デザインによってできたこと
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デザインを巡る議論の迷走

 

中村伸之

 秋の都市環境デザインフォーラムのための、ブレーンストーミングをして、今回はデザインについて語ろうということになりましたが、どういった問題意識や切り口から語っていくのか議論が迷走しています。しかし、これは毎年のことで、回り道を楽しんでいるところでもあります。今までの迷走気味な議論を何とか整理しようと、図式化してみました。

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 JUDIのデザイナーには、能力を十分発揮できないフラストレーションを溜めている方も多いと思われます。これは、デザインの受け手にとっても不幸なことであると思います。デザイナー個人の創造性を最大限に活かし、また受け手も感受性を豊かに開くことで、一対一の関係が成り立てば、より良い環境デザインが生まれると思います。

 例えば和服の業界では、お客さんの声を聞き、その情報を職人に伝えるコーディネーターという立場の人間(悉皆屋さん)が存在しており、一対一の対話を可能とするモデルが確立しています。これによって、より良い満足のいくデザインが可能になっています。

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 しかし、複雑な社会関係の中では、なかなか一対一の純粋な創造といったものは生まれにくくなります。逆に、関係が複雑であるからこそ生まれる「複雑系」の創造スタイルがあるかもしれません。例えば、作り手側の社会(チーム)では、いろいろなジャンルのコラボレーションの中で創造性が醸成されることもあります。

 一方で、受け手側の社会もあります。デザイナーがつくったものを受け止め、管理する社会です。そこには、納税者のように間接的にお金を出すクライアントもいますし、自腹を切ってくれるパトロンのような存在もいます。公共工事などでは作り手と受け手の関係が複雑かつ間接的になって、なかなか良いデザインができないことも多くあります。お金を持った個人クライアントを満足させる仕事の方が良いデザインができるという見方もありますが、多様な文化が共生する都市環境の作り手は、自分たちと社会とのつながりを探り、社会との関係を広げたいと思うはずです。

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 さらに、社会は文化や文明をいう基盤に乗っています。環境デザインを場所性や歴史や人々の記憶から解いてゆくという、文化論的なアプローチも当然出てきます。また、地球環境的な視野から、今の石油文明に対してもっとエコロジカルなシステムがあるのではないか?物質的エネルギー的なシステムが変わり、それに伴ってデザインのあり様も変わるのではないか?という文明論的な考え方もあります。文化が過去に根ざすのに対して、文明は未来に向けて文化や社会の基盤となる物質とエネルギーのシステムを変えていくとも言えます。

 以上が、何回かのブレーンストーミングで出てきた話題を集めて論点を整理してみたものですが、どこに力点を置くか、うまい組み合わせはないかと、相変わらず迷走している状態です。そこで、皆様の意見も聞いてみようということで、「デザインによってできたこと・デザインの力を感じる事例」というテーマで画像とコメントを募集しました。一週間という短い時間でしたが、60枚近く集まりました。これらを先ほどの図式を参考に整理して眺めてみようと思います。

 (注:投稿の意図を正確に反映するために、記録では『  』内に投稿者のコメントをそのまま引用します)。

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