんあります。このように確実に歴史建築のボキャブラリを入れていることがわかります。
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そのなかでも最も代表的なものを見ます。ゾンで見られるポルティコがあります。上の階は少しせり出していて、そこには模様が入っており、窓の形は完全に伝統的な形、それから壁に宗教的な、あるいは言い伝えのある動物の絵を描いています。さらに軒下が大きく迫り出して屋根がかかり、その下はふきさらしになっています。 まちなかでは、ふきさらしではなくて、塞いでいるものも多くあります。しかし形としてはふきさらしの様式を踏襲しています。それらの様式がきれいにこの5階建ての建物に活かされています。
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これはRC造4階建て、プラス屋根裏という形で、ここでもきれいに伝統的な様式が踏襲されています。
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このように、伝統的なものから進化したものへと、なかなかうまくやっている建物が並んでいます。
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手前が最も伝統的な建物です。歴史主義の建築物の進化したものがその先に並んでいますが、正面の5階建ての2、3階の窓には大きなガラスを入れていて、これはあまり良い印象は持ちませんでした。 近代建築になってきた時に、歴史建築が進化してこういう形になってきた。ここまで来た時に、本当に二兎を追えるかという疑問が出てきます。ここまでくるとRCで外壁を張り出していくというのは構造的には合理的でないので、だんだん壁面はまっすぐになってきます。様式がだいぶ省略されてきて、ガラスの大きな面を使ってみたりといった傾向があらわれているように、ちょっと危なくなってきている感じがあります。
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今建築中のタージというホテルです。観光客誘致を考えて国策として立派なホテルを一つつくろうとしているのだと思うのですが、インドの資本が入ってつくっているのだそうです。 工事中でしたが、僕はこれを見た時に、すごいなと思いました。歴史主義だ、進化したものだという言い方をしましたが、それを一切抜きにしてもこれは素晴らしい建築になるのではないかという感じがしました。空間的、造形的に見ても魅力的な、ちょうど我々がゾンを見て「すごい建築だな」と思ったのに共通するような、かなり高いクオリティの建築ができるのではないかと思います。 よく見ていきますと、全て歴史主義です。ボキャブラリを見事に使っていっている。この場合は6階建て7階建て部分的に8階建てくらいになるのですが、民家のデザインのボキャブラリとゾンのボキャブラリをうまく組み合わせて見事な建築ができていました。僕はこれを見るためだけでも、もう一度ブータンへ行ってみたいと思いました。そしてこれを見て、「私にとって近代化とは何だったのか」という素直な疑問を持ったのです。
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