景観法で都市は美しくなるのか
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はじめに

 

土田さんのプロフィール

司会(鳴海)

 今日は「景観法で街は美しくなるか」というテーマで土田旭さんにお話しいただきます。土田さんは都市環境研究所で長くコンサルタントをされてきました。この業に就いてからもう三十数年お仕事をされてきたので、コンサルタントの草分けと言ってもいいでしょう。いろんな団体でも活躍されていますし、この都市環境デザイン会議の創設メンバーでもの一人でもあります。

 私の認識では、土田さんは日本でアーバンデザインを標榜した最初の人です。当時はメタボリズムの建築論などが私たちの世界をにぎわせていましたが、土田さんは建築ではなく都市にこだわってお仕事をされてこられましたので、今日は興味深いお話が聞けるのではないかと思います。

 もう18年前になりますが、私と土田さんは『景観からのまちづくり』という本を学芸出版社から出したとき以来の知り合いです。このたび景観法が出来たことで、土田さんは再度景観を論じてみようと本を出版されたのではないかと察します。

 さて前置きはこのくらいにして、早速土田さんにお話しいただきたいと思います。


今日の狙い

土田

 私は1960年に大学を出て、アーバンデザインをやるつもりでいたのですが、磯崎さんにアーバンデザインでは飯が食えないよと言われたのも覚悟の上、アーバンデザインをやろうと決めました。ただそれでは飯が食えないのも事実だったのですが、アーバンデザインのベースは都市計画にあると考え、都市計画の研究室から都市計画のコンサルタントになりました。都市計画コンサルタントをやりながら、機会があればアーバンデザインもやり、こんな調子で現在に至っています。

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日本の街を美しくする
 
 今日お話しするのは、先日出版した『
日本の街を美しくする』(土田旭+都市景観研究会:学芸出版社)で語られている内容が基本になっています。だから、今日は本の紹介をすればいいのかなと思ってましたら、事務局から来たメールでは「景観法で日本の街が美しくなるかがテーマです」と書いてありました。実はそんなこと考えるの面倒くさいわと思っていたんですが、「本の帯にそう書いてありますよ」と編集部の前田さんに指摘され、遅ればせながらもう一度考え直した次第です。

 本作りの過程では、私と編集部の前田さんが一番原稿に目を通したでしょう。3、4回は読み返して、執筆した者にあそこを直せここを直せと指示しながら作業を進めていったので、一通り頭に入っていると思ったのですが、出来上がってみるとその分厚さに驚きました。「こんな分厚いの読む気しないなあ」としばらくは積んでいて今日に至った次第です。

 36人の共同執筆ですから、1人当たりの原稿枚数は少なかったんです。しかしみんな「もっと書きたい」と段々ページが増えていって、こんな厚さになってしまいました。

 最初タイトルは、今日のセミナーテーマの「景観法で街は美しくなるか」だったのですが、それではあまりに刺激的だろうということから、「日本の街を美しくする−法制度・技術・職能を問い直す」という提案が多い感じのタイトルになりました。

 そもそも、なぜ日本の街はこんなに醜いのかということを本で訴えるつもりだったんです。しかし、仲間の一人だった青木仁さんがこの本の前にそんな内容の問題投げかけ型の本を出版されていましたし、ネガティブキャンペーンの本にしてしまうのも問題だなと思いました。もう少し前向きな内容、「どうしたら街は美しくなるか」を中心に据えた本にしようと考えました。

 今日お話しする内容もこの本をベースにしていますので、この本で紹介した写真や図を参照しながらお話しする予定です。

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