ケビン・リンチは、環境評価の次元として、活力(Vitality)、感覚(Sense)、適合(Fit)、到達(Access)、管理(Control)の5つを挙げています。その中で特に、感覚(Sense)という部分の評価がなかなか難しいと言われています。そのため、ないがしろにされる事も多いのだと思います。そこで、その部分を整理することを目的として、時間の要素・自然の要素・デザインされた要素の3つに分けて考えることができるとの指摘を頂きました。
ここからは、主観が入りますが、この概念に沿って説明していきたいと思います。
なかなか実感しにくい面もありますが、時間という要素は大きいと思います。
写真(スライド上)はバッテリーパークのファイナンシャルセンターです。大きなパブリックスペースをオフィスの中に設けたことが、都市に大きな力を与えたと思います。レンタルスペースを少なくすることはディベロッパーに反対されたそうですが、結果的に付加価値を生み、高い家賃を取ることが可能になったそうです。さらに都市にも活力を与えた事例です。
写真は中之島の三井ビルディングです。中ノ島の堂島川と土佐堀川との間が一番狭くなっているところで、当初の段階から川と川を繋ぐように、建築の中に通りを設けようとしました。そして、表情もできるかぎりやわらかな感じにしています。バッテリーパークと同様に、ビルとしての付加価値を上げることになったと思います。
都市環境デザインを考える
はじめに
私はJUDIの新人に近いのですが、今年のフォーラム委員長を務めることになりました。その一つの理由として、私がアーキテクト=建築のデザイナーだということがあると思います。「デザインによってできたこと、デザインの力」というテーマの中で、デザイナーとして何ができるのかということを問われている気もします。今日は、わりと主観的な話も多いかもしれませんが、「デザインで人は変わりますか?人が変わると街も変わりますか?」というサブテーマでお話したいと思います。
デザイン、特に都市デザインという言葉自身の定義付け、また定義付けする必要があるのかという問題も含めて、鳴海先生から頂いたメールの中から抜粋して考えてみました。
(1)時間(歴史)の力
時間の力は、歴史だと言えると思います。人や町が育んできた時間が重要な役割を担っていると言えます。これはイェールのキャンパスの写真です。私もこの街にあるペリ事務所にいたことがあるのですが、この町での経験がバックグラウンドにあるので、この町を訪れると元気になります。大学の町なので、育った人間が世界中に散らばっていますが、彼らも同様の想いを持っているのではないでしょうか。このような想いが、結果として町の魅力を大きくしているのではないでしょうか。
(2)自然(享受できる環境)の力
2週間ほど前に自宅近くの桜の名所で撮った写真です。特に日本人に特有な文化と言えますが、桜を見ることで活力を見い出しにいきます。自然を見ることで、心が休まるし、人を元気にしてくれると思います。
(3)-1 デザイン(創られた物)の力 ―都市に活力を与える―
デザインの力を考える場合、当然さきほどの歴史・時間や自然とリンクする必要があると思うのですが、私たちが直面しているものは創られた物のデザインの力だと思います。
(3)-2 デザイン(創られた物)の力 ―超高層住宅の地上レベルの表情―
次は大阪の事例です。大阪の都市にも超高層の住宅が増えてきていますが、個々の街区がそれほど大きくないため、超高層は街区一杯を占めてしまいます。外装はいろいろな方が頑張ってデザインされています。しかし地上レベルでみると、駐車場や公開空地を設けることで、連続した町並みが崩れ、殺風景な一階周りになっている事例もみられます。この写真では、ディベロッパーとデザイナーがそうした問題に対して、通りに面してはオフィスとかショップを設けています。
(3)-3 デザイン(創られた物)の力 ―ほっとする空間―
これは靱公園の写真です。4月まで改修のために閉鎖されていましたが、その後は人が増えているように思います。人が増えてくるということが意味するように、ほっとする空間になったのだなと思います。
(3)-4 デザイン(創られた物)の力 −都市への関わり-
色々とみてきましたが、なかなか完成したものを評価するというのは難しいですね。私たち建築の人間は、点でしか仕事をできない宿命を持っていますが、頭の中では都市とどう関わっていくのかを常に考えています。その事例をご紹介したいと思います。
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